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焼きたてを通販で 「ロハコブレッド」コロナ禍で2倍に

コロナ禍で成長したパン事業。敷島製パンなどのメーカーと協業。リピーターが多いという
 
オフィス用品のアスクルが手掛ける電子商取引(EC)、「ロハコ」がさまざまなヒット商品を仕掛けている。コロナ禍でヒットしたのが、焼きたてのパンが届く「ロハコブレッド」。日々食べるパンを通販専用の商品にすることで、意外なメリットがあったという。ECで日持ちのしない商品を届けられる仕組みを聞いた。
近年、ロハコが力を入れているのが、オリジナルの食品・飲料のプライベートブランド(PB)商品だ。商品が到着してからの取り出しやすさを工夫したオリジナルダンボール入りの5本入り「LOHACO Water 2L」。発送当日に精米することで鮮度の高い状態で自宅へ届け、ハサミ無しでも開封可能な「ろはこ米」が次々にヒット。消費サイクルの早い米や水は、ユーザーが何度もサイトを訪れたくなる仕掛けとなった。
そして、「通販で焼きたてのパンを買う」という新たなトレンドを生み出したのが、2019年9月に満を持して発売された「ロハコブレッド」だ。新型コロナウイルス感染症対策で外出自粛が続いた影響も後押しし、20年4、5月の売り上げは3月比約200%と伸びた。しかも「他商品と比べて圧倒的なリピート率がある」(ロハコ)というのが特徴だという。ユーザーの再訪を促す、同サイトの看板商品へと一気に駆け上がった。
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開発のきっかけをアスクル マーチャンダイジング本部 LOHACO生活用品統括部で飲料・食品を担当する立花智子氏に聞くと、「通販のパン市場は巨大なブルーオーシャンだった」という答えが返ってきた。総務省統計局「家計調査(家計収支編・総世帯)」によると、1世帯当たりのパンの支出金額は11年以降ずっと米を上回り続けている。そこへ、高級食パンブームも到来。ロハコでも仕入れ商品である、ロングライフパン(特別な酵母を使用した消費期限の長いパン)の売り上げも伸びていたが、ロングライフパンは、菓子パンのような、甘くて味の濃いモノが中心。「お米のように、主食として食卓に並び、毎日食べられるパンを売り出したいと考え、開発に至った」(立花氏)という。
ラインアップも豊富だ。敷島製パンやタカキフードサービスパートナーズと協力して生産しており、水を一切使用せず、牛乳や豆乳のみで仕上げた「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」(税込み358円)や、国産小麦にこだわったハード系のパン「国産小麦の石窯パン 長時間低温発酵バゲット」(税込み239円)などがある。ユーザーからは「パン屋さんに行かずにこれだけの味を手軽に食べられるのは便利」と軒並み好評だ。
「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」 食パンは生食も想定して作られている。7月9日に「石窯レーズン食パン」が発売されるなど新商品開発が進む。358円(税込み)
「国産小麦の石窯パン 長時間低温発酵バゲット」 ハード系パンも人気。239円(税込み)
秘訣は注文直後に解凍して配送するシステム
ロハコブレッドがヒットした要因は大きく分けて2つ。1つ目は、ECでのパン販売を可能にした独自製法だ。焼きたてパンの通販は、技術的には高い障壁があった。「パンは消費期限が短く、手元に届くまで時間がかかる通販には不向き。冷凍して送れば消費期限の問題はクリアできるが、今度は送料が跳ね上がってしまう。またパンはスペースをとるため、家庭用の冷凍庫では容量を圧迫してしまう」(立花氏)
そこで考案したのが、パンを焼き上げた直後に、瞬間冷凍し、受注が入った数量のみを発送日に解凍する方法だ。「ろはこ米で採用している、発送当日の精米という手法がヒントとなった。長時間低温発酵させた生地を焼き上げて、急速冷凍させることで、解凍後も焼きたての風味や食感が維持できる」(立花氏)
「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」 の製造工程
2つ目の特徴は、サイズだ。一番人気の「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」(税込358円)は、通常の食パンの8割ほどと小さめに作られている。市場調査によって単身の人を中心に、トースターを持たない人が増えていることが分かったため、「生食でもおいしく、手軽に食べきりやすい小さめのサイズを選んだ」(立花氏)。
ロハコブレッドのヒットは思わぬ好影響も生んだ。「パンのお供」としてジャムやオリーブオイルなどの商品が選ばれることも増えた。「最近では、メーカーからコラボ販売の提案をもらうこともある。例えば、食パンとスープの朝食セットやバケットとテリーヌのワインのおつまみセットというケースもあった。毎日の献立を考えるのは意外と大変。ユーザーの食卓に新しい提案が届けられると思うので、拡充していきたい」(立花氏)
今後はさらなるラインアップ拡充を目指す。パンは種類を増やせば増やすほど売り上げが伸びることが分かっており、ゆくゆくは人気ベーカリーとのコラボも視野に入れている。どこに住んでいても自宅で各地の有名店の味が楽しめるようになる。
ロハコブレッドは、26都府県のみでの販売だったが、好評を受け発送拠点を強化。20年6月26日より沖縄や一部離島を除く46都道府県で販売を開始し、さらに拡大を続けている。
(ライター 井澤梓、写真 fort)

