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「転職への関心高まった」6割に コロナ禍で急上昇 ビジネスパーソン700人調査(上)

リモートワークの導入は転職を検討するきっかけにもなった(写真はイメージ) =PIXTA
転職への関心が急速に高まっている。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だ。就職・転職支援の日経HR(東京・千代田)が実施したアンケート調査では、約6割が「転職への関心が高まった」と回答。コロナ禍に伴う需要減などで、現在の勤め先や業界の成長性を不安視する層に加え、在宅勤務をはじめとする新しい働き方を実践しやすい職場を志向する人が多かった。ただ、今後の転職活動については約8割が「非常に厳しくなる」と悲観的な見方を示した。
このアンケート調査は日経HRが「日経キャリアNET」登録会員を対象に、2020年7月30日から8月7日にかけて実施した。有効回答数は735人。
新型コロナウイルスの感染拡大後、転職を意識する人が増えた
非常に高まった 35%
少し高まった 22%
変わらない 36%
少し低くなった 5%
非常に低くなった 1%
その他 1%
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コロナ禍を経験して転職への関心について変化があったかを聞いたところ、「非常に高まった」が35%、「少し高まった」が22%で、合わせておよそ6割となった。転職意向の高まりを年代別で見ると、20代(61%)と40代(62%)が、30代と50代(ともに54%)を上回っている。「非常に低くなった」(1%)、「少し低くなった」(5%)は合計しても1割に満たず、今回の調査からは、コロナが総じてビジネスパーソンの転職意欲を引き出す方向に作用したといえそうだ。
「転職意向が高まった」理由としては、現在の会社や業界の将来への不安や、在宅勤務ができなかったり働き方改革の速度が遅かったりする会社に対する不満が多く示された。「リモートワークできる会社に転職したい」や「多様な働き方ができる職場に魅力を感じる」など、柔軟な働き方を希望する意見が目立った。自粛期間をへて、働き方やキャリアについて見つめ直す時間が増えたことによって、在宅勤務や副業が可能な新しいキャリアを模索するようになった人も多いようだ。
 
 
 
自由回答から透けて見える、勤め先への「がっかり感」
アンケートに含まれていた自由回答を分析すると、転職する気持ちが強まった人たちが勤め先に不満を募らせている様子が読み取れる。いったんはリモートワークを採用したのに、しばらくたって出社が基本の旧スタイルに戻したケースも少なくないようだ。
【自由回答】
■非常に高まった
・業界が苦しい(51歳男性、ホテル)
・自社の、働き方を変えようとする意識の低さに嫌気がさした(36歳男性、銀行)
・常時リモートワークできるところで働きたい(28歳女性、メーカー)
・コロナですら変われない会社を見て、見切りをつける最後の一押しになった(34歳女性、生保・損保)
・自宅で自分を見つめ直す時間があり、転職のリサーチに使えた(54歳女性、IT)
■少し高まった
・在宅勤務を推奨しない会社に危機を感じる(45歳男性、IT)
・DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革を推進できる絶好のチャンスだったのに、意識も仕事のやり方もコロナ前に戻ってしまった会社の姿勢に疑問を持った(58歳男性、紙パルプ)
・緊急宣言の解除後、在宅勤務できる雰囲気になっていない(30歳女性、化学)
■変わらない
・コロナの影響が少なく給料など変わらない(28歳女性、建設関連)
・コロナに関係なく、転職意思が固い(42歳女性、コンサルティング)
転職意向が「非常に高まった」「少し高まった」と回答した人に、転職に向けて具体的に始めたことがあるかを尋ねたところ(複数回答)、「転職サイトに登録した」が64%、「履歴書・職務経歴書を作成した」が42%、「人材紹介会社に登録した」が35%となったほか、「業界・企業に関する情報収集を始めた」(22%)、「自己分析・キャリアの棚卸しをした」(20%)、「仕事に必要な知識・スキルアップの学び直しを始めた」(16%)が続いた。
転職への関心が高まる半面、転職市場の先行きについては厳しい見方が大勢を占める。「今後の転職活動がどのようになるとみているか」を聞いたところ、「非常に厳しくなる」が44%、「やや厳しくなる」が33%と、8割近くが先行きの厳しさを予想した。「非常に楽になる」と回答した人はおらず、「やや楽になる」も1%にとどまった。
 
 
 
