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ペイペイ、多機能アプリに 旅行予約など年60種追加

スマホ決済大手のPayPay(ペイペイ)が「スーパーアプリ」と呼ばれ様々なサービスの入り口となる多機能型アプリの構築に乗り出す。10月にも一部の技術を無償で公開。年60種を目標に外部企業に旅行予約や家計簿など、ペイペイにのせるミニアプリの開発を促す。主力の店舗決済からネットサービスを広げ、早期の黒字化を目指す。同社を傘下に持つソフトバンクグループ(SBG)の成長戦略も左右しそうだ。
 
 
 
ペイペイが開発する多機能型のアプリは、中国や東南アジアで先行して普及。ペイペイは他社のアプリを連携させる「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」という技術の仕様を公開する。ペイペイ上でサービスを提供したい企業は2週間程度でミニアプリを開発できる。企業がミニアプリをペイペイと連携させた場合に、同社が手数料を取るとみられる。
ペイペイで使えるミニアプリは現在5つ。SBG傘下のファンドが出資する中国・滴滴出行(ディディ)系のタクシー配車、ヤフーのネット通販などSBG関連のサービスが中心だ。ペイペイの開発責任者、アディーティヤ・マハートレ氏は「旅行予約や家計簿機能などのほか、月5社程度のミニアプリをのせる」と説明。年60種のペースでミニアプリを増やす。
ミニアプリを作る企業にもメリットがある。3千万人を超える利用者の購買行動を把握できるペイペイを通じ、個人の嗜好にあわせた広告宣伝も可能。売り上げの底上げ効果を期待できる。
ペイペイがAPIの公開に踏み切るのは、ミニアプリで利用者の裾野を広げて採算を改善し、海外でも競争できるアプリに進化するためだ。
 
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ペイペイは2018年10月のサービス開始以来、利用者や加盟店の獲得を優先してきた。SBGの資本力を生かした「100億円還元」などの消費者キャンペーンを実施。中小加盟店の手数料は21年9月まで無料だ。コンビニエンスストアなど230万カ所で利用でき、公正取引委員会によると、スマホ決済金額でペイペイの国内シェアは5割強で首位という。
一方、販促費を集中投下した結果、20年3月期のペイペイの営業損益は822億円の赤字。売上高は伸びているが、株式市場では「採算改善のロードマップが不可欠だ」との声が上がっていた。
そこでミニアプリをペイペイにのせる企業から手数料を取り、中小事業者の決済手数料も21年10月から有料とする。SBG傘下で同様にペイペイに出資するソフトバンクの宮内謙社長は一連の施策で「赤字はピークアウトに向かう」と話す。
提携先を通じてペイペイの利用も促す。7月から企業が自社のネット通販などの決済手段としてペイペイを導入できるようにした。セブン―イレブン・ジャパンも自社アプリの決済にペイペイを使うことを決めた。
こうした多機能型アプリでは、中国勢が先行する。アリババ集団系の「支付宝(アリペイ)」は中国での利用者が9億人を超え、ミニアプリは200万を超える。資産運用や小口融資、保険など金融サービスが売上高全体の5割を占めるまでに成長。既に黒字化しているとの見方もある。
 
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ペイペイの事前注文サービスのミニアプリ
スマホ決済は「クレジットカードに比べ少額決済が中心で単体での収益化が難しい」との声も聞かれる。ペイペイを傘下に持つZホールディングス(HD)はグループの銀行や証券会社、金融サービスの名称を「ペイペイ」に統一、アプリ上での展開を視野に入れる。加盟店や事業者向け金融サービスも念頭に置く。
加盟店の日々の実績や売り上げなど広範なデータを把握できれば、設備投資や仕入れに必要な小口融資、保険サービスを提供できる。入出金の状況などをもとに与信も算出できる。スマホ決済に比べ高い手数料収入が見込める金融商品の利用が増えれば、ペイペイの赤字縮小につながる。
ペイペイの事業の成否はSBGのグループ戦略にも影響する。21年3月には傘下のZHDとLINEが経営統合する。同じようにスマホ決済を持つLINEとペイペイとの協業で、グループとしてアジアを中心に海外に本格進出する構えだ。グローバルに通用するアプリに育てるには、グループ内に分散する資金や技術をどう集中させるかも課題になる。
(駿河翼)
 
▼スーパーアプリ 決済やメッセージ、配車、ネット通販など日常的に使うサービスを一括で提供するアプリ。運営会社は利用者の消費動向など広範なデータを生かし、嗜好に合ったサービスを提供できる。消費者は複数のアプリをダウンロードしたり、会員情報を頻繁に入力したりする手間が省ける。決済を中心に金融事業を広げる中国の「アリペイ」や、配車サービスを軸に展開するシンガポールの「グラブ」などが知られる。
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体力勝負のスマホ決済、勝者はどこか?