コロナと子どものストレス 表出の手助けを 半谷まゆみ・国立成育医療研究センター研究員

コロナ禍で児童生徒が心に受けた影響の一端が国立成育医療研究センターの調査で明らかになった。担当した半谷まゆみ研究員は大人が子どものストレスの表出を助け、受け止めることが重要だと指摘する。
 
 
新型コロナウイルスの感染禍が続く中、多くの学校が再開されて3カ月がたとうとしている。この間、子どもたちはどのような心の状態で過ごしてきたのだろうか。
 
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半谷まゆみ・国立成育医療研究センター研究員
国立成育医療研究センターのコロナ×こども本部は今年6〜7月、全国の0〜17歳の子どもを持つ保護者と7〜17歳の子どもを対象に2回目の大規模なインターネット調査を実施し、保護者5791人と子ども981人から回答を得た。第1回は臨時休校が続く4月末〜5月に行われた。
ネット調査であり回答者の属性に偏りがある可能性が否めない。また、2回の調査の回答者集団は同一ではないため、単純な比較はできないことをお断りした上で、このほどまとまった第2回調査の結果を報告したい。
グラフは、子どもに「あなたにあてはまり、今も困っていること」を複数回答で選んでもらった結果の一部である。こうした何らかのストレス反応・症状が全体の72%にみられた。
 