リモートワーク・在宅勤務を転職先選びで重視
転職先を選ぶ基準については、「給与・待遇」(80%)に続き、「働きやすい制度(リモートワーク・在宅勤務など)」(44%)との回答が多かった。「休日・休暇」(38%)や「福利厚生制度」(21%)といったワークライフバランスに関連する項目が上位に並んだほか、「副業が可能」を挙げた人が5%に上り、リモートワーク希望者と合わせ、新しい働き方を志向するビジネスパーソンが増えている兆しとみてとれる。
前回(2020年2月)の調査では、「働きやすい制度(リモートワーク、育休など)」は13%で8番目だった。3つまで選択可能(今回5つまで)にしていたほか、「働きやすい制度」の選択肢にリモートワークや育休などをまとめていたため一概に比較することはできないものの、リモートワークを重視する層が大幅に広がっているとみられる。
「新しい働き方」のなかで、今後挑戦してみたいことを聞いたところ(複数回答)、「リモートワーク・在宅勤務」が52%でトップ。そのほか、「副業(所属組織で働きながらの形態)」39%、「副業(所属組織と異なる組織で働く形態)」35%と、副業への関心の高さがうかがえるほか、「週休3日など休日が多い働き方」(34%)、「フリーランス・個人事業主」(19%)、「地方都市への移住」(16%)、「起業」(16%)など様々なタイプの「新しい働き方」が注目を集めているようだ。
年代別の比較で、「リモートワーク・在宅勤務」は20代(61%)、30代(60%)、40代(57%)と差はなかったが、50代は43%と他の年代に比べて低かった。副業に関しては、所属に属すか属さないかで年代に差が出た。「所属組織で働きながらの副業」は20代(52%)が高く、30代、40代、50代は、それぞれ41%、38%、37%。「他社で働く副業」については、30代(37%)、40代(33%)、50代(37%)が高く、20代は21%と低かった。「地方都市への移住」は20代と30代が21%、40代と50代が15%と差が出た。
転職に向けてすでに活動していた人を対象に、コロナによって自身の活動に変化があったか、という質問への回答では「以前と変わらないペースで続けている」が52%で最多だったものの、「一時停止したがその後再開した」(12%)、「転職すべきか迷うようになった」(11%)、「活動を停止した」(7%)など何らかの影響を受けた層も3割に達した。
転職活動における「ニューノーマル」ともいえる電話やウェブによる「リモート面接」については約4割が「受けたことがある」と回答。「リモート面接で採用担当者に言いたいことや気持ちを伝えることができたか」という質問には6割程度が「そう思う」とした半面、「対話がぎこちなくなる」「相手の表情が分からずコミュニケーションがとりづらい」など実際に会わずに自分の言いたいことを伝える難しさを感じている人もいた。
(日経転職版編集部 宮下奈緒子氏)

「違反」残業なお300万人 人手不足、管理職にしわ寄せ

部下の仕事量が減ったしわ寄せで管理職の残業が高止まりしている
大企業の残業に罰則付き上限が導入された2019年4月以降も月80時間超の残業をしている人が推計で約300万人に上ることが総務省の調査で分かった。労務管理の徹底でサービス残業があぶり出され、部下の仕事量が減ったしわ寄せで管理職の残業が高止まりしている。今後は画一的に残業を減らすのではなく、生産性の向上で収益を高め、働き手にも還元していく改革が重要になりそうだ。
働き方改革関連法によって大企業は昨年4月から従業員の時間外労働を年720時間以内にすることが義務づけられた。月100時間を超えてはならず、2〜6カ月平均で月80時間以内にしなければならない。建設業など一部業種を除き、違反があれば30万円以下の罰金か6カ月以下の懲役を科せられる。同様の規制は今年4月から中小企業にも適用される。
だが統計上は多くの企業がこのルールに「違反」した状態にある。
労働基準法が定めた法定労働時間は1日8時間、週40時間。1カ月単位で計算すると、80時間の残業を含めて、およそ240時間程度が働くことができる上限になる。ところが総務省の労働力調査によると、19年4〜11月に月241時間以上働いた雇用者(役員を除く)は月平均で約295万人もいた。
18年度平均の319万人よりは減ったものの、それでも雇用者全体の5%を占める。このうち4割は従業員100人以上の大企業で働く人だ。「過労死ライン」と呼ばれる月100時間超の残業をした人も月平均で170万人に達していた。
働き方改革の動きが広がる中で統計上の残業が減らない理由の一つは、これまで隠れていた残業が表に出てきたためだ。
ある大手居酒屋チェーン幹部は「労働時間を正確に把握しようとしたら、正社員の残業時間が跳ね上がった」とため息をつく。店舗で働く社員はアルバイトの欠勤を埋めるため急にシフトに入ることも多い。こんな正社員の「サービス残業」があぶり出されている。
もう一つは部下の残業時間を抑えたしわ寄せも受ける形で、管理職の労働時間が高止まりしているためだ。リクルートスタッフィングが昨年9月にまとめた調査では、従業員300人以上の企業の管理職412人の12.8%が残業が「増えた」と答えた。働き方改革に詳しいパーソル総合研究所の小林祐児主任研究員は「労働時間に上限を設けると、部下に残業を頼めない中間管理職に業務が集中する」と話す。
残業減で手取り収入が減ることを避けようと、労働時間管理の緩い企業に転職する動きもありそうだ。ヤマト運輸は17年からドライバーの労働時間の削減に取り組み、18年度の1人あたり残業時間は16年度比で3割減った。一方、西日本で働く50代のドライバーは「手取りが減ったことが原因で他社に移った人がいる」と打ち明ける。
残業規制が本格適用される今後は、生産性の向上を伴う改革を実現することが課題になる。
コンサルティングの大手、アクセンチュアは15年から午後6時以降の会議を原則禁止し、同時に人工知能(AI)や定型作業を自動化するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)などを活用し業務を効率化した。15年ごろは深夜までの激務が当たり前だったが、今は1日の残業が平均1時間に減った。
生産性の向上を伴わずに残業時間だけを減らすと、働き手の手取り収入が減り、それが消費を下押しする構図に日本経済がはまりかねない。労働時間を厳しく管理するだけでなく、収益を高める生産性向上と一体的に進め、その果実を働き手にも還元する好循環をつくることが課題になる。
(奥田宏二氏、井上孝之氏)

