「再生エネルギー」カテゴリーアーカイブ

2020 世界この先 人口増 重心は新興国 三井物産社長 安永竜夫氏

――2030年に向けて世界経済の潮流はどう変わるとみていますか。
「世界の人口は現在の77億人から50年には90億人を超えるとの予測もある。同時に10〜20年先の地球の気候変動リスクがいっそう高まり、低炭素社会に向かう。30年に向けて、経済成長の重心は東南アジアから南西アジア、東アフリカと移るだろう。人口ボーナス期を迎えるアジアでは経済が成長し中間層が台頭していく。こうした層は高度な医療を求め、新たなビジネスが生まれる」
「人口増のなかで、エネルギーを安定供給する必要がある。再生可能エネルギーの拡大の必要性が指摘されるが、現実的な解は石炭に比べ環境負荷が少ない天然ガスとの組み合わせだ。(温暖化対策が進む)欧州でもガスの需要はまだある。日本はかつて『環境先進国』、今は高齢化の進展などで『課題先進国』といわれる。環境・エネルギーとヘルスケアでリーダーシップを発揮することが求められている」
――アジアの成長を取り込むため、日本に欠けているものは。
「ダイバーシティー(多様性)のある組織、社会に今すぐ変える必要がある。アジアのグローバル企業では世界の現実をみて、多国籍な人材が活躍する。日本をベースに物事を考え、日本人の視点で判断していては、グローバルスタンダードに追いつけない。ラグビー日本代表では外国出身の選手も活躍した」
「日本企業も理不尽に思われてもいいからダイバーシティーの数量目標を設ける必要があるかもしれない。当社では外国人の中堅社員約40人を選抜しリーダーになるための英才教育をしている」
――日本企業のあり方も変わりそうです。
「昔のように均質な労働力で質の高い、コスト競争力のあるモノを売って勝負する時代から変わってきた。商社は日本人社員が日本相手のビジネスをする『ウィズ・ジャパン』の面が強かったが、『ウィズ・アジア』の意識をもっと高める必要がある。建設中の東京・大手町の新本社で働く社員は少なくていい。アジアに飛び出すべきだ」
――ヘルスケアを収益の柱に据えています。
「18年に10カ国で医療サービスを展開するマレーシアの病院大手IHHに約2300億円を追加出資し、筆頭株主になった。11年に初めて出資してから利益は3倍に増えた。今年6月に中国で1千億円規模の専門ファンド設立を発表した。アジアでの医療のデータビジネスも検討する。10年後にヘルスケアは立派な柱になっているはずだ」
――低炭素化の潮流で事業見直しも必要では。
「当社の保有する発電容量の比率は再生エネが16%だ。30年にこれを30%まで高め、石炭火力を置き換えていく。資産の入れ替えは常に検討している。再生エネはインドで太陽光、台湾で洋上風力を手掛けている。液化天然ガス(LNG)は生産地を広げ、グローバルに取引をしていく」
(聞き手は花房良祐氏)
やすなが・たつお1983年(昭58年)東大工卒、三井物産入社。プラント畑が長く、32歳で世界銀行に出向した経験もある。機械・輸送システム本部長を経て15年に異例の32人抜きで、歴代最年少の社長に就任。愛媛県出身。59歳。
「気候非常事態宣言」自治体で広がる 温暖化対策をアピール
異常気象に伴う水害や干ばつ、水産資源の枯渇などに危機感を抱く自治体が相次いで「気候非常事態宣言」を表明している。異常気象は地球温暖化が背景にあるとされ、持続可能な地域社会を維持する観点から、温暖化対策の必要性をアピールする狙いだ。
気候非常事態宣言は2016年にオーストラリアの地方都市で始まり、世界各国の自治体や国に広がったとされる。日本国内では、長崎県壱岐市が19年9月に宣言した。50年までに、市内で消費するエネルギー全てを化石燃料から再生可能エネルギーに転換する目標を掲げた。
同市では17年と19年に「50年に1度」とされる記録的豪雨に見舞われた。壱岐市は玄界灘に囲まれている。市の担当者は「市内の漁獲量はこの10年で半減している。気候変動が地域経済にも直結することを実感している」と説明する。風力発電施設9基を運営する鳥取県北栄町や、福岡県大木町も12月に非常事態宣言を表明している。
長野県は都道府県レベルで初めて宣言した。県内では10月の台風19号の大雨で千曲川の堤防が決壊する被害が生じた。12月の宣言で「未来を担う世代に持続可能な社会を引き継ぐことができない」と50年に県の二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする目標を掲げた。
市町村議会では、神奈川県鎌倉市議会が同様の宣言を決議している。

