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半導体の復調鮮明、5G需要が想定以上 端末今年2億台に

半導体業界の復調が鮮明になってきた。次世代通信網「5G」が想定を上回る速度で普及し、高速大容量通信を支える幅広い半導体の需要を底上げするためだ。高性能品を供給する韓国サムスン電子や台湾積体電路製造(TSMC)、米クアルコムなど世界大手の株価は軒並み最高値圏で推移。増産に伴う設備投資も復調傾向で装置や素材など半導体産業全体に強い追い風が吹いている。
「2020年も売上高の記録更新を期待している」。米インテルのボブ・スワン最高経営責任者(CEO)は23日の決算電話会見で強調した。同日発表の19年12月期の売上高は4期連続で過去最高を更新し、20年はさらなる拡大を見込む。
同社の業績のけん引役となるのが各地で導入が進む5Gだ。20年は基地局向けの半導体の出荷が伸び、動画の視聴・投稿などでデータ通信量が増えるため主力のデータセンター向け製品群も増える見通し。スワン氏は「僕らは5G時代に進みつつある」と訴えた。
低迷が続いたスマートフォン市場も活性化する。米国、韓国など一部地域でサービスが始まった19年は5G端末の出荷は2000万台程度だった。20年には日本をはじめ各地で商用サービスが始まり、5G端末の出荷量も2億台超と強気の見通しが相次いでいる。
通信用半導体で圧倒的なシェアを握るクアルコムは2億台程度との予測を公表し、「上方修正の余地は大いにある」(クリスチャーノ・アモン社長)とする。同業の台湾メディアテックの蔡力行CEOは「2億〜2億4000万台が見込める」と発言した。
外部の調査でも強気な見通しが相次ぐ。みずほ証券は12月20日発行のリポートで2億8000万台と従来比で4割も上方修正した。米調査会社IDCも昨年11月、20年の出荷台数が1億9000万台に達すると見通しを発表した。従来予測から5割強の上積みだ。
4Gと比べて通信速度が100倍となる5Gを支える半導体は高性能品が欠かせない。中国ブランドの5G端末のCPU(中央演算処理装置)やメモリー、センサーの性能をみると、米アップルのiPhoneの高級機種と遜色ない半導体を搭載する。アップルも20年に5G対応のiPhoneを発売予定で、5G浸透によってスマホの高性能化が一気に進む。
半導体の市場規模4680億ドル(約51兆円)のうちスマホを中心とした通信分野の用途は36%を占める。さらに10%超とされるデータセンターも5G対応で増強が求められる。このため5G普及に伴う半導体需要の押し上げ効果は、データセンター向けの半導体メモリーが中心だった17年ごろの好況期を上回る可能性が高い。
5G端末の急速な立ち上がりに株式市場も沸く。サムスンやTSMC、クアルコム、インテル、ソニーなど各分野のトップメーカーの株価が軒並み上昇し、20年前のITバブル以来の高値圏で推移する。最先端品を量産する難易度は年々高まり供給できるメーカーも限られる。アップルをはじめスマホメーカーが先端半導体を奪い合う構図となっている。
東海東京調査センター企業調査部の石野雅彦シニアアナリストは「従来予想を上回る急速な5G普及で半導体株に買いが集中している」と解説する。半導体の主要銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は19年の1年間で60%も上昇。装置のオランダASMLや東京エレクトロンも高値圏で推移し、5Gの普及が世界的な株高を演出している。
ただ中国や新興国では消費者心理の改善は鈍く、端末価格が4Gよりも3〜5割程度高い5G対応スマホの購入が広がるかは不透明な面もある。高い端末価格に見合う5Gならではの魅力的な新サービスが生まれるかが普及の鍵を握ることになりそうだ。
(ソウル=細川幸太郎氏、シリコンバレー=佐藤浩実氏、丸山大介氏)