 
調査時期が緊急事態宣言とほぼ重なった第1回調査では75%で、学校再開後も改善がみられていない。遅れた学習を取り戻すべく授業時間数や宿題が増えた一方、感染対策として部活や行事は中止・縮小となり、大切な学びの機会や楽しみが失われたことが影響しているように思われる。
学校再開に伴い「たのしい」(小学校低学年)という声もある一方で、「せんせいがこわい。ともだちとあそぶとおこられます」(小学校低学年)、「コロナにかかるのが怖い。学校に行きたくないと思ってしまう」(小学校高学年)、「課題が多すぎて終わらない」(高校生)との声もあった。
ストレス反応は学年によって様相が異なる。逃避症状である「コロナのことを思い出させるような人や場所、物には近づかない」は小学1〜3年生では31%だが、同4〜6年生は18%だった。
覚醒亢進(こうしん)症状(強いストレスを受けたときに神経が張り詰めた状況になること)である「最近、集中できない」に該当した高校生は58%に達し、30%前後だった小中学生を大きく上回った。この割合は1回目調査の42%から大きく上昇した。高3はこれから大学受験や就職活動が本格化するだけに、丁寧な対応が必要だ。
「自分のからだを傷つける」など自傷他害の行動が表れている子どもはどの年齢層でも1割前後みられ、非常に危ないサインと考えられる。
強調したいのは、こうしたストレスに子ども自身も周りの大人も気が付いていない可能性があることだ。子どもはストレスを言語化して表出することが難しい一方、それを助けてあげることがストレスへのケアになる。
大人は子どもの「集中できない」「暴力を振るう」などの行動的な側面に目が行き、ともすると叱ったり努力不足と捉えたりしがちだが、その裏にある不安、不満などを子どもが話せる場を作り、しっかりと受け止めてほしい。その子なりの頑張りを認め、褒めることも大切なケアだ。
現在、現場の教員には体力的にも精神的にも多大な負荷がかかっていると聞く。また、保護者の精神的負担が少なくないことも調査結果から分かっている。子どもと関わる大人のストレスケアも重要な課題である。
調査では偏見・スティグマ(らく印)の防止が必要であることも分かった。子どもの32%が「自分や家族がコロナになったら、秘密にしたい」、22%が「コロナになった人とは、コロナが治っても付き合うのをためらう(あまり一緒には遊びたくない)」と考えていた。保護者もそれぞれ29%、7%が該当した。
このような意識は不安などから生じたと考えられるが、いじめや差別の温床になりかねない。なぜこれが問題なのかを大人と一緒に考える機会を持つことが大切だ。正しい知識を身につけ、自分も仲間も大事にできるよう、子どもにも分かる言葉で導いてほしい。
コロナ禍を受けた様々なルールの変更や決めごとについて子どもの意見が反映されているかどうかを尋ねたところ、小学校高学年の25%、中高生の42%が「そう思わない」と答えた。もちろん、子どもの意見を全て取り入れることは難しいかもしれない。それでも子どもが自由に意見や気持ちを表せる場があること、それを否定することなく受け止めてくれる大人がいることは、子どもたちの大事な権利である。
報告書の全文は同センターのホームページで公開している。子どもと関わる方には、子どもたちの自由記載の項だけでもぜひ目を通していただきたい。きっと何かに気づかされるはずだ。
なお、コロナ禍における子どものメンタルヘルスに関する海外での大規模研究として、英オックスフォード大学を中心としたCo-SPACEがある。コロナ×こども本部ではこのチームとの国際共同研究を通して、海外の子どもの様子との比較検討も進めている。
9月1日から第3回調査「コロナ×こどもアンケート」を始める(国立成育医療研究センターのホームページからアクセス可能)。アンケートに答える体験を通して、子どもや保護者にふり返りや気づきを促せるように工夫している。多くの方々の協力を期待したい。
■心の負担、潜在化 網羅的調査必要
国立成育医療研究センターの調査は小中高校の児童生徒や保護者のストレスの状況を知る上で貴重な資料だ。相当数の子どもが心に負担を抱え、かつそれが潜在化している様子がうかがえる。
ただ、任意のネット調査であるため全体の状況を捉え切れていない可能性がある。回答した子どもや保護者は比較的余裕のある層が多く、実態はより厳しいことも考えられるという。
コロナ禍で子どもの学習や心の状態はどうなっているのか。実態がつかめていないことは問題だ。海外の例も参考に、網羅的な調査が必要なのではないか。(中 氏)
 

感染情報、遅い共有・発信 日本の研究機関、米・独に大差 リスク管理の発想欠如

米CDCや独ロベルト・コッホ研究所はビジュアルな情報を日々更新している
「まだ調べられていない」「そこは自信がない」。先週、都内で開いた日本感染症学会の学術講演会で、国立感染症研究所の脇田隆字所長は会場からの質問にたびたび言葉を詰まらせた。
新型コロナウイルスの国内感染が広がりだしてから半年以上たつ。しかし、日本を代表する専門研究機関の感染研や、多くの患者を治療してきた国立国際医療研究センターの情報発信は不十分なままだ。
感染拡大を防ぎ治療法を探すにはウイルスはもとより、患者の遺伝子データや症例の詳しい報告が欠かせない。付属病院に来る感染者らのデータを収集、分析する基礎医学系の大学教授は「感染研と協力したくても情報共有がなければ話にならない」と突き放す。
意図的な情報隠しはなくても「縦割り組織で限られた専門家がすべてを引き受けようとするため、作業が追いつかないのだろう」とみる。結果的にデータや成果の囲い込みを招きかねない。
 
