「AI」カテゴリーアーカイブ

「未来のAIは思考を理解する」トロント大ヒントン氏

人工知能(AI)研究の第一人者であるカナダ・トロント大学のジェフリー・ヒントン名誉教授は日本経済新聞のインタビューに応じ、AIの未来について「最終的には人間の考えを理解できるAIが実現するだろう」と述べた。あらゆる領域に応用できる汎用型のAIが実現する可能性も示した。AIの進化には基礎研究の投資が不可欠として、日本も政府が投資を増やす必要があると訴えた。
■「自然な会話可能、人間を支えるシステムに」
ヒントン氏は人間の脳の神経細胞を模した「ニューラルネットワーク」に着目し、約40年にわたりAIを研究してきた。大量のデータを学ばせるディープラーニング(深層学習)の中核技術を開発し、3度目とされる現在のAIブームのきっかけを作った人物だ。
ジェフリー・ヒントン トロント大学名誉教授
現在のAIスピーカーやチャットボットは質問に答えるが、内容は理解していない。ヒントン氏によると、将来は「AIが相手の考えを理解して自然に会話できるようになる」といい、あらゆる目的に応用できる汎用AIが実現する可能性がある。
ただヒントン氏は、汎用AIが技術的には可能だが「人間がいるので同じような汎用ロボットは必要とされないかもしれない」とも指摘した。「グーグルなど米IT(情報技術)大手は会話しながら人間をサポートする高精度なシステムを提供したがっている」といい、物理的なロボットよりも、人間を支えるシステムとしての開発が進むと見通した。
汎用AIは複数の技術を組み合わせ実現するとみられている。ヒントン氏は足りない要素について「論理的に思考する能力だ」と指摘。今のAIは画像や音声の認識は得意だが、人間のように推論するのは難しい。「思考するAIは次の研究フロンティアの一つになる」と強調した。
ヒントン氏は「チンパンジーは音声や画像を認識するが、人間のように論理的に思考できない」と話した。人間の脳が進化の過程でこうした能力を備えたことを踏まえて、仕組みが近いニューラルネットワークがAIによる推論を実現する鍵を握ると指摘した。
ディープラーニングなどAI技術は今後もあらゆる産業に広がる見通しだ。ヒントン氏は「生産性を高めて人々の生活を改善する」と強調し、今後5〜10年にAIによる技術革新が起きる分野として「医療画像の認識や自然言語の理解、ロボット」を挙げた。
■日本に苦言「基礎研究にもっと投資を」
日本の課題にも言及した。「政府は好奇心に基づいた基礎研究にもっと投資をすべきだ」と苦言を呈した。ヒントン氏が研究拠点を置くカナダは政府が大学での基礎研究に投資し、AIが注目されなかった冬の時代にも研究を後押ししてきた。「日本の投資が十分とは思えない」と話した。
特に「大きなブレークスルーは若い研究者から生まれる」とし、「自分の直感を信じて追求してほしい」と語った。応用研究だけでなく、若者が好奇心のままに大学で新しいアイデアを発展させられるようにする必要性を強調した。
今のAI開発はグーグルなど莫大な資金をコンピューターに投じた企業がけん引する。ヒントン氏は「データ量とコンピューターの性能がAIの進化を支える潮流は今後も続く」と話す。そのうえで「新たなアイデアが研究のさらなる飛躍につながる」という。量子コンピューターが実現すれば計算能力は飛躍的に高まり、AIの可能性も広がりそうだ。
《聞き手から》貫いた信念、日本に教訓
1969年、今のAIの根幹であるニューラルネットワークの可能性を否定する本が出版された。「誰もが限界を感じました」。ヒントン氏にこう投げかけると「私以外はね」とにやりと笑った。なぜヒントン氏は信念を貫けたのか。ヒントは彼の経歴にある。
 今でこそコンピューター科学の権威だが、学部時代にケンブリッジ大学で実験心理学を学んだ。「私は常にヒトの脳の仕組みに興味があった」。好奇心に基づいた研究の重要性を訴える言葉は説得力がある。
AIの可能性をいち早く見抜いたのがグーグルだ。2012年夏、ヒントン氏を2カ月間研究所に招き、ヒントン氏はその経験で同社の研究者と働きたいと感じた。13年に加わり、彼に憧れる研究者がグーグルに集まる循環を生んだ。
 翻って日本。ヒントン氏より少し上の世代に世界的なAI研究者がいたが、「冬の時代」を経て米国やカナダに研究で出遅れ、応用では中国にも差をつけられた。日本はAIが注目されて初めて巻き返しに動くが、ヒントン氏は基礎研究の重要性を説き、長年の蓄積が花開いたのは事実だ。日本はAIで失敗した教訓を生かさなければならない。
(清水孝輔、小河愛実)