5G全国整備へ新制度 光回線維持で負担金

総務省は、次世代通信規格「5G」の基盤となる光ファイバー回線を全国的に維持する負担金制度をつくる。どこでも高速インターネットの環境を整備するためで、2024年にも携帯電話を含むネット利用者から広く薄く徴収し始める。不採算地域で光回線を持つ事業者に資金を交付し、回線の補修や更新に充てる。米英などはすでに高速ネットを不可欠なサービスに位置づけており、日本も制度化する。
春に有識者会議を立ち上げ、21年夏までに制度案を固める。22年の通常国会に電気通信事業法改正案の提出をめざす。光回線に接続する携帯会社などが負担し、利用者の月額料金に上乗せされる。1契約あたり月数円の負担になりそうだ。
現在、光回線が整備されていない地域には約70万世帯が住んでいる。政府は補助金などを使って整備を促しており、23年度末までに18万世帯に減らせる見通しだ。光回線の設置から維持の段階に移るのにあわせて交付金の制度をつくる。
光回線は5G普及に必要になる。5Gは遠くまで飛ばない電波を使うため、現行の4Gよりも数多くの携帯基地局が必要になる。5Gでの自動運転やスマート農業は人口の少ない地域での活用が期待されている。このためには地方にも基地局をつなぐ光回線も細かく張り巡らす必要がある。
政府は19年12月にまとめた20年度税制改正大綱に5G基地局の整備を前倒しした携帯大手への法人税減税を盛り込んだ。減税や予算で早期整備を促し、交付金で将来にわたり光回線を維持できるようにする。
人口の少ない山間部や離島などの不採算地域のうち、光回線を整備する事業者が1つしかないエリアを交付金の対象とする案が浮上している。光回線維持で赤字が発生した場合は全額を補填する方向。特定の地域で営業しているケーブルテレビ会社や自治体、第三セクターが主な対象になりそうだ。
交付金を受け取った事業者は光回線の維持をしなければならない仕組みにする。事業者は光回線の敷設の義務は負わないため、光回線の整備を担保するものにはならない。
全国で必要な交付金は年数十億円とみられる。NTTドコモなどの携帯大手や通信事業者、ケーブルテレビ会社といったネットサービスを手がける事業者から契約者数や収益規模に応じて徴収する方向で検討する。
米国は固定電話サービスの維持のために年5千億円規模の基金を集める。この資金を受け取る電話会社に高速ネットサービスの提供も義務づけ、全米で高速ネットが使える環境をめざす。英国は高速ネットを18年の制度改定でユニバーサルサービスに追加した。カナダも高速ネットの安定的な提供に向けて基金を設け、30年までに普及率を100%とする目標を掲げる。
日本は銅線などで音声を伝える固定電話を「国民生活に不可欠な通信サービス」(ユニバーサルサービス)と位置づけ、NTT東日本・西日本のサービスを維持するための交付金制度を02年に設けた。現在は携帯や固定電話の利用者から月2円を電話代に上乗せして徴収する。光回線維持もこれに似た位置づけとする。
携帯利用者などには新たな負担が加わる。一方、以前から議論のある携帯電話をユニバーサルサービスの対象とすることは当面見送る。米英が固定電話サービスを携帯で代替することを認めているが、携帯自体の提供を義務づけている国はないとみられる。

ポスト5G、30年実用化へ 速度10倍など官民総合戦略

国内で春に商用化する通信規格「5G」の次世代をにらんだ各国の競争が始まった。日本は2030年をめどに5Gの10倍以上の速度を実現するといったポスト5Gの総合戦略を官民でつくる方針で、中韓やフィンランドも研究や投資に着手した。通信は規格に関わる特許を持つと、機器やソフトの販売で巨額の利益が出る。5Gで遅れた日本は巻き返しに動く。
総務省は月内に、東大の五神真学長を座長とし高市早苗総務相が直轄する官民研究会を立ち上げる。NTTや東芝の関係者らも招き、ポスト5Gの性能目標や政策支援などの総合戦略を6月までにまとめる。育成すべき技術は予算などで開発を後押しする。
5Gの次の高速通信では、個人の立体映像を離れた会議室や教室に浮かび上がらせたり、ロボットが身の回りの世話をしたりする社会を描く。膨大なデータを瞬時に送るため、総務省はポスト5Gは最低でも5Gの10倍以上の速度が必要とみる。大量のデータを運ぶのに適しているが、未利用の高い周波数の電波を通信に使えるようにする。
ポスト5Gは「6G」とも言われ、各国も30年ごろの実現に向けて研究に動き出している。中国政府は19年11月、6Gの研究開発を担う2つの機関の立ち上げを発表した。フィンランドの大学や政府系機関も6Gの研究開発プロジェクトを始動した。韓国ではサムスン電子とLG電子が19年にそれぞれ6Gの研究センターを設けた。
2時間の映画を3秒でダウンロードできる超高速通信の5Gは19年4月の米韓から商用化が始まった。国内でも春からNTTドコモなどの携帯大手が順次サービスを始める。5Gの普及もこれからだが、各国はすでに5Gの次を見すえる。
あらゆるモノがネットにつながり、医療データなどの流通も増える30年代は情報の抜き取りや改ざんを防ぐセキュリティー対策も求められる。電力消費を抑える技術も必要だ。セキュリティーは東芝が理論上絶対に解けない量子暗号を使った通信システムを開発中。NTTは光信号を電気信号に変えずに省エネ化する次世代通信の開発を急ぐ。
総務省はポスト5Gの標準化に向けた国際電気通信連合(ITU)などの議論で、日本企業が強みを持つセキュリティーなども標準技術に採り入れるよう働きかける。
サイバー創研によると、5Gの標準規格に関する必須特許の出願件数は19年2月時点で、サムスンが世界全体の8.9%を占めて首位だった。華為技術(ファーウェイ)が8.3%、米クアルコムが7.4%で続く。日本勢は5.5%のドコモが6位で最高だった。
特許を海外企業に押さえられると日本企業は特許料を負担しなければならず、ものづくりの競争力も落ちる。携帯基地局の日本勢の世界シェアはNECが1%、富士通は1%以下まで下がった。スマートフォンなどの携帯端末でも日本勢の存在感は薄れている。