ライオン、人事部が副業紹介 本業での貢献を期待

ライオンは2020年春をめどに、人事部が社員に副業を紹介する制度を始める。人材紹介会社と提携し、幅広い仕事を取りそろえる。副業は社員が自ら探すのが一般的だが、関心があっても自分で見つけるのが難しいケースが多い。紹介までするのは珍しい。所属する企業の枠を超えて事業を創造するオープンイノベーションを促すきっかけにもなる。
ライオンは、デザイナーが社外のロゴ作成をしたり、人事部の経験者が地方の旅館で人事システムの導入を支援するために月に数回働いたりするケースを想定している。出向中など一部を除く対象社員の2%に当たる50人ほどの利用を見込む。
日用品メーカーなど競合他社での副業や公序良俗に反する仕事などは禁止する。同時に(1)本業の残業時間と副業の労働時間で合計で月80時間を超えない(2)翌日の勤務まで10時間のインターバルを設ける(3)週に1日は休日を取得する、などの条件も設ける。
ライオンは社員が副業で得た知識や経験を本業に生かすことを期待する。掬川正純社長は「社内のことしか知らなければ、アイデアは浮かびにくい」と狙いを話す。
パーソル総合研究所(東京・千代田)によると「グループ会社内で副業を紹介し合う例はあるが、社外の副業を紹介する制度は珍しい」という。
副業は人手不足のなかで個人の能力を社外で生かす効果も期待される。国内の就業者に占める副業率は4%にとどまるが、政府が18年1月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を公開するなど機運は高まる。総務省の「就業構造基本調査」によると、17年時点の副業希望者は就業者全体の6.4%の424万人で、5年前の調査から57万人増えた。
ライオンはこの制度に先立ち、20年1月から副業を申告制に変更した。これまでも副業は可能だったが、上司の許可が必要で研究職が大学の非常勤講師を務めるといったケースが大半を占める。
残業時間の管理などは個人が行う。副業中の労務管理は副業先が担うため、ライオンは関与しない。本業の生産性低下など悪影響が出た場合は上司が面談をするなどの対応をとる。
ライオンの新たな制度は、これまで従業員に任せていた副業制度から踏み出し、企業側が積極的に動く。こうした取り組みが広がれば普及が早まる可能性がある。
政府のガイドラインもあり、副業を認める企業は徐々に増えている。ただ労働時間の管理や法定労働時間を超えた場合の割増賃金をどちらが支払うかなど解決すべき課題もある。
さらば我が社ファースト しがみつくのはリスク
本社コメンテーター 村山恵一

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「70歳定年法」 60代後半の就労拡大へ企業に努力義務

企業に70歳までの就業機会確保への努力義務を課す「高年齢者雇用安定法」の改正案が通常国会に提出される。60代の働き手を増やし、少子高齢化で増え続ける社会保障費の支え手を広げる狙いがある。定年延長だけでなく、再就職の実現や起業支援などのメニューも加わるのが特徴だ。
改正案は通称「70歳定年法」。2019年6月の閣議で決定され、19年末に始まった政府の全世代型社会保障検討会議の中間報告で明記された。国会で成立すれば、早ければ21年4月から実施される見通しだ。
60代前半については既に、企業は「定年廃止」「定年延長」「継続雇用制度導入」のうちどれかで処遇する義務がある。60歳の定年を63歳に延ばしたり、従業員が希望すれば同じ企業かグループ企業で嘱託や契約社員などで継続雇用したりする必要がある。実行しなければ行政指導を経て最終的には社名が公表される。
厚生労働省の調べによると、19年6月現在で定年廃止に踏み切った企業は全体の2.7%と少ないが、継続雇用制度を導入した企業は80%弱に達する。
改正によって60代後半の従業員の就労機会を広げるため、従来の3つに加え4つの項目を追加する。グループ外企業への再就職を実現させたりフリーランス、起業を選んだ人に業務委託したり、企業が関係するNPO法人などで社会貢献活動に参加する人に業務委託したりする内容だ。
企業は1つ以上のメニューを導入する必要があるが、60代前半と異なり、当面は実施しなくても社名公表はしない「努力義務」だ。政府は将来、60代前半と同じ「実施義務」にすることも検討している。
60代の就労を促進するのは従来、公的年金の受給が始まる65歳までの収入確保という「つなぎ」の色彩が濃かった。しかし、その意味合いは変わりつつある。
元気な60代が働くことにで医療、年金、介護など社会保障の支え手側に回れば、膨らみ続ける社会保障費にプラスに働く。年金受給開始時期を75歳まで繰り下げて受給額を増やせる制度改革も実施される予定で、60代後半の就労促進は国全体の課題となっている。
ただ企業側には戸惑いの声も少なくない。ある中小企業経営者は「大企業と違い、中小企業には従業員の再就職を頼める取引先はない」と話す。従業員の再就職は人材派遣会社に委託する企業も多い。改正によって再就職の支援だけでなく実現まで責任を持つ必要があるが、企業の体制が整うか不安が残る。
フリーランスや起業を選ぶ従業員に業務委託する場合も「どれくらいの期間委託すれば義務を果たすことになるか不透明」(社会保険労務士の井上大輔氏)との声もある。政府は国会審議を通じてこうした疑問に真摯に答える必要がある。
(後藤直久氏)