Google、長い文章を自然に音読 音声AIの機能を強化

米グーグルはCESの会場で音声AIの機能強化について説明した(7日、米ラスベガス)
【ラスベガス=奥平和行】米グーグルが人工知能(AI)を活用した音声関連サービスを拡充する。記事などの長い文章を自然に読み上げ、翻訳する機能の開発などが柱となる。スピーカーや家電製品などを通じた音声AIの利用が増え、競争も激化している。スマートフォンなどで多くの利用者を抱える強みを生かし、機能強化を急ぐ。
世界最大のデジタル技術見本市「CES」が米ラスベガスで7日に開幕したのにあわせて説明会を開き、音声AI「グーグルアシスタント」などの機能拡充について説明した。グーグルは2018年からCESに大規模な展示スペースを設け、音声AIの利用を促す場として活用している。
新たな読み上げ機能は、記事やブログといった長文を人に近い調子で音読するのが特徴だ。同社の携帯端末向け基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載した製品を通じて「このページを読んで」などと指示すると音読を始め、日本語を含む42の言語に翻訳する機能も備えた。提供を始める時期は明らかにしていない。
音声AIではディスプレーを内蔵したスピーカーを活用してリアルタイムで翻訳する機能も提供先を広げる。米ニューヨークのケネディ国際空港やアメリカン航空のラウンジなどで提供を始め、世界各地の空港やホテル、小売店など使えるようにする計画だ。
全米民生技術協会(CTA)によると、AIスピーカーがいち早く普及した米国では20年に出荷台数が前年比5%増の3900万台に達する見通しだ。世界全体では25年まで年平均30%を上回るペースで市場が拡大するとの予測もある。テレビや自動車など音声で操作できる機器も含めるとさらに利用者の裾野は広がる見通しだ。
一方、プライバシー侵害への懸念も高まっており、グーグルの製品管理担当ディレクター、オースティン・チャン氏は7日、「利用者が自分のデータがどう利用されているかを理解することが重要になっている」と説明した。
説明会では同社の製品は利用者の会話を無断で記録しないと強調した。さらに機能向上などのためにグーグルがデータを保存することに同意した場合も、「これはあなたのものではない」などと話しかけることにより直前の発言を削除したり、音声でプライバシー設定を確認したりできる新機能を紹介した。
2119年には同社の音声AIの対応機器が10億台に達したことを公表したが、今回は月間利用者が5億人を突破したと説明した。米アマゾン・ドット・コムや米マイクロソフトなどとの間で音声AIを巡る競争が激しくなるなか、実際に日々の生活のなかで使われていることを示す狙いがありそうだ。
スピーカーやヘッドホンなどに加えてテレビへの搭載も増やしたい意向で、テレビの電源が入っていないときでも音声で起動できる機能を加えると発表した。まず中国の海信集団(ハイセンス)とTCL集団が米国で販売するテレビが新機能への対応を始める。グーグルは提供先をほかのメーカーにも広げていく方針だ。

