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果物すぐカチンコチンに、急速冷凍技術で食品ロス回避

編集委員 吉田忠則

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まだ食べられるのに様々な事情で廃棄されてしまう「食品ロス」に注目が集まり、回避するための取り組みが進められている。そうした中、冷凍技術を使って食品ロスを防ぎつつ、新たな流通の仕組みを作ろうとする試みが始まっている。

特殊冷凍事業を手がけるデイブレイク(東京・品川)の食品加工ルーム。スタッフが産地から届いたキウイを包丁で細かく切ってトレーに並べ、冷凍設備の中に静かに入れた。

待つことおよそ20分。トレーを取り出し、カットしたキウイを両手に1つずつ持ってたたいてみせると「カチッカチッ」と小気味良い音が響いた。わずかな時間で中心までしっかり凍ったのだ。

デイブレイクが使用する冷凍前のキウイ

デイブレイクが使用する冷凍前のキウイ

デイブレイクは2013年の設立。食品を短時間で凍らせることのできる設備の販売が事業の柱だ。普通の冷凍庫と違い、一気に食品の中まで凍らせることができるため、氷の結晶が大きくならない。冷凍しても肉や魚などの細胞が壊れないので、食材のおいしさを損なわずに済む。

さらに同社は、鮮度を長期間保つためには何度でどれだけの時間をかけて冷やし、どう包装すればよいのかも食材ごとに調べている。その結果を踏まえ、冷凍設備の使い方をきめ細かく指導しながら販売することで、事業を伸ばしてきた。

コロナ禍のもとで、この技術のニーズが高まっている。客足が減った飲食店で廃棄になりそうな食材を、品質を落とさずに保存したいという需要が増えたからだ。これまでは問い合わせ件数が1カ月に70件程度だったのに対し、最近では200件に増加。販売数も月3台から10台程度に増えた。

特筆すべきは、設備を導入した飲食店が食品を冷凍保存して客が来るのを待つだけではなく、通信販売にも乗り出し始めている点だ。飲食店の中にはコロナ禍による売り上げの落ち込みを回復できていないところが少なくない。冷凍技術を取り入れることで、通販という新たな流通チャネルを開拓する手がかりをつかむことができたのだ。

デイブレイクのフローズンフルーツ商品「HenoHeno(ヘノヘノ)」

デイブレイクのフローズンフルーツ商品「HenoHeno(ヘノヘノ)」

デイブレイクは冷凍設備の販売と並行して、凍らせたカットフルーツの自社販売も手掛けている。19年春のサービス開始に先立ち、木下昌之社長は全国の生産者を訪問した。豊作による値崩れで大量の果物が廃棄されているのを知った木下氏は「まだ食べられるのに廃棄されている果物に新しい価値を与えたい」と考え、特殊冷凍技術を活用することにした。

生産者の悩みは、相場が下がっているのに選果などに人手をかけて出荷すると、利益が出なくなってしまう点にある。廃棄するのはそのためだ。これに対し、デイブレイクはカットして使うので多少の傷や規格を気にせずに仕入れる。生産者にとっては選果が不要となり、経費を減らせる利点がある。デイブレイクは仕入れるとすぐに冷凍するので、一度にまとめて仕入れても販売を平準化できる。

そうして開発したフローズンフルーツの商品名は「HenoHeno(ヘノヘノ)」。アイスのようにシャリシャリの食感を楽しみながら食べる。企業の福利厚生の一環として、社員が食べられるようにオフィスの冷凍庫に入れておくというサービスで販売をスタートした。現在は一般の消費者を対象に、同社のサイトを介した通信販売で売り上げを増やしている。

デイブレイクの木下昌之社長

デイブレイクの木下昌之社長

この事業の次の展開として着手しようとしているのが、冷凍設備を導入した加工工場などと組んで「ヘノヘノ」を作ってもらい、地方での販売量を増やすことだ。すでにパートナーの工場は長野県や福島県など各地にある。周りに生産者が多いため関係を築きやすく、物流などのコストも抑えられるという利点を生かし、東京だけでなく各地でブランドを広めることを目指す。

「果物の冷凍と保存はもともと地方でやるべきビジネスモデルであり、地方創生に役立てることもできる」。木下氏はそう語る。コロナのもとで、農業を含む食品業界は新たな流通の仕組みを模索している。特殊冷凍はそれを可能にする技術として、地方活性化のきっかけにもなるかもしれない。

食品ロス、シェアで解消

新法施行踏まえ、ネットで消費者につなぐ
食べられるのに廃棄される食品をシェアリングで減らす動きが広がってきた。クラダシ(東京・品川)などのスタートアップ企業が相次いで余った食品と消費者をインターネットで結びつけるサービスを提供。余剰食品を安く販売する店舗も増やす。食品ロス削減推進法が1日に施行され官民で対応が求められる中、無駄をなくすよう消費の見直しが進みそうだ。
賞味期限が迫るなどした食品を割安に買える通販サイトの先駆けが、クラダシが運営する「クラダシドットジェイピー」だ。会員は登録無料だが送料がかかる一般と、月550円で送料無料のプレミアムを合わせた会員数は7万8千人。4年で5倍以上に増えた。
賞味期限が近づいたり、傷ついたりしたパスタやゼリー、缶詰、飲料から生モノまで、希望小売価格より6〜7割安く売る。最大で9割引きだ。
売り上げの一部が福祉団体などに寄付される仕組みとし、メーカーが嫌う安売りによるイメージ悪化を抑制。供給企業は600近くに増え、月150トン以上の食品ロス削減につながっている。
クラダシは消費者との接点を増やそうと実店舗にも進出。ホームセンターの島忠と組み、今夏から千葉県や埼玉県の店に販売コーナーを開いた。 農林水産省によると、日本の食品ロスは2016年度時点で約640万トン。国民1人あたり毎日茶わん1杯分にあたる。新法は国の基本方針を踏まえた自治体の削減推進計画策定のほか、企業の協力と活動を求める。
削減の取り組みでは、大手が規模で先行する。コンビニエンスストアがうなぎ弁当など季節商品を受注生産に変更し、外食店は持ち帰りや少量のメニューを増やした。
新興勢のサービスは利用者が急増し、消費行動の変化を後押ししそうだ。バリュードライバーズ(東京・港)のサイト「たべるーぷ」には農家や水産業者などが出品し、規格外の農水産物の廃棄を防ぐ。加工して付加価値も高める。1万の消費者や飲食業者が買い手に登録する。
コークッキング(同)の「TABETE(タベテ)」は東京などの約340の飲食店などが余ったパンや料理を出品。カード決済し店舗で受け取る。政府は2030年度に事業系の食品ロスを2016年度比で2割強減らす目標だ。
(大林広樹氏)