「会社員は消え、労働法もなくなる」大内伸哉氏

デジタル化の進展で「ギグワーカー」など雇用によらない働き方が増え、資本家対労働者という従来の構図が大きく変わりつつある。雇用という形態は今後どうなるのか。ロボットなどに労働を代替される「働かない世界」はやってくるのか。労働法に詳しい神戸大学の大内伸哉教授に聞いた。
大内伸哉氏(おおうち・しんや)
東大法卒、同大博士(法学)。専攻は労働法。現在は技術革新と労働政策が中心的な研究テーマ。人工知能(AI)活用やデジタル化などがもたらす雇用への影響、テレワークやフリーランスなど新たな働き方の広がりに伴う政策課題を研究している。
「企業の人材投資に限界、『自学』が大事」
――雇用によらない働き方をする人が増えています。
「雇用とは時間を企業にささげるような働き方だ。『時間主権』と生活保障のはざまで、長く後者を選択してきた。特に後者を選んできたのが日本の昭和時代だ。雇用労働ではなく、個人事業主のように自営的労働を選ぶ人が増えている。現在は全体の10分の1ほどだが、自営的労働はどこの国でも半分くらいになるのではないか」
「長期雇用にどっぷりの人は価値の転換が必要だ。終身雇用の見直しなどが話題に上るのも、企業が雇用を守るのに限界があるということだろう。企業が『使える』人材を自前主義で時間をかけて作ったとしても、10年後に必要なものは分からない世界だ。そうなると企業も人材投資はしにくくなる」
――背景にあるのは何でしょうか。
「これまで資本主義における労働は、ほぼ株式会社での労働と同義だったが、第4次産業革命が変化をもたらしている。起業がしやすくなって経営者と労働者が融合してきている。会社員は消え、労働法もなくなるかもしれない」
「技術革新によって、雇用労働は減る。定型的な労働はなくなり、知的創造性が求められる労働になってくる。そうなると人間のやる仕事は機械を使う側の仕事、機械ができないような仕事、機械にさせることできるが人間のほうが安くできる仕事の3つになるだろう。そのうち後者の2つは徐々に減っていく」
「知的創造性が重要になるが、これは指揮命令下でやる雇用との相性が悪い。ICT(情報通信技術)を基盤にして、企業に支配されて働く労働から、自己決定のための労働になる。教育が大きな課題だ。職業訓練・教育の多くは企業が担ってきた。自営的な労働が増えれば、それがなくなるわけだから『自学』が大事になる」
「苦役からの解放と、賃金もらえない二面性」
――身につけた技術・スキルが陳腐化するスピードも速いです。
「教育には3つある。陳腐化が懸念されるのは、職業先端教育だ。自分で契約書を書けたり、情報リテラシー持ったりという職業基礎教育や、教養教育が重要になるだろう。今はネットでも学べるようになっている。大きなチャレンジだが、意識改革が必要だ」
――今よりずっと少ない労働時間になったり、「労働なき世界」がやってきたりするでしょうか。
「そうなるのは間違いないだろうが、いつそうなるかは分からない。効率化やデジタル化が進んでいない企業もまだ多い。ただ、そうした企業はいずれ市場から退出させられる」
「古代ギリシャ時代の『奴隷』の代わりとして、ロボットやAIなど機械に労働を任せ、機械の所有者の得た価値を共同体の構成員に再分配する、ベーシックインカムのような形になるかもしれない。労働という『苦役』からは解放される一方、賃金をもらえなくなるという二面性に直面する。そこは政府の出番で、再分配の手法を考えないといけない」
■記者はこう見る「デジタル化、会社の形も変える」
 井上孝之
 インターネットで単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」の増加、終身雇用などの日本型雇用システムの転換、働き方改革――。雇用や労働は日本だけでなく、世界的にみても数十年から数百年単位の大きな転換点にある。
 デジタル化の急速な進展に加え、将来の予測不能性が高まったことで、ナレッジワーカー(知識労働者)の重要性が増している。その一方で、定型的な単純労働は機械に代替され、なくなっていく流れにある。
 産業構造の変化によって仕事が失われても、これまでは代わりとなる需要を生み出し、雇用が多く創出されてきた。ただ、大内氏は「今回の第4次産業革命は省力化や無人化を進めるものなので、新たな雇用を生む力は弱いかもしれない」と話す。
 「知的創造性が重要になるが、指揮命令下でやる雇用との相性が悪い」と大内氏が指摘するように、ヒエラルキー型の上意下達の組織をやめて、現場の社員一人ひとりが考えて動くような、機動性がある「自律型」に組織変革をする企業も増えてきている。今後は労働だけでなく、会社の形も大きく変わっていくだろう。