 
感染研がホームページで公表する国内の感染状況は、発生からかなりの遅れがある。最新の「直近の感染状況等」は8月5日現在のものだ。14日公表の「積極的疫学調査の結果」は6月3日時点。傾向の把握に役立つ図表の多くは2週に1度程度しか更新されない。
日本の新型コロナ情報の収集・発信力の貧弱さは米国やドイツと比べれば歴然としている。米疾病対策センター(CDC)は当初、PCR検査キットに問題がみつかるなどして批判を浴びたが立ち直りも早かった。
幹部が頻繁に記者会見して感染状況や検査の課題を説明し、事態収拾を急いだ。今は日々のデータや週ごとの概要をわかりやすく公表している。「数週間先の見通しを示し公衆衛生上の対策を支援する」目的で新規感染者数、死者数や入院者数の「予測」も掲載する。
30以上の大学などの数理統計や予測モデルの研究グループから計算結果を集める。モデルにより結果はばらつくが統計的に可能性の高い変化傾向は示せる。外部との開かれたデータのやりとりが情報整理を可能にした。
独ロベルト・コッホ研究所はホームページ上で独語と英語で感染情報を毎日更新する。感染者数の地域分布、年齢別グラフなどを示し何が読み取れるかの解釈も載せる。1人の感染者から何人にうつるかを示す実効再生産数の推定値も日々公表し、傾向をつかみやすい。
患者に投与した薬と症状の推移に関する臨床情報も治療戦略に欠かせないが、日本は人手不足もありなかなか整理しきれない。国際医療センターが症例報告のデータベース構築に乗り出したが、内容の一端を公表したのは8月に入ってからだ。
米国立衛生研究所(NIH)は世界の症例や診断、治療などの研究報告を整理したウェブサイト「Lit Covid」を開設した。4万件以上の報告を地域や種類ごとに検索できる。
 
平時、備え進まず
 
情報収集や分析、発信で海外と大きな差がつくのはなぜか。日本大学危機管理学部の福田充教授は「来るべき危機に平時から備えるリスク管理の発想が欠けていたことが背景にある」とみる。情報の扱いは危機管理の要諦だ。「事が起きてから慌てて態勢を整えようとしてもうまくいかない」
政府は感染症対策をバイオテロなどと並ぶ国の危機管理の重点分野とみなしてこなかった。「こんなことが起きたら大変だ」と騒ぐと「あおるな」と批判されがちな日本独特の難しさもある。
研究分野のたこつぼ化も事態を悪化させた。CDCには感染症以外の専門家もおり、外部とつながっている。感染研なども何でも自前でやるのは無理がある。国内の症例報告などの収集で先行する感染症学会や国際医療センターとの連携を深めれば、情報収集・発信も速まり充実するだろう。
仏英の製薬大手の日本法人トップを務めたコンサルタントのフィリップ・フォシェ氏は「多くの日本人は情報に対して受け身で、あまり疑問も持たない」と指摘する。政府や専門機関のお膳立てを待つばかりではなく、一人ひとりが危機意識を持ち情報を取りに行く姿勢も大切だ。
(編集委員 安藤淳氏)
 

新型コロナ「正しく恐れて」 わかってきた特徴と対策 チャートで見る感染再拡大

新型コロナウイルス感染症の患者が確認されてから8カ月が過ぎた。感染者は再び拡大に転じており、これまでのデータや研究から新型コロナの特徴の一端が分かってきた。確かな知識を持ち対策する「正しく恐れる」心構えが大切だ。
 