「AI時代、組織で知識生む仕組みを」松原隆一郎氏

経済のデジタル化が進み、知識労働の重要性が高まっている。その一方で、判断や推論を伴う複雑な思考を担える人工知能(AI)の開発が進む。AI時代に労働や企業組織のあり方はどのように変わっていくのか。東京大学名誉教授の松原隆一郎氏に聞いた。
松原隆一郎氏(まつばら・りゅういちろう) 1956年神戸市生まれ。東大工卒、東大大学院経済学研究科博士課程修了。東大大学院教授を経て、18年4月から放送大教授、東大名誉教授。
「知識を触媒する役割、必要になる」
――AIは労働にどのような影響を与えますか。
「AIを使い始めると人がやることがなくなってくる。決められたルールのなかで問題を解く作業で人はAIに勝てない。AIを使うルールを決めるのは人が手掛けるとしても、それはかなりの知識労働だ。その作業に特化しなければ人が利益を稼ぎ出せないとなると、現役世代分をまかなうだけの利益が出て、賃金として配分できるかわからない。AIの与えるショックは大きい」
――企業の組織のあり方はどのように変わっていきますか。
「知識労働は今後、一層クリエーティブにならなければ稼げなくなるだろう。互いに示唆を与え合い、新しい発想を生み出すことができる組織作りが重要になる。だが必ずしもフラット化した組織が求められるわけではない。中間管理職が情報の伝達役や抑圧的な上司にすぎないのなら必要はない。知識の触媒としての役割を果たすことができる存在が必要になる」
――日本企業は変化に対応できるでしょうか。
「20世紀を振り返ると、日本は組織で新しい発見を生み出してきた。たとえばトヨタ自動車では上層部の指示を待たずに現場で不具合を見つけて解決する仕組みを生み出した。一方、米国のテーラー方式ではホワイトカラーとブルーカラーが分離し、上の指示に下が従うだけだった」
「日本にテーラー方式が本格的に入ってきたのが00年代で、正社員から非正規に切り替えた時期と重なる。現場は上に言われたことを肉体労働としてこなすだけになった。組織や人間関係のなかで知識を生み出して利益をあげるという日本の成功モデルが崩れてしまった」
「日本、もっと世代交代進めよ」
――日本の資本主義のあり方をどうみていますか。
「株主や金融機関から資金を調達して事業をするべき企業が貯蓄主体になっている。これは資本主義ではない。もともと日本企業は株主への配当よりも事業投資を優先し、借り入れ過剰の状態だった。バブル崩壊後は逆に過剰に後ろ向きになり、負債を返し終えても投資をしなくなった」
「日本はもっと世代交代を進めるべきだ。将来何が起こるか分からないところで、投資してうまくいけばリターンを得る仕組みが資本主義だ。失敗したら結果責任をとるべきだが、不確実なことに対して責任を取る人がトップでなければ世代交代が進まず、社会が停滞する」
■記者はこう見る「デジタル人材の育成急務」
 今井拓也
 経済のデジタル化が進むなか、日本では人工知能(AI)の開発などを担う人材の育成が急務だ。米国のコンサルティング会社の推計ではビジネスの場で活躍するAI人材は世界に45万人。このうち日本は2万人弱で、13万人の米国や7万人の中国を大きく下回る。
 データから新たな知見を生み出す知識労働の重要性が増すなか、組織のあり方も見直す必要がある。年功序列のような日本型の雇用では、高いデジタル技術を持つ若い世代が登用されたり厚待遇を受けたりしにくい。
 デジタル人材の争奪戦は国境を越えて繰り広げられている。技術革新の担い手となる社員に権限を委譲するなど、従来にない発想で組織を作り直すことができるが今後の企業の成長力を左右する。