少子化加速、自然減50万人超に 働き方改革カギ

出生数の急減で、死亡数が出生数を上回る「自然減」が51万2千人に達した。戦後初めて50万人の大台を超え、鳥取県(約55万5千人)の人口に匹敵する規模となった。要因としては出産適齢期の女性人口の減少に加え、20歳代での結婚や出産が減っている点が挙げられる。少子化克服には政府の対策だけでなく、新卒偏重の是正や働き方改革をさらに進めていく必要がある。
「仕事の責任が重く、出産しても時短を選ぶことが難しい」。都内のIT(情報技術)企業に勤める女性(27歳)は打ち明ける。女性は仕事が終わると、経営学修士(MBA)の取得に向け、足早に大学院に向かう。社内では性別に関係なく同じ成果が求められる。「出産後もいまのポジションが確保されるという確証がないと子どもを産めない」と話す。
出産の先行指標ともいえる婚姻件数は2018年が58万6481件で前年比3.4%減だ。19年の出生数(5.9%減)ほどには減っていない。総務省の労働力調査によると、25〜34歳の女性の就業率は80%を超えた。若い世帯ほど男女共働きが多い。
世界を見渡せば、女性の就業率が上昇すると少子化になるというわけではない。スウェーデンなどでは女性の就業率が高く、出生率も17年で1.78と高い。男女とも長時間労働が少ないなど働き方の違いが大きな背景とみられる。
日本国内でも一部の企業が長時間労働の見直しに取り組む。IT大手のSCSKは13年度から、月間平均残業時間20時間未満と有休取得率100%を目標に掲げてきた。18年度は月間平均残業17時間41分、有休取得率94.4%と働きやすい環境が整ってきた。
働き方改革を進めた結果、第2子以降を出産する女性社員が増えた。11年度は子どもを産んだ女性社員67人中、第2子以降の出産が18人だったが、17年度は83人中43人にのぼるという。
出生率が高いフランス(17年で1.90)などと比べると、日本は20歳代の出生率が特に低くなっており、少子化につながっている。
多くの人が高校や大学などを卒業してすぐに就職して、そのまま働き続ける慣行も少子化につながっている。就職から一定期間を経てから結婚や出産するのが一般的で、平均初婚年齢は男性が31歳、女性は29歳(18年時点)で、20年前に比べそれぞれ3歳程度上がっている。第1子出産の母親の平均年齢は30.7歳だ。
出産年齢が上がると、子どもを授かりにくくなる。「20歳代の頃は子どものことなんてとても考えられなかった。今思えば、もっと早くから話し合っておけばよかった」。さいたま市に住む34歳の女性会社員は振り返る。32歳の頃に夫と不妊治療を始め、今年8月に待望の第1子を出産した。
厚生労働省の調査では夫の育児する時間が長いほど第2子以降が生まれる割合が高くなる。6%と低い男性の育休取得率を向上する施策が官民とも求められそうだ。
03年に少子化社会対策基本法が成立し、政府は仕事と子育ての両立や待機児童対策、保育料無償化や働き方改革、男性の育児参加などを推進してきた。19年10月からは幼児教育や保育の無償化も始めた。子育て世帯への支援は強化されてきたが、政府の少子化対策は出生後が中心だ。
合計特殊出生率は05年の1.26を底に一度は持ち直したものの、15年の1.45の後は減少が続き、18年は1.42だった。結婚して子どもを産みたいと考える人の希望がかなった場合の出生率である1.8とは大きな開きがある。
海外では高校卒業後、すぐに大学に進まない人も少なくない。その間に結婚や出産、育児を選択する例も多い。働き方や教育システムなど社会保障政策にとどまらない見直しが官民ともに求められている。