洋上風力発電、日本も舞台に 東北電が青森で3000億円 欧州大手も3000億円投資

再生エネ分野で遅れていた日本でも投資が相次ぐ=共同
再生エネルギーの導入が遅れてきた日本で、洋上風力発電の大型プロジェクトが相次ぐ。東北電力は約3000億円で国内最大級の設備を青森県に建てる。北欧石油最大手のエクイノールも約3000億円を投じて日本の洋上風力に参入。洋上風力による発電容量は2030年度にも原発9基分に達する見通しだ。30年に22〜24%に再生エネの比率を高める目標を達成するには送配電網の運用の見直しが急務となる。
東北電力は風力発電を手掛けるグリーンパワーインベストメント(GPI、東京・港)が計画する案件に出資し、共同で青森県つがる市の沖合に出力48万キロワットの大型洋上風力の整備に乗り出す。総事業費は3000億円。運転を終了した女川原発1号機にほぼ相当する規模で、2029年ごろの稼働を目指す。
日本では再生エネの急拡大で送電網の空き容量不足が深刻だ。だが今回の案件はGPIが洋上風力から電気を送電線に送る権利を取得済みで、完成すればすぐに発電できる。東北電は東北や新潟を中心に送電線に接続が問題がない地域で、風力発電を軸に再生エネの発電能力を新たに200万キロワット増やす方針だ。
海外のエネルギー大手も日本市場に参入し始めている。ノルウェーのエクイノールは30年までに出力30万〜50万キロワットの洋上風力を建設する。投資額は2000億〜3000億円とみられる。電力会社や商社などにも出資を募り、北海道や青森などの風況が良い立地を調査している。
洋上風力最大手のオーステッド(デンマーク)も東京電力ホールディングスと共同で千葉県銚子沖で24年度にも出力37万キロワットの風力発電を計画する。日本風力発電協会によると、国内の洋上風力の発電容量は、30年度にも原子力発電所9基分以上に相当する960万キロワットに拡大する見通しだ。
世界ではエネルギー投資の主役が再生エネになりつつある。国際エネルギー機関(IEA)によると、18年の世界のエネルギー関連投資(1兆5880億ドル、約174兆円)のうち、再生エネ分野は3040億ドルと19%を占め、油田・ガス田に次ぐ規模になった。
世界的に企業経営でESG(環境・社会・企業統治)が重視されるようになり、石炭など化石燃料から投融資を引き揚げ再生エネ開発などを支援する投資家が相次ぐようになったことも大きい。
投資の高まりもあり、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、18年の世界の再生エネの発電容量は前年比8%増の約23億5600万キロワットで、発電量は電力全体の4分の1にまで成長した。
そのなかでも注目されているのが、欧州で先行してきた洋上風力だ。投資は18年の190億ドル程度から19〜30年は年平均で610億ドルに拡大するとみられる。
コストが下がったことも大きい。調査会社ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)によると、洋上風力の18年の発電量あたりのコストは発電機の大型化により1年で32%低減。大和証券の西川周作氏は「再生エネは稼げる事業に変わってきた」と話す。
日本では電力全体に占める再生エネの割合を現在の約16%から30年に22〜24%に高める目標を掲げている。ただ第25回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP25)では石炭火力発電の廃止など脱炭素に向けた具体策は明示せず、温暖化ガスの削減目標の上積みも見送った。欧州などからは対応の遅れを指摘されており、官民をあげての対策が急務となっている。
■送電網整備が課題
日本では発電所から電気を送る送電線の空き容量不足が深刻になっている。日本経済新聞社の調べでは洋上風力の有望立地が多い北海道や東北など東日本では、送電線の5〜8割で空き容量が足りないことがわかった。
送電線の権利は大型の火力や原子力発電所で権利が埋まっており、未稼働でも今後の再稼働を目指す原発の権利は維持している。洋上風力の計画が本格化するなか、空き容量不足を解決しなければ再生エネ活用が頓挫しかねない。
先行して洋上風力の導入が進む欧州では、海底送電線の新設や増強工事が相次ぐ。英国とベルギーを結ぶ国際海底線の商業利用が始まるなど、電力を融通しやすい環境を整えているため、今後も洋上風力を受け入れる余地が大きい。
一方、日本では海底送電線が整っておらず、空き容量不足のための増強工事も加えると欧州に比べて工事費が多額になる。出力が大きい大型洋上風力を新設する場合には「地域によっては1000億円規模の増強工事が必要」(風力事業者)との声もある。
多額の送電線工事で採算が悪化すれば計画の断念もありうる。東京電力ホールディングスは供給過剰なときは出力抑制に応じることを条件に、増強工事をせずに再生エネを受け入れる取り組みを始めたが、対応はまだわずか。再生エネを主力電源にするには洋上風力が欠かせず、送電線の運用の見直しが急務だ。