勢い増すAIスタートアップ「トップ100社」

2019年もスタートアップの動向に関するニュースが相次いだ。ソフトバンクグループが出資するウィーカンパニーを巡って巨額の損失を計上するなど、ネガティブなニュースも印象に残る。世界的な景気悪化の懸念も重なり、20年もスタートアップを取り巻く環境は不透明だ。ただ、人工知能(AI)でとがった技術やサービスを持つトップ100社に目を向けるとポジティブな動きも多い。CBインサイツがAI100社の19年の動きを検証した。
CBインサイツが2月に発表した2019年の人工知能(AI)分野の有望スタートアップ企業100社「AI100」には、3つの大陸から18の業界の企業が入った。各社は特許活動、投資家のプロフィル、ニュースのセンチメント(感情)分析、市場の可能性、提携、競争の状況、チーム力、テクノロジーの目新しさなど様々な基準に基づき、3000社以上から選ばれた。
2月の発表以降、7社が大企業に買収され、4社がユニコーン(企業価値が10億ドル以上の未公開企業)になり、数社が米マイクロソフトや米オラクル、英金融大手HSBC、米ゼネラル・エレクトリック(GE)などと提携した。今回は100社のこの1年間の成長ぶりを取り上げる。
■買収:テスラ、ウーバー、アップルなどが買収
2019年の「AI100」スタートアップのうち、他社に買収されたのは7社だった(19年12月10日時点)。7社はサイバーセキュリティー、通信、運輸、コンピュータービジョン技術などの分野でAIを活用した解決策を手がけている。
最も目立った分野は自動運転だ。米アップルは自動運転車によるシャトルサービスを提供していた米ドライブ・エーアイ(Drive.ai)を買収し、同社の有能な人材を手に入れた。同じ週には、米ウーバーテクノロジーズがコンピュータービジョンのスタートアップ、米マイティAI(Mighty AI)を買収した。マイティAIは自動運転技術の開発企業と協力し、車の物体認識を訓練する。同社はウーバーの自動運転技術開発部門「アドバンスド・テクノロジー・グループ」に統合された。
米電気自動車(EV)メーカーのテスラはシリコンバレーに拠点を置くディープスケール(DeepScale)を買収した。ディープスケールは自動運転システム用のコンピュータービジョンソフトを開発している。
米インテルはイスラエルのハバナラボ(Habana Labs)の買収交渉を進めているとされる(編集部注:この記事が出た後、インテルが12月16日に買収を発表)。ハバナラボは米インテルキャピタル、米バッテリー・ベンチャーズ、米ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ、米WRVIキャピタルから出資を受けており、訓練や推論用のAIプロセッサーを開発している。
■ユニコーン:企業価値10億ドル以上は4社
AI100に選ばれた企業のうち、19年2月以降に企業価値が10億ドル以上に達したのは4社だった。選出される前に既にユニコーンになっていた企業は10社だった。
中国の地平線機器人(ホライズン・ロボティクス)は自動運転、スマートシティーの交通監視、小売業のアナリティクスに使う店内カメラのエッジAI半導体を開発している。19年2月にSKチャイナが主導したシリーズBの資金調達ラウンドで6億ドルを調達し、企業価値は30億ドルになった。
米ニューロ(Nuro)は19年2月、シリーズBでソフトバンクグループから9億4000万ドルを調達した。これにより、ラストワンマイルの配達に特化した自動運転車を開発するニューロの企業価値は27億ドルになった。
米シェイプセキュリティー(Shape Security)は19年9月のシリーズFで5100万ドルを調達し、企業価値は10億ドルになった。カリフォルニア州に拠点を置く同社はAIを活用し、モバイルやウェブのアプリで普通の顧客と、顧客になりすましたハッカーを識別する。