中高年社員、戦えますか やる気引き出し生産性アップ

2025年には労働力人口の約6割が45歳以上になる。バブル期の大量採用などで中高年社員の層は厚く、50歳を過ぎて管理職になれない人材がこれまで以上に出てきている。日清食品は再チャレンジの機会を設け、太陽生命保険は役職定年を廃止するなど企業は社員にやる気を持たせる手を尽くす。中高年は企業が必要とする人材への再生が求められる。生産性向上に向けた企業と中高年社員双方の挑戦をデジタル化が加速する。
日本では役職定年制度を設けている企業が多く、経団連の調査では約半数が導入している。50歳代に役職を解かれると給与が大幅に下がり、仕事に対するモチベーションが低下しやすい。定年後研究所(東京・港)とニッセイ基礎研究所による共同研究の試算では、50歳代が役職定年でやる気を失うために生じる経済的な損失は、年に約1兆5000億円にのぼる。中高年の活性化は日本経済の浮沈を左右する課題だ。
54歳で営業所長
「会社にまた認めてもらえた。期待に応えたい」。日清食品に勤める54歳(当時)のAさんは同社が今年導入した「リバイバル」制度を活用し、営業所の所長に登用された。年収は200万円アップし、1000万円を超えた。
同社では50歳になると管理職への昇格停止と公募ポストへの挑戦権を失う。若手のチャンスは広がるが「管理職になれなかった社員は給料もモチベーションも低下する」(人事部)。新制度では営業部門の50歳以上の社員を対象にキャリアの棚卸しをし、自らの能力と目標をはっきりさせる講義や役員面接を用意したところ、5人中2人が新たな職場を得た。今後は対象部門を広げていく。
オリックスでは昨年、45歳以上の部長層以下を対象に別部門への異動に挑戦できるフリーエージェント(FA)制度を始めた。33人が手を挙げ、11人がヘルスケア事業部の中国向け事業などで活躍している。
労働力の6割に
太陽生命保険は定年を60歳から65歳に延長したのを機に、57歳だった役職定年も廃した。やる気や能力のある社員を年齢では区切らないという考えも出てきている。
社内の中高年は急増している。終身雇用の宿命だが、バブル期の大量採用によっていびつさが増している。みずほ総合研究所は、労働力人口における45歳以上の割合は15年にすでに5割を超え、25年には6割に迫ると試算している。
新卒で一括採用し、社内で人材を育成する終身雇用や年功序列という日本型の雇用制度の弊害が大量の「ヒラ中高年」を生んでいる。一方で若手の採用は厳しさを増している。リクルートキャリアによると、20年卒の採用では「採用できる人数が減る」企業は「増える」を上回り、20%に上った。急進するデジタル化のなか、企業が渇望するのはITや人工知能(AI)人材だ。
若手はとれず、中高年は社内に滞留する。終身雇用の弊害を逆手に取り、中高年をIT人材に活用するくらいの挑戦が不可欠だ。
経済協力開発機構(OECD)は、大学入学者のうち25歳以上の比率が日本は2%とOECD平均の約2割を大きく下回っていると指摘した。一方、日本総合研究所は就業中の65歳以上のシニア社員は学び直しで、年間約80万円の収入増につながると試算する。中高年への教育投資は生産性を向上させる一つの解といえる。
東北大学大学院は三菱ふそうトラック・バスと組み、企業が求める人材に必要な教育プログラムの開発を目指す。終身雇用に甘え、自らの能力水準を把握していない中高年は多い。
日本総研の安井洋輔主任研究員は、学び直しで培ってきた専門スキルに新たな能力を加えれば「社内の再配置や他社への転職など人材の流動性が高まりジョブ型に近い雇用が可能になる」と指摘する。
キャリア研修事業のライフワークス(東京・港)の梅本郁子社長は「ボリュームの多い中高年層の活躍は企業の生き残りや成長につながる」と話す。中高年になっても常に学び直し、新たなスキルを取り込む。企業も「今更無理だ」と決めつけず、中高年を支援する――。生産性を高めるためのそれぞれの挑戦は始まったばかりだ。
(京塚環氏、藤本秀文氏)