スマホ「動画見放題」にも速度制限 総務省指針案

総務省は25日、有識者会議を開き、携帯電話で動画など特定のアプリの通信を使い放題にする「ゼロレーティング」サービスに関する指針案をまとめた。対象コンテンツの選択基準を明確にすることや、月の通信量の上限を超過し通信速度が制限される際はゼロレーティングサービスも含めて一律に実施することが望ましいとし、大手通信事業者に対応を求めた。総務省は同プランの契約者以外の利用者の通信品質に悪影響が出ないなど公平にするようにし、サービス対象になる巨大IT(情報技術)事業者のコンテンツを優遇することがないようにすることを狙いとしている。「ゼロレーティング」サービスは対象となるアプリを使っても通信量が毎月の通信容量から差し引かれず、実質的に使い放題となるサービスだ。KDDIやソフトバンク、格安スマホ大手のビッグローブなどのサービスでは、月の上限データ量を超えて速度制限がかかっても、ゼロレーティング対象のコンテンツは対象外となり、利用には速度制限がかからない点が人気だ。指針ではここに事実上、規制をかける。総務省は例外をなくし一律で速度制限をかけることが望ましいとした。携帯会社が限られたコンテンツを優遇し、他の多様なコンテンツを失う恐れが指摘されている。「利用者のニーズに応じてゼロレーティングサービスを提供してきたが、指針案に従って見直さざるを得ない」。ビッグローブの黒川英貴エグゼクティブエキスパートは悔しさをにじませる。同社は2016年11月から動画サービス「ユーチューブ」など10種類以上の通信量を課金しないオプションを提供してきた。ゼロレーティングサービスは「新規加入の2〜3割がプランに加入」(ビッグローブ)と消費者の人気も高い。見直しによって消費者の利便性が損なわれる恐れがある。その一方で、公平性の観点では様々な課題が指摘されていた。ひとつはゼロレーティングによるネットワーク利用者間の公平性の問題だ。ゼロレーティング利用者が通信網を過剰に消費して混雑を招き、非利用者に影響を与えかねない懸念があった。もうひとつはコンテンツ事業者間の公平性だ。「ゼロレーティングサービスで特定のコンテンツを優遇すれば人気コンテンツばかりが強くなり、ネットの多様性がなくなる」(森亮二弁護士)という指摘もあった。ユーチューブのような人気コンテンツに利用者が集中し、中小のコンテンツ事業者が育たなくなるという懸念だ。ゼロレーティングサービスは短期的には競争を活性化する有効な手段だ。消費者人気も高い。総務省も「直ちに事業法上問題とはならない」と注記し、過度な規制を避けた。だがビッグローブのように見直し必至と受け止める事業者もおり、規制のバランスが求められる。▼ゼロレーティングとは 特定アプリでデータ課金せず 動画配信やSNS(交流サイト)といった特定のアプリで、利用者が使うデータ通信量に課金しないサービスを指す。動画共有サイト「ユーチューブ」や音楽配信「スポティファイ」のように使用するデータ量が大きいネットサービスが主な対象だ。国内では「カウントフリー」とも呼ばれる。 国内ではソフトバンクなどの携帯通信大手のほか、格安スマートフォン事業を展開する仮想移動体通信事業者(MVNO)が提供する。料金プランに組み込んだり、オプション機能として提供したりすることが多い。消費者にとっては、使用するデータ通信量を気にせずに動画など好きなコンテンツを楽しめる利点がある。 ただ、大手IT(情報技術)企業などの人気サービスを対象にすることが多く、中小サービスが育たなくなる懸念がある。米国では2015年に、米連邦通信委員会(FCC)が基準に基づいて個別に判断するとしていた。だが17年の米トランプ政権の発足後にルールの大部分の廃止が決定。欧州では一律に禁止せず、各国の規制当局が個別に判断する基準を設けている。