米ボストンのデータロボット(DataRobot)は19年7月のシリーズEで2億ドルを調達し、企業価値を10億ドルとした。同社のプラットフォームはデータセットを取り込み、銀行や医療、保険などの業界の企業向けに予測モデルを自動作成する。
■資金調達:全体で50億ドル弱に
19年2月以降、AI100のうち48社が資金調達を実施し、計49億ドルを調達した。
米グーグル・ベンチャーズ、米クライナー・パーキンス(KPCB)、米金融大手ゴールドマン・サックス、米半導体大手エヌビディアなど著名な投資家や企業が、医療画像スタートアップの米Viz.ai、BI(ビジネス・インテリジェンス)スタートアップの米H2O.aiといったAI100企業に出資した。
一度に1億ドル以上を調達する「メガラウンド」を果たしたのは10社だった。メガラウンドは自動運転や半導体などの業界のほか、コンピュータービジョン、定型業務を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、データマネジメント、サイバーセキュリティーなど複数の業界にまたがる用途に及んだ。
■主な提携
いくつかのスタートアップが事業を拡大するために戦略パートナーシップを締結した。
半導体スタートアップの英グラフコア(Graphcore)は11月、米マイクロソフトのクラウドサービス「アジュール」でAIプロセッサーを展開するためにマイクロソフトと提携した。これにより、グラフコアのAI半導体の利用が増え、顧客基盤が広がる可能性がある。
RPAを手がける米ユーアイパス(UiPath)は4月、法律関連業務の自動化を進めるためにデロイトと提携した。ユーアイパスは今年のAI100に選ばれて以降、欧米やアフリカ、中東で20社以上と提携している。
RPAスタートアップの米オートメーション・エニウェア(Automation Anywhere)も今年のAI100に選ばれて以来20社以上と提携している。同社はマイクロソフトやオラクルと手を組み、マイクロソフトの「アジュール」や「オラクルクラウド」でRPAサービスを提供する。
クラウド・コンピューティングに加え、医療でも提携が盛んだった。
サンフランシスコに拠点を置くViz.aiは深層学習(ディープラーニング)を使ってCTスキャンの画像を解析するスタートアップだ。同社は医療機器大手の米メドトロニックと提携した。これにより、メドトロニックはデータや知見の販売への事業転換を進め、Viz.aiは自社のAIソフトの販路を広げた。
米インシトロ(Insitro)はAI創薬で米製薬大手ギリアド・サイエンシズと提携した。米アトムワイズ(Atomwise)と米製薬大手イーライ・リリーもこの分野で協力している。
■主な新製品・サービス
一部の業界のAIスタートアップは新製品・サービスを発売したり、従来の製品にAI機能を追加したりしている。
米セレブラス・システムズ(Cerebras Systems)は8月、約9インチ四方の大きさのAIチップを発売した。同社によると、これは世界最大のチップだという。11月にはデータセンター用AIプロセッサー「セレブラスCS-1」も投入した。
AIやあらゆるモノがネットにつながる「IoT」分野のスタートアップ、米ファルコンリー(Falkonry)は予兆を検知するためにエッジ端末で展開できる「携帯型の独立エンジン」を発売した。
カナダのエレメントAI(Element AI)も文書の読み込みやサイバー攻撃の検知などを処理する一連のAIツール「AIイネーブルメント・ツールズ」「インサイト・ライブラリーズ」をリリースした。
データロボットは米金融データソフトウエアのファクトセットと共同で、投資ワークフローツールを発売した。これにより、金融アナリストは金融・経済データを活用して機械学習による予測モデルを構築できるようになる。