 
 
日本の感染再拡大のペースは、世界的には依然として緩やかだ。直近1週間(8月4〜10日)の人口10万人あたりの新規感染者数は約7人にとどまる。100人以上が感染するブラジルや米国のおよそ20分の1の水準だ。
 
 
 
「第1波」となった今春は、医療崩壊につながりかねない重症患者が急増した。5月初旬には患者全体に占める重症患者の比率が5%台に達した。一方、感染再拡大が始まった7月以降の1カ月間の重症患者比率は1%台にとどまる。
重症化しにくい若者の感染者が増えたことが理由の一つだ。第1波では3割強だった20〜30代の割合は6月下旬以降、6割近くまで上昇した。これに対して60代以上の割合は3割強から1割まで減っている。
 
 
 
しかし、8月に入ってから重症患者の数がじわりと増え始めている。東京都の重症患者は20人前後であまり増えていないが、全国ベースでは80人から200人近くまで約2倍に増えた。地方都市での増加が目立つ。さらに、若者中心の感染が高齢者を巻き込んだものになると、重症患者や死者が増える恐れが出てくる。
 
 
 
医療・療養体制も課題だ。全国でならすと病院や病床、療養施設には余裕があるようにみえる。ただ、沖縄県の病床使用率が80%を超えるなど、地方都市のなかには医療体制が逼迫してきたところも出てきた。コロナの問題は地方都市の問題にもなりつつある。
 
 
 
このタイミングで、感染拡大に歯止めをかけられるかが最大の焦点となる。政府が緊急事態宣言を再発令する可能性は低く、人の移動も春先よりもはるかに増えている。こうした環境では、検査を通じて感染を早期に突き止め、自宅待機や入院によって日常生活から離していくことが有効策になる。
もっとも、日本の検査体制は世界の主要国と比べて見劣りする。人口千人当たり1日の検査数では米国が2件を超えるのに対し、日本は0.2件にとどまる。PCR検査の結果通知には時間がかかるうえ、民間検査の活用も進んでいない。医師らは唾液検査など新しい検査手法には慎重だ。検査体制の拡充を急ぐ必要がある。
 
 
 
■列車内、換気で効果 症状なくても飛沫対策
新型コロナウイルス感染症の勢いが続いている。ウイルスは感染が広がりやすく密閉された空間では感染リスクは高いが、専門家は換気などの対策を徹底すれば感染は防げるとしている。
 
 
 
日本では感染者が5万人を超え、感染が広がる仕組みが分かってきた。厚生労働省クラスター(感染者集団)対策班が米疾病対策センター(CDC)の科学誌に公表した論文は、1〜4月に国内で発生した61のクラスターを分析した。その結果、病院や介護施設を除いて感染を広げた事例はレストランやバー、職場、コンサートや合唱など音楽関連イベント、スポーツジムが多かった。いずれも3密(密接・密集・密閉)の環境で感染が広がった。
一方、密集や密接に近い空間でもクラスター発生の報告がないのが電車だ。国土交通省によると、時速約70キロメートルで走る電車において窓を10センチ程度開ければ車内の空気は5〜6分で入れ替わるという。また飛行機では3分程度で客室内の空気が入れ替わるよう換気している。3密を避けるのが原則だが、窓を開けたり外気を入れ替えるようエアコンを動かしたりすれば、密閉が解消できて集団感染は防げる。経路不明の感染者が多いものの、電車や飛行機での集団感染事例は聞かない。換気すれば集団感染は起こりにくいといえそうだ。
感染者がマスクをすれば、飛沫が広がるのをある程度防げる。世界保健機関(WHO)は人同士が1メートル離れるのも難しい場所では、マスクの着用が感染を広げにくくする効果があるとの見解を示している。オフィスでもマスクをしながら一定の距離をとれば感染のリスクは避けられる。会議室などを分けて開くことも有効だ。
外出時でも厚生労働省などはマスクの着用を促している。ただマスクをつけると熱中症の危険も高まると指摘されている。厚労省は、屋外で周りの人から2メートル以上離れている場合はマスクを外すよう呼びかけている。
病院や高齢者施設では、感染すると重症化しやすい高齢者が多い。施設などでは接触を避けられないためスタッフは感染防止策を徹底している。ウイルスを持ち込むリスクを減らすため、多くの施設で家族の面会制限が続く。タブレットやパソコンなどを用いたオンライン面会で、近況を報告しあうのもよいだろう。
当初、集団感染の事例があったスポーツジムでは感染が発生するケースはみられなくなった。トレーニングマシンなどの配置を工夫して人と人の距離をとって密度を下げたり、消毒の徹底、マスク着用や換気が難しい控室などでの会話を控えるよう呼びかけしている。
 