フェイスブックとKDDI、5Gで連携 AR普及推進

米フェイスブックとKDDIは、次世代通信規格「5G」のサービス開発をにらみ、日本国内向けのコンテンツ開発で連携する。大容量のデータを送受信できる5Gの特長を生かし、高精細な拡張現実(AR)や仮想現実(VR)の映像を使った商品販売システムを提供する。日本の通信大手は5G対応で米メディア大手と動画配信で組んできたが、米IT(情報技術)大手との技術連携にまで広がってきた。
フェイスブックは米国の「インスタグラム」上で、ARで化粧品などを試せる実験を始めている
日本国内の5Gを巡っては、KDDIとソフトバンクが2020年3月、NTTドコモも20年春に商用化する計画だ。5Gは情報を伝える実効速度が最大で現状の4Gの100倍になる速さに加え、遅延が少ないといった特徴がある。高精細なARやVRの映像はデータ容量が大きくなるため、高速・大容量の通信回線が欠かせない。
フェイスブック日本法人とKDDIは5Gの商用化にあわせ、アパレルやドラッグストアなどの小売店向けにシステムを提供する。具体的には、フェイスブックの写真共有アプリ「インスタグラム」で店頭の商品を撮影すると、化粧品を自らの顔の画像で試したり、洋服を試着できたりする。商品の色やサイズを選び、その場で購入できるようにする。
KDDIはARなどを活用したい企業に対し、システム利用に必要なクラウドや通信技術を提供し、利用料を受け取る。消費者はKDDIの「au」と携帯電話の契約をしていなくても利用できる。両社は購入時のスマートフォン決済との連携も検討する。
両社は20年1月にも、商品販売でARなどを使った特設店を都内に設ける。スマホのカメラで店頭の品物を撮影すると、AR技術で商品の詳細を説明できるようにする。アバター(分身)を使った店頭での接客も可能になる。
5Gの商用化を控え、NTTドコモが米ウォルト・ディズニーの日本法人との協業を決めるなど、通信各社は個人向けのコンテンツ開拓を急いでいる。AR・VRなどの映像技術は個人向けの主要サービスとして期待されている。
NTTドコモは複合現実(MR)技術の米マジックリープに出資した。目の前の現実の視界にデジタル映像を重ね合わせるMR技術を活用したサービスを開発する。
米調査会社IDCによると、23年のVR・ARの世界市場は18年比18倍の1600億ドル(約17兆円)に拡大する見通し。フェイスブックは18年にVR端末「オキュラスゴー」を発売するなど、この分野では優位に立つとされる。
フェイスブックは収益の柱である広告事業に加え、ネット通販などに力を入れVR・ARはそれらを支える技術になる。米国では今春、インスタグラムで投稿画像の商品購入を完結する機能を試験導入した。外部サイトに移行せずに手軽に商品を購入できる。日本でも導入を検討し、KDDIのスマホ決済「auペイ」など複数と連携するもようだ。

韓国KT、非武装地帯の村に5G スマート農業活用

韓国と北朝鮮の休戦ラインを挟んで帯状に広がる非武装地帯(DMZ)の韓国側にある唯一の村、台城(テソン)洞。人の出入りが厳しく統制される「陸の孤島」に、韓国通信大手KTが次世代通信規格「5G」インフラを構築した。有事の安否確認やスマート農業、遠隔教育などのサービスを提供する。
ソウルから車で1時間あまり。韓国軍による検問を経てたどり着いた台城洞は46世帯、約200人が暮らすのどかな農村だ。1953年の朝鮮戦争の休戦協定で、南北はDMZ内にひとつずつ村を置くことを決めた。台城洞は同年、そうしてつくられた。休戦ラインの反対側に北朝鮮がつくった宣伝村、機井(キジョン)洞は目と鼻の先だ。
南北関係の改善で多少は和らいだとはいえ「私たちはいまも緊張下で暮らしている」(村の男性)。500メートルしか離れていない休戦ラインに近づくときは軍人のエスコートが必要だ。村の出入りにも門限がある。
KTは5Gを使い、村民の不便を解消するソリューションを提供する。一例は安否確認システムだ。村には警察も病院もない。問題が起きればまずは里長が対応する。全世帯に非常ベルが設置され、村民がボタンを押せば、里長が常駐する村民会館の大型モニターでどの家で押されたかがすぐにわかる。
農業のスマート化も進めた。センサーが土壌の状態を検知し、スプリンクラーが自動散水する。2キロ離れた貯水池の水門の開閉はスマートフォンで遠隔操作できるようにした。これまでは軍人同行で毎日現場に行き、手動で開閉していた。里長の金東九(キム・ドング)さん(50)は「時間が節約でき、家族と過ごす時間が増えた」と語る。
村にある唯一の学校、台城洞小学校では仮想現実(VR)などを使った授業が取り入れられている。室内体育ではボールを使った的当てなどのゲームができ、他校とのオンライン対戦も可能だ。
KTでは8月現在、携帯電話の加入者のうち4.8%が5Gを利用しており、同社は今後も比率の拡大をめざしている。南北分断の象徴である台城洞を「ショーケース」とすることで、5G普及に弾みをつけたい考えだ。
(台城洞で、鈴木壮太郎氏)