ロボットからAIへ グーグルが認めた日本人の挑戦

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トロント大学名誉教授のジェフリー・ヒントン(71)が人の脳の仕組みをまねた深層学習(ディープラーニング)を駆使して人工知能(AI)革命を起こした2012年。世界のAI研究者を驚かせた出来事がもうひとつあった。米グーグルがコンピューターに猫の顔を認識させることに成功したのだ。
■コンピューターが猫の顔を認識
人間と違い、コンピューターが猫を猫と断定するのは簡単ではない。グーグルはユーチューブの動画から1000万枚の画像データを取り出して、AIに猫とは何かを学ばせた。ここにもディープラーニングの理論が使われていた。
グーグルが「AI大国」をめざし本腰を入れ始めたのは、この2年前。きっかけはグーグル創業者、ラリー・ペイジ(46)と2人のAI研究者との出会いだった。
その1人がスタンフォード大学教授だったセバスチャン・スラン(52)。2005年に米国防高等研究計画局(DARPA)主催の自動運転車の賞金レースで優勝。実力を買ったペイジが2010年にグーグルにスカウトした。
誘い文句は「ムーンショットに挑戦しないか」。ペイジが自動運転のハードルの高さを、アポロの月面着陸計画のキャッチフレーズになぞらえたことを、スランは今も覚えている。
スランはスタンフォード大に籍を置きつつ、その年にグーグルが設けた秘密組織「グーグルX」のトップとして、AIを使った自動運転技術の開発を進めた。
■2人の立役者
スタンフォード大のスランの隣の部屋でAIを研究していたのがアンドリュー・ング(43)。2人は米東海岸にあるカーネギーメロン大学を経て、西海岸に移ったという共通項を持つ。
ングは当時、こんな思いを強くしていた。「これからのAI研究はいかに大量のコンピューターを使うかがモノを言う世界になる」。グーグルの世界最先端の設備はまさに最適な環境だった。
2010年3月のある日、2人は夕食をともにする約束をしていた。スランはそこにペイジを誘った。ングは初対面のペイジに思いを伝えようとプレゼン資料を用意していた。
3人が腰を落ち着けた高級日本料理店。パソコンを取り出す雰囲気ではないと感じたングは、ペイジに強い口調で語りかけた。
「グーグルが持つコンピューターを駆使して巨大なニューラルネットワークを築くべきです」。こう言うとAI大国への野望を持つペイジは関心を示した。「提案書を書いてくれ」。後日、ングは6ページの書類をまとめてペイジに送った。これがグーグルのAI研究機関「グーグルブレイン」の設立へとつながる。
ングがペイジに出した6ページの提案書の作成を手伝ったのがエンジニアのジェフ・ディーン(51)だ。ディーンはグーグルにある、エンジニアが就業時間の20%を好きなプロジェクトに使える、いわゆる「ルール」を使ってAIを研究していた。だがングとともに次第にグーグルブレインにのめりこんでいく。
グーグルのAI集団に異才が集まり始めた。
猫の顔を識別する手法は、ングのもとにいたインターン生のアイデアだった。参考にしたのはヒントンの論文だという。ングもヒントンから強い影響を受ける。「ジェフを『AIのゴッドファーザー』と呼び始めたのは実は僕」。ングは明かす。グーグルは2013年にヒントンもフェローとして招きAIの研究を強化していく。
■日本のスタートアップに触手
グーグルはAI大国の実現の過程で、日本のスタートアップにも手を伸ばした。
2013年、グーグルはヒト型ロボットの開発で知られる東京大学発スタートアップ「SCHAFT(シャフト)」を買収。AIの頭脳を持つロボットの開発がねらいだった。
シャフトは東大の研究者だった中西雄飛(37)と企業再生を手がけた経験を持つ加藤崇(40)が2012年に創業した。当初、中西らは「AKB49」と名付けた女性ヒト型ロボットを実用化したいと考えていた。
「誰がこれにお金を出すと思いますか」。加藤が問いかけると、中西は答えた。「秋元康さんかアラブの石油王でしょうか」。結局、より地に足のついた、災害時に人間の代わりとなる作業ロボットの開発へとカジを切った。