複数のスマホ決済サービスを使える店舗も増えてきた
 
スマートフォンを専用機器にかざして支払いを済ませるスマホ決済が拡大している。2020年4〜6月期決算では、各社とも登録者数や取扱高を大きく伸ばした。だが、先行投資もあり、各社とも赤字が続く。利益なき競争を抜け出すのはどこか。
 
■大規模還元が奏功 取扱高が急増
 
「まずは規模を大きくしたい」。傘下のヤフーを通じて「PayPay」の運営会社PayPay(東京・千代田)に25%出資する、Zホールディングスの川辺健太郎社長は強調する。PayPayの6月末時点の登録者数は3004万人と1年前に比べ3.5倍に、4〜6月の決済回数は4億2850万回と前年同期の9倍に拡大。「まずは」の言葉通り、急成長を遂げた。「100億円還元」などとうたった独自の巨額還元キャンペーンが効いた。
 
 
 
これに加え、川辺社長が「登録者急増の追い風になった」と指摘するのは、政府が昨年10月から今年6月に実施したキャッシュレス決済のポイント還元事業だ。対象の中小店舗(200万店)の6割にあたる115万店が登録し、対象の決済額は8兆円を上回った。
各社の2020年4〜6月期決算を見ても、スマホ決済の消費者への浸透は明らかだ。NTTドコモの「d払い」の取扱高は1530億円と前年同期比2.8倍に増加。LINEの「LINE Pay」もグローバル取扱高が28%増の3640億円に伸びた。楽天の「楽天ペイ」は詳細な開示はないものの、電子マネーの「楽天Edy」などと合わせた利用者数は19年12月に4600万人にのぼった。
9月には、マイナンバーカード普及とキャッシュレスの推進を狙ったマイナポイント事業が始まる。消費者がマイナンバーカードと1種類のキャッシュレス決済をひもづけると、最大5000円分のポイントが付与される仕組みで、足元では独自の優遇策を組み合わせたユーザー囲い込みが活発だ。メルカリの「メルペイ」が最大で1000万円が当たるキャンペーンを張るなど、大規模な還元が再燃している。
 
■先行投資で各社赤字
 
各社とも利用拡大に向けた先行投資を優先しており、ほとんどの事業者が部門赤字とみられる。PayPayの20年3月期の営業損益は822億円の赤字で、赤字は前の期の2倍超に拡大。LINE Payを運営するLINE Pay(東京・品川)の19年12月期も191億円の営業赤字だった。
もっとも、スマホ決済ビジネスが赤字なのは、大盤振る舞いのせいだけではない。加盟店にとって、手数料を負担してまでスマホ決済を導入する動機が乏しいことが背景だ。高額決済が可能なクレジットカードには「客単価の上昇」という魅力があるが、スマホ決済にはそれがない。価格競争に陥りやすく、5%前後とされるクレジットカードに比べ加盟店からの手数料を低く抑えざるを得ない。楽天ペイの基本の手数料は3.24%。KDDIの「auPAY」は通常、3.25%だ。
楽天の広瀬研二最高財務責任者(CFO)は「手数料で大きく稼ぐという発想はない」という。では、各社がスマホ決済の拡大を目指すのはなぜか。カギになるのは、他のサービスと連携することで、いかに自社サービスの「経済圏」を拡大できるかだ。
 
 
 
PayPayが目指すのは、金融やネット通販など多様なサービスを集めた「スーパーアプリ」だ。タクシー配車や請求書の支払い、個人向けローンなどに加え、6月には注文と決済をアプリ上で受け付ける、飲食店向けの「PayPayピックアップ」をスタートした。楽天ペイも電子商取引(EC)を軸に多様なサービスを展開する「楽天経済圏」全体から稼ぎ出す収益の拡大を狙う。楽天の三木谷浩史社長は「クレジットカードやデビットカード、電子マネー、キャッシュレス決済とあらゆるキャッシュレス決済が共通のIDで使えるのが強みだ」という。
 
■合従連衡の動きも
 
とはいえ、利益なき消耗戦をいつまでも続けられるわけではない。ここにきて合従連衡の動きも目立ってきた。
楽天ペイは5月、JR東日本の電子マネーSuica(スイカ)との連携を開始。アプリ上でスイカを発行できるほか、スイカへのチャージで楽天ポイントがたまるといった機能を備える。auPAYは19年12月に共通ポイント「Ponta(ポンタ)」を運営するロイヤリティマーケティング(東京・渋谷)に出資し、20年5月に自社ポイントをポンタと統合。会員数9400万人を超すポンタの顧客基盤を活用して、auPAYの利用増を狙う。メルカリは6月からNTTドコモのdポイントとメルペイの連携を開始、9月にはQRコードも共通化する。
 
■PayPay、市場関係者の評価高く
 
覇権争いが繰り広げられるスマホ決済市場で生き残るのはどこか──。日経ヴェリタスがスマホ決済の専門家や市場関係者6人に聞いたところ、6陣営の中で最も