 
 
積極的な検査を始める例も出てきた。東京都は11日、小笠原諸島へ渡るフェリー乗船前に、乗船客全員に唾液によるPCR検査の試行を開始した。小笠原諸島は6日に1便のフェリーが唯一の交通手段で、医療機関は父島と母島の2カ所の診療所のみ。集団感染が発生すれば影響が甚大なため、水際対策の強化を目指す。検査で陽性が判明した場合は船内や島内での感染拡大防止を図る。こうした取り組みが広がれば、観光業を維持しながら感染リスクを減らせる。
最近注目されるのが無症状の患者から感染が広がることだ。WHOは感染から発症まで5日ほどかかる場合が多く発症の1〜3日前から他人に感染させる可能性があると指摘する。中国・広州医科大学などのチームは感染者の4割ほどは無症状の感染者からうつっている可能性があると推定した。無症状の人からの感染を防ぐには、感染が疑われる場合に迅速に検査して日常生活から離していくことが必要だ。
また新型コロナが濃厚接触しなくても感染する可能性も指摘される。WHOは換気がよくない屋内などで微細な飛沫(エアロゾル)にくっついたウイルスが浮遊し感染を広げる恐れがあるとしている。「マイクロ飛沫感染」と呼ばれ、米国大学などの調査研究からウイルスを含んだ微細飛沫が密閉した空間では数十メートル飛ぶ可能性がある。換気が重要で屋外や感染対策済みの店などでは感染は起きにくいと考えられる。
政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は「対策を徹底すれば感染リスクは減らせる」と強調している。症状がある人は外出を控えて感染拡大を防止するのは重要だが、症状のない人も3密を避けて行動したうえ、マスクを着用して換気した環境で生活すれば感染を減らすことはできる。
■高齢・持病・肥満、リスク高く
新型コロナウイルスが流行した各国の報告から患者が重症化に至るリスクが明らかになってきた。糖尿病や肥満などになっている人や高齢者が重症化しやすく、外出をなるべく自粛したりマスクなどの対策を徹底したりする心がけが大切だ。
初めに感染拡大が明らかになった中国は、世界保健機関(WHO)と大規模な調査を実施して、2月下旬に報告書をまとめた。高齢者や持病をもつ人の重症化リスクが高いことが分かった。
約5万6千人の感染者のうち、30〜69歳が77.8%と大多数を占めた。感染から平均5〜6日で発症するとみられ、重症や重篤な人が全体の約2割を占めた。
年代別にみると致死率は80歳以上で最も高く、21.9%にのぼった。持病のない人では致死率が1.4%だったのに対して、心血管疾患のある人では13.2%、糖尿病で9.2%、高血圧で8.4%、慢性の呼吸器疾患で8%、がんで7.6%だった。
英国の7月の発表でも同様の傾向がみられた。同国の大人約1700万人分の健康に関するデータを分析したところ、約1万900人がコロナに関連して亡くなっていた。80歳以上の場合、死亡するリスクは50〜59歳の20倍以上にのぼったという。糖尿病や重度のぜんそくなどのほか、肥満も死亡リスクに関係するとみられた。男性や黒人・南アジア系、貧しさも危険因子にあがった。
国内でも8月、国立国際医療研究センターが全国の患者の臨床情報を集めた研究の結果を発表。各国の報告とおおむね同じ傾向で、高齢、糖尿病や慢性肺疾患などの持病、男性、喫煙などが危険因子に挙げられた。
重症者数や死者数の地域差なども注目を集めている。日本や韓国などアジア地域の一部に比べ、英米などでは死亡者数が多い。肥満率の差や遺伝的要因、マスクの着用習慣が関係するといった様々な見立てがあるが、結論は出ていない。
重症化する患者では、体内のウイルスが減ったりなくなったりした後も体中で免疫が過剰に働き、全身の血管や臓器がダメージを受けるとする説が有力だ。例えば脂肪組織では炎症が起きやすく、肥満の重症化リスクの高さにつながっている可能性がある。過剰な免疫反応は新型コロナ患者の血栓症の原因にもなりうる。
免疫暴走をとめることが治療に有効とみられる報告も出てきた。英国の臨床試験では炎症を抑える「デキサメタゾン」の投与が人工呼吸器の必要な患者などの致死率を下げるとする結果が出た。厚生労働省のコロナ診療の手引にも記載され、抗ウイルス薬の「レムデシビル」に続き国内2例目の新型コロナ治療薬となった。
■検査、迅速かつ大量に
 東京慈恵会医科大学 浦島充佳教授
東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授
 新型コロナウイルス感染症の再拡大に対してどう臨めばいいのか。今必要な対策について東京慈恵会医科大学の浦島充佳教授に聞いた。