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ザッカーバーグがほれた男 日本にまいたAIの種

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2013年秋、「AI(人工知能)のゴッドファーザー」ジェフリー・ヒントン(71)とAI革命を果たしたヤン・ルカン(59)のもとに1本の電話がかかってきた。「うちに来てくれませんか」。声の主は「ザック」ことマーク・ザッカーバーグ(35)。フェイスブック創業者だ。
■ザックからの電話
ルカンは当時、ヒントンと連絡を取りながら、ニューヨーク大学でAIを研究していた。
2012年の国際大会でトロント大学のヒントンのチームが圧倒的な強さでトップを取ったのをきっかけに、AIの「冬の時代」は終わりを告げ、弟子のルカンのもとにもAIを学ぼうと世界中から俊才が集まり始めていた。
IT企業は我先にとAI人材の囲い込みに入り始めルカンの教え子にも声がかかった。フェイスブックもその一つだったが教え子にルカンはこう忠告していた。「やめた方がいい」。当時のフェイスブックにAIの研究所がなく、その本気度を測れなかったからだ。自らもザックに「アドバイスはできるが、入社は難しい」と断った。
ザックはそれでも諦めない。2013年11月下旬、ニューヨークに住むルカンが西海岸のAIの会合に出ると聞きつけるとフェイスブックはルカンに本社訪問を打診した。承諾するとザックのアシスタントからメールが届いた。「1日早く来てマークの家で食事をしませんか」
■「私たちを手伝ってくれ」
シリコンバレーの中心地パロアルトにあるザックの自宅を訪れると、チキン料理のディナーが振る舞われた。ワインはブルゴーニュ産。フランス出身のルカンの好みを事前に調べていたようだ。ザックの妻のプリシラが席を外すと、親子ほど年齢が離れた2人でAIについて語り始めた。
フェイスブックはヒントンのAIに使われている深層学習(ディープラーニング)の活用に着手していた。ザックはディープラーニングに関するルカンの論文も読み込んでいた。
翌日、フェイスブック本社をルカンが訪れ一日かけてチームのメンバーと話し終えると、再びザックが登場した。「私たちを手伝ってくれますか」。ルカンは答えた。「2つ条件がある。私はニューヨーク大を辞めない。ニューヨークからも離れない」。
「いいでしょう」。ザックは本社があるシリコンバレーから飛行機で6時間かかるニューヨークにAI研究所を設けるとその場で決めた。
ルカンは今では世界的なAI学者だが「冬の時代」には職場を転々としていた。その過程で日本企業にも足跡を残していた。
フランスからカナダに渡り、トロント大学のヒントンの下で1年間のポスドク(博士研究員)生活を経て米AT&T(当時)の名門ベル研究所に職を得た。1996年からは開発チームを率いた。メンバーのウラジミール・バプニック(82)やレオン・ボトウ(54)は今やAI研究の権威だ。
■NECが助け舟
ルカンのチームは当時、手書きの郵便番号を認識する技術を開発し、実績を残しつつあった。だが2000年代に入るとドットコム・バブルが崩壊。AT&Tも業績が悪化し、ルカンは上司からこう告げられた。「君たちの半分は、ここから去ってもらう」
そこで助け舟を出したのがNECだ。ルカンは02年1月、米東海岸ニュージャージーにあるNECの北米研究所に移った。バプニックとボトウもルカンに続いた。ただ米国で起きたIT不況はすぐに日本にもおよび、NECも02年3月期に最終損益が3120億円の巨額赤字となる。すると会社からショッキングな言葉を告げられた。「我々はもう機械学習に関心がない」
機械学習はルカンが没頭していたディープラーニングを包含するAIの根幹の理論。「ここでは思っていた研究ができない」と悟ったルカンは、わずか1年8カ月でNECを去った。
とはいえNECに残した遺産は小さくない。AT&Tからルカンを追ってきたバプニックやボトウはNECに残ったからだ。北米研究所に残った
のルカン学派は遠い本国・日本の研究者たちにも多大な影響をおよぼす。
■ルカンの遺産

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ポップスを歌いイラストを描くAI

日本マイクロソフトが開発した会話ができるAI「りんな」が大ヒット!
エイベックス・エンタテイメントの大型新人だ。
現在の歌声では、人間の歌声を表す波形データをつなぎ合わせる方法が主流だ。
りんなはAIの中核技術で和え宇深層学習で、複数の人の声の高さや大きさ、息継ぎなどを学んだ。
波形のつなぎ合わせではなく、曲と歌詞に合わせてりんなが歌う。
AIで菓子を作る試みもある。東北大学の乾健太郎教授と産業技術総合研究所は、メロディに合わせて自動的に歌詞を作成する技術を開発した。文や段落の切れ目と曲の休符の部分を上手く重ねられるように学習し、歌詞のないクラシック曲にも自在に歌詞をつけられる。
AI活用は絵画などを作る分野にも広がりそうだ。ペガラジャパン(千葉県)はカメラに映った人間の顔をリアルタイムでアニメ風のイラストに変換するシステムを開発した。
同社はAIの最新手法「敵対的生成ネットワーク」(GAN)を使った。写真からアニメを作るAI、アニメの出来具合を評価するAI、さらにアニメから写真を生成するAIとその写真を評価するAI等複数のAIを組み合わせた。
人間の顔とアニメ風のイラストの画像を其々1万枚を学習させた今回のシステムは、初めて見た人間の顔でも上手にイラストに変換できるようになった。
初音ミクで有名になったボーカロイドは急速にファン層を取り込み、未だ進化を続けている。
それまではAIという概念ではなく、自動演奏をロボットにさせる、という形だったが、AIの進化は、いよいよ人間の気まぐれや抑揚、体内部から発せられる感情をも我々に伝えようというのだ。

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