再生エネ、災害への備え急務 期待の非常電源に死角

台風15号の被害を受けた千葉県内の太陽光発電所は4時間にわたって燃え続けた(9月9日、千葉県市原市)
太陽光発電など再生可能エネルギーの防災面のもろさがクローズアップされている。今秋以降の相次ぐ大型台風では千葉県内の水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)火災など被害が発生、風力発電でも設備の課題が指摘される。日本は山間地や水上などで再生エネの開発が進んだ半面、コスト削減が優先され安全基準作りなどが後手に回ってきた面がある。
東日本各地に大雨の被害をもたらした台風19号。太陽光発電関連のメーカーや業界団体は台風上陸前に、水没した太陽光パネルや蓄電池を触らないよう、ホームページなどで告知した。停電時の電力として防災の観点からも注目される太陽光だが、災害の度に関係者は神経をとがらせてきた。
特に被害が大きかったのは9月上旬の台風15号だ。5万枚の太陽光パネルを設置する千葉県市原市の水上メガソーラーでは、強風にあおられたパネルが破損するなどして火花が散り、周辺部材から火災が発生したもようだ。運営する東京センチュリーと京セラは復旧作業と原因調査を進めるが、長期化の様相を呈している。業界関係者は「数億円のコストがかかる可能性もある」と話す。
9月末に発生した台風17号でも、佐賀県の水上メガソーラーでパネルが破損。豪雨や台風が相次いだ2018年にも、少なくとも全国40カ所以上の太陽光発電所が被災した。同年7月の西日本豪雨では神戸市で斜面設置の太陽光パネルが崩落し、新幹線が運休する二次災害も起きた。
風力発電も同様の課題に直面する。2018年の台風20号では、兵庫県淡路市の風力発電施設が根元から倒壊した。2016年には風力発電国内首位のユーラスエナジーホールディングス(東京・港)の鹿児島県の発電所が台風の直撃を受け、風車の軸部分や羽根が折れた。
再生エネの導入は自然条件や土地条件に依存する。日本の太陽光発電の累積導入量は2018年、中国、米国に次いで世界3位となった。平地が少ない日本では山間地の斜面に太陽光パネルを設置するなど、限られた国土を最大限に活用してきた。
導入促進の裏で防災対策が後手に回った面は否めない。産業技術総合研究所・太陽光発電研究センターの大関崇チーム長は「固定価格買い取り制度(FIT)の導入で、太陽光パネルの施工などの知見の無い新規参入者が急増し、壊れやすいものが増えた」と語る。
官民は手をこまぬいていたわけではない。経済産業省は2018年に太陽光パネルの風に対する耐久性基準を引き上げ、風の強さなどの条件に応じ従来比2倍以上の風圧に耐える設計を求めるよう変更。風力でも2017年に日本工業規格(JIS)を改正し、国際規格を上回る平均風速57メートルという日本独自の耐風基準を設けた。
ユーラスは大型台風が接近する恐れがある場合、各地の発電所への影響を試算し、発電機を前もって停止する仕組みを築いた。台風15号でも静岡県の発電所を止めた。
課題は防災コストをどこまで上積みするかだ。太陽光関連企業の幹部は「パネル設置の強度を高めるための架台の改良や設備増強が今後は必要になる」という。業界ではパネルの価格競争が激しく発電コストが下がる一方、発電事業者の収益確保は厳しくなっている。風力も「欧州に比べ設備にかかるコストが数倍高い」(業界関係者)。安全基準に対応するだけ収益性が下がる。
政府は2018年に定めたエネルギー基本計画で、再生エネが電力に占める比率を現在の約15%(水力含む)から2030年に22〜24%まで高める方針だ。
台風15号では送電網が被害を受け大規模停電を招いた。再生エネは安定し発電できれば、有効な自立型電源になる。近年は蓄電池とセットでの発電も増える。大規模インフラの復旧に頼らない地産地消の非常電源として定着する可能性はある。
産総研の大関氏は「基準や規制の強化一辺倒ではコストが上がるばかりだ。行政と民間が連携し、各地の太陽光パネルの施工をチェックする制度を設けるなどの対策をとるべきだ」と話している。(河野祥平、坂本佳乃子)