人手不足契機に躍進 適材適所、IT活用で実現

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人手不足の深刻化や働き方改革を背景に、人材関連市場が急成長している。リクルートホールディングスなど海外市場に打って出る大手だけでなく、国内市場を地盤に着実に成長する中堅企業は多い。ITを駆使したきめ細かいサービス提供が強みだ。人材関連サービスを展開する売上高100億円以下の中堅上場企業「NEXT1000」を紹介する。
「あなたの『冷静さ・安定力』は49点。リスクを検討せずにスピードを重視する傾向がある」――。技術者の派遣を手掛けるエスユーエスは派遣する社員の能力や適性を点数で「見える化」するのが特徴だ。社員向けにアンケートを実施。約200問にも及ぶ質問の回答をもとに、独自開発したシステムが点数をはじき出す。
評価するのは本人の指導力や周囲を説得する力、業務を遂行する力など9つの基礎能力と、関連する36の項目だ。システムがそれぞれ100点満点で自動的に点数化する。ストレス耐性や自分を良く見せようとする傾向もつかめる。各自の課題を改善するための研修も用意する。
ITや電機業界向けの技術者派遣分野では、専門的な技術を持っているのはもはや当然。だが交渉能力や責任感など技術以外の強みを点数化してアピールできれば、他社との違いを打ち出せる。斎藤公男社長は「ゲーム会社からは『アイデア力が際立った人材がほしい』といった要望がある。こうした顧客の要望に細かく応えられる」と話す。
資質などを数値化する仕組みは慶応義塾大学や中部大学と共同開発した。自社で活用するだけでなく、外部にも販売。人事異動や人事評価に活用する企業や地方自治体など約3000件の導入実績を持つ。
人材サービスに最新技術を駆使する「HRテック」が急速に広がっている。新しい分野だけに中堅企業の参入余地は大きい。顧客企業のニーズを巧みにつかみ、成長を続けているのがアトラエだ。
顧客企業の従業員の満足度などを点数化し、離職防止や効果的な人事異動につなげている。「あなたの能力は会社に十分評価されているか」「自社を友人に勧められるか」などを質問。スマートフォンで1回当たり3分程度で回答できる。料金は1人あたり月額300円で、8月時点の採用企業数は前年同月に比べて2.5倍の1000社になった。AGCやLINEなど大手企業も利用する。
大企業などで人材教育を外部に委託する動きが広がるなか、きめ細かな企業向け研修を展開して事業を拡大する企業もある。
インソースは約2500もの講座を開発。ビジネスマナーや電話対応といった一般的なものから「部下との面談力向上」や「保育士を対象にしたクレーム対応」「LGBT」など幅広いメニューをそろえる。人工知能(AI)を活用して研修の受講者数を予測する。舟橋孝之社長は「受講生1人を対象にしたものから1万人向けまで対応できる。業績が研修の流行に左右されにくい」という。16期増収を続けている。
アルーは企業の要望に合わせて内容を組み替える「セミオーダー型」の研修を得意とする。たとえば一般的な新入社員向けのビジネス研修を実施。その後、習得内容を確認するため職場に戻った新入社員の日報や週報をチェックして助言するサービスを組み合わせたりする。
中堅企業のなかには特定の分野の人材に強みを持つ会社も多い。
スマートフォン向けゲームや家庭用ゲーム開発を手掛けるエクストリームはプログラミングなどの技術を持つデジタルクリエーターを抱え、他社にも派遣する。高度技術を維持するための社内研修を実施するほか、ベトナムの人材活用にも取り組む。ゲーム業界は市場規模が拡大する一方、人手不足が深刻化している。「多様な教育や研修プログラムをアピールして優秀な人材を集めたい」(同社)としている。
SERIOホールディングスのように既婚女性を主な対象として派遣などのサービスを展開する企業もある。
矢野経済研究所(東京・中野)によると、人材紹介と派遣、再就職支援の市場規模は2018年度推定で約7兆4000億円と前の年度から約1割増えた。人手不足と働き方改革で今後も人材業界の市場規模は拡大するとみられている。中堅企業が躍進するチャンスは大きそうだ。

