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水門など防災施設の電気設備 6割が耐震調査せず

国の補助金を受けて整備され、自治体が耐震性を調査した河川管理施設や下水道施設などの防災施設のうち、約6割で電気設備の耐震性を調べていなかったことが会計検査院の調査でわかった。検査院は「電気設備の耐震性が確保されていない場合、地震発生時に河川防災施設の機能が十分に発揮されないおそれがある」として国土交通省に改善を求めた。
河川管理施設とは水門や雨水排水ポンプ場など。建屋や水門、ポンプなどで構成され、制御装置や停電時のための自家発電装置などの電気設備が設けられている。水門は災害時、水位が上がった本流から支流への逆流を防ぐために閉じたり、雨水を排水するために開けたりして防災上の重要な役割を持つ。
検査院が調査の対象としたのは、国の補助金で整備され、2018年度末までに自治体が耐震性を調査した9県38市町の272の防災施設。その結果、8件21市町の158の防災施設(補助金は約945億円)で電気設備の耐震性を調べていなかった。
国交省が自治体に対し、指針で防災施設本体の耐震性の調査方法は明確に示していたが、電気設備の調査方法は示していなかったのが、調査の未実施の原因とみられる。
例えば、三重県は志摩市を流れる前川の河口部に1998年、津波や洪水の被害を軽減するため「鵜方水門」を設置した。南海トラフ巨大地震の被害が想定されていることから、県は2012年に水門の耐震性を調査し改修工事をした。しかし、水門を稼働させるための制御装置や自家発電装置の耐震性は調べていなかったという。
県河川課の担当者は「電気設備の耐震対策は国から明確な指針が示されておらず、どのように対応したらいいのか分からなかった。今年中に耐震性の調査にとりかかる予定で早急に対応したい」と話している。
検査院の指摘を受け、国交省は今年9月、自治体に対して防災施設の電気設備についても耐震性を調査する必要性を伝達している。
一方、自然災害で決壊すると人的被害が生じる恐れがある「防災重点ため池」などについて、23府県が国の補助金を受けて耐久性などを調査した約1万カ所を検査院が調べたところ、約4割で危険性の判定が不十分だったことも判明した。
国の指針では「200年に1度に起こる洪水」が基準だが「50年に1度」にするなどしていた。改修が必要なため池が見逃されている可能性があるという。
ODA効果は不十分 給水施設未使用 検査院指摘
主に発展途上国を対象に、インフラ整備や人道支援などを実施する政府開発援助(ODA)を会計検査院が調べた結果、約20億円の事業で整備したソロモン諸島の給水関連施設が全く使われていないなど、十分に効果を発揮していないものがあったことがわかった。
検査院は10カ国の146事業を抽出調査。返済義務を課さずに資金を提供する無償資金協力で実施したソロモン諸島の給水事業では、水の濁りを改善する施設を整備したが、既存の送水管が漏水していたため、施設経由では目的地まで水が届かなかったという。
施設は2014年の完成直後に使われなくなり水質も改善されなかった。国際協力機構(JICA)が計画時に送水管などの状況を見落としていたという。
海上監視目的で2015年にベトナムに提供した中古船3隻(調達額計約2億円)は、少なくとも3年以上使われずに、造船会社の岸壁に係留されたままだった。また、約110億円の有償資金協力で2008年に建設したインドネシアの下水処理場は、処理後の水質が目標値に達していなかった。
〔共同〕

水道施設の水害対策、8割が未実施 地震に比べ手薄

東日本各地で続く水害で、水道設備の防災対策の遅れが浮き彫りになっている。台風19号では最大で14都県の約16万3千戸が断水。25日からの大雨でも千葉県で浄水場の設備が被害を受け約4700戸が断水した。厚生労働省の調査では、浸水想定区域にある全国の水道施設の8割で防水扉などが未整備で、水道インフラの災害リスクは各地に潜んでいる。
「もうすねの辺りまで水が来ている」。10月13日午前1時すぎ、福島県いわき市の「平浄水場」の職員は市水道局に電話をかけ、浄水場の緊迫した状況を報告した。
電話から約15分後、浄水場の南側約900メートルの夏井川が決壊した。流れ込んでくる水は勢いを増し、結局水位は80センチの高さにまで達した。電源盤が水没して故障し送水ポンプが動かなくなり、一時、市の給水戸数の3割超に当たる約4万5千戸が断水した。
浄水場はハザードマップの「浸水想定区域」にあったが、防水扉や入り口のかさ上げなどの対策は取られていなかった。市水道局の担当者は「東日本大震災で水道管の破損が相次ぎ、老朽化した管の更新を急いだ。同時に浸水対策を進める費用は捻出できなかった」と説明する。
台風19号では各地で浄水場の被災が相次ぎ、茨城県大子町で最大約7900戸、宮城県丸森町では最大約3400戸が断水した。台風21号や低気圧による25日からの大雨でも、千葉県鴨川市で浄水場の送水ポンプが浸水、最大約4700戸が断水した。
2018年7月に広島県などを襲った西日本豪雨では最大約26万3千戸で断水した。
西日本豪雨を受けて厚労省が昨年末にまとめた全国の主要な浄水場などの緊急点検結果によると、3152施設が浸水想定区域にあった。うち81%の2552施設は防水扉の設置など浸水対策が取られていなかった。
防災対策の遅れの背景には水道事業体の財政難もある。厚労省によると、人口減などで全国の事業体の3分の1が供給コストが料金を上回る「原価割れ」の状態だ。国は2018年12月から重要度の高い水道施設に対し、災害対策費の3分の1〜4分の1を補助する緊急対策を始めている。
もっとも、年々激しさを増している最近の豪雨では、これまでの国の対策では想定していなかった取水口や水路の閉塞といった新たな問題も浮上している。
台風19号で被害を受けた神奈川県南足柄市の矢倉沢浄水場では、水源の狩川上流で土砂崩れが起き、流れ込んだ土砂や流木で水路がふさがれた。浄水場内のポンプも土砂で故障し最大約6900戸の断水につながった。
通常時はごみをかき上げる機械で水路の閉塞を防いでいるが「今回は濁流の勢いが予想以上で機械の許容量を超えてしまい、土砂で水路がふさがれた。職員の派遣も間に合わなかった」(同市上下水道課)という。
水道施設の防災に詳しい金沢大の宮島昌克教授は「これまで水道施設の水害対策は、地震対策に比べて手薄だった」と指摘。施設強化などのハード対策は時間やコストがかかるとして「水害の発生を前提に、水の備蓄や応急給水体制の充実などの対策を進めることも重要だ」と話している。