 感染の場が接待を伴う飲食店などから友人や同僚などとの会食機会や家庭内に移っている。高齢者に感染が広がり院内・施設内の感染者が増えることは避けたい。面会の制限などが必要だ。医療が逼迫する兆しが出てきたら病床確保のために不要不急の治療を延期することも必要になる。医療機関は第1波で診療制限などによる損失が出たところが多い。国が補償するなどして協力を呼びかけるべきだ。
 感染経路不明者が増加傾向のため、クラスター(感染者集団)追跡で感染を封じ込める対策は限界を超えたとみている。感染者が増えて保健所に大きな負担がかかっているとみられる。
 そもそも、重症急性呼吸器症候群(SARS)よりクラスター追跡が難しいという問題もある。新型コロナでは発症の数日前から感染力があるとされ、診断がついた時にはすでに2次、3次感染が起きている可能性があるためだ。
 感染者をいち早く見つけるためには検査体制の拡充が必要だ。陽性率が高い地域では対応が後手にまわり、必要な人に十分な検査をできていない可能性が高い。少しでも感染疑いのある人に素早く検査する体制をつくる必要がある。従来の診療を続ける医療機関とは別に新型コロナの検査と搬送先の振り分けを同時に担う検査拠点を各地域に増やし、大量に迅速に検査できる体制をつくるのがよい。
 検査拠点では、医師の紹介状なしで受診できるのが望ましい。症状のある人や感染者と接触した人を優先し、余裕があれば感染リスクの高い場所で働く無症状者も対象にするなど地域ごとに優先順位をつけるとよい。人手と費用がかかるため、地域によっては医師会などが独自に進めるのは難しい場合もある。国が予算を確保して進めるのがよいだろう。
 今は緊急事態宣言を出さずに、状況を注視する段階だと考える。重症者や死者が日に日に増えて医療が逼迫するようであれば緊急事態宣言をだすべきだ。問題は国と自治体の足並みがそろっていないことだ。市民の混乱や不安につながっていると危惧している。秋や冬には肺炎は重症化しやすく、今よりも状況は深刻になるかもしれない。国への不信感がただよい、人々の行動変容を促せない状態では感染拡大に迅速に対応できなくなる。国と自治体は連携を強め足並みをそろえてほしい。