山や銭湯 癒やしの仕事場 シェア施設、趣味も楽しむ 気分転換、集中力アップ

仕事場は標高1000メートル――。山頂など自然の中や都心の銭湯など、癒やし空間で仕事をする人が増えている。登山などの趣味を満喫しつつ、仕事の集中力が高まり、新たな発想も生まれやすいと人気だ。普段知り合えない人との出会いもあって、仕事の幅も広がる。仕事と休暇の境目が薄れつつある。
ゴンドラに揺られること8分、北アルプスの絶景が一望できるデッキの近くに山頂シェアオフィスがある。標高1289メートル。ブナ林の中の机で仕事をするのは、新潟県から訪れた40代女性。小学校の先生だ。スマホで調べものをしながら授業の準備に励む。「自然の中は気持ちがいい。自宅や近所のカフェに比べ仕事がはかどる」
8月中旬、東京などは35度以上の猛暑日だが、森の中は25度とひんやり涼しい。「仕事の後は趣味で始めたマウンテンバイクで山を下る」と笑顔を見せる。
女性が利用するのは、白馬観光開発(長野県白馬村)が7月に開設した白馬岩岳マウンテンリゾートの山頂シェアオフィス「森のテラス」。ウッドデッキのアウトドア・ワーキングスペースだ。Wi-Fi環境などを整えた。近くには人気ベーカリーもありパンやコーヒーが楽しめる。
「登山を楽しむ人も多い。自然の中で仕事をする方が圧倒的に生産性があがる。日常の職場と異なる場所なので、チームで来ても新たな発想が生まれやすい」と、和田寛社長は話す。
ゴンドラ料金は往復1800円。山頂オフィスは無料で利用できるが、開設は期間限定。今年は11月10日までの予定だ。
都心にも癒やし空間併設のコワーキングスペースが登場している。極楽湯が運営する「RAKU SPA 1010 神田」だ。JR御茶ノ水駅から徒歩5分。平日午後にもかかわらず、社会人や学生らが吸い込まれていく。RAKU SPAコース(1460円)食コーナーのほか、ハンモックもあるくつろぎスペースを利用でき、漫画・雑誌5000冊以上が読み放題だ。
4階のコワーキングスペースで、館内着でリラックスしながら取引先と打ち合わせをするのは、飲食店などを経営する堀越元太さん(37)。「仕事に行き詰まったらひとっ風呂浴びれば集中できる。今後はここを仕事場にしたい」と話す。
海岸近くの場所もある。江ノ島電鉄稲村ケ崎駅徒歩5分の「Think Space鎌倉」だ。海と山に囲まれた自然豊かな場所にある陶芸家の作業場をリノベーションした。精神を穏やかに整える環境を重視。土間や囲炉裏もある和モダン空間で、建設的な対話を生みやすくした。
「個人のほか10人程度での企業利用が増えている」(Think Spaceの岩浜サラ代表)。お試し利用は1日(午前10時〜午後7時)3000円(税別)。
自然の中で仕事をする環境を求めて、2拠点生活を始めた人もいる。東京と長野を月4〜5回往復するのは、ウェブ・映像製作会社を経営する栗原大介さん(44)。趣味の登山やキャンプを楽しむため月の半分は長野で仕事をする。
主な仕事場は、八ケ岳山麓の「富士見 森のオフィス」(長野県富士見町)。キッチンや食堂もあり、他の利用者との交流も活発。地元案件も請け負え、地元の人を巻き込んだイベントも企画する。
コワーキングスペースの動向に詳しいプロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(東京・中央)の平田麻莉代表理事は「当初の作業場という役割から、つながりを得られる場、託児など機能性が加わってきた。最近は癒やしや気分転換という新たな価値がキーワードになりつつある」と指摘する。
不動産サービス大手CBRE(東京・千代田)によると、共用オフィスは2017年以降急増中で都内だけで355カ所(2019年9月)ある。「企業も人材確保のため働きやすい環境づくりを急いでおり、ネット環境があれば働く場所は問わなくなっている」(鈴木孝一リサーチシニアディレクター)
時間や場所にとらわれない働き方が広がる中、仕事の場が自然や癒やし空間へ広がりそうだ。
(杉原梓)

ITで教員の働き方改革 内田洋行やサイボウズ、クラウド活用

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学校教員の業務負担をIT(情報技術)で軽減するサービスが広がっている。教育関連製品を手掛ける内田洋行は教員の勤怠情報をICカードなどを使ってクラウド上で打刻できるシステムを開発した。ソフトウエア開発のサイボウズは教員の業務用ソフトをクラウドで提供する。教員の長時間労働などを受けた「働き方改革」の需要の高まりに対応する。
内田洋行は「校務支援システム」を8月末から、まず兵庫県姫路市への提供を始めた。同市の小中学校の約3千人の教員の利用を見込む。今後3年間で100自治体以上への導入を目指す。
教員自身が勤務時間をクラウド上で打刻し、出張や休暇の申請もできる。ICカードやQRコードを使いワンタッチで入力できる機能も提供。現在は多くの学校で教員の勤怠管理が企業などに比べて徹底されていないが、同システムでは勤務時間や日数を日常的に把握でき、長時間労働の抑制などにつながるという。
児童・生徒のデータ管理にも使える。従来は紙やエクセル上の数字で把握していた生徒の成績や健康診断の結果を、グラフなどで「見える化」して表示。生徒別の苦手分野などを効率的に把握するのに役立つという。
サイボウズは4月から北海道釧路市の小中学校4校で、サービスの試験提供を始めた。同社が提供するクラウドサービス「kintone」を応用したシステムで、出退勤情報をはじめ、職員名簿や月間予定などを管理できる。教員自身が必要とする機能だけを選んで自分専用のウェブページに表示でき、使い勝手が良いという。釧路市での試験導入の成果を踏まえ、全国展開を検討する。
このほか、ベネッセホールディングスがソフトバンクと折半出資で設立した教材会社のクラッシー(東京・新宿)は1月、教員向けの業務支援システムを提供するEDUCOM(愛知県春日井市)を子会社化した。EDUCOMは全国に拠点を持ち、地域別に異なる校務に対応したシステムを提供している。
教員は授業や生徒指導以外にも、部活動や保護者対応など様々な業務に時間を取られ、負担が重い。教員志望者の減少の一因にもなっている。文部科学省の2016年度の調査では教員の平日1日当たりの学内勤務時間は小中学校ともに平均11時間を超え、10年前に比べて30〜40分伸びた。一方で教員の勤怠管理などの仕組み作りは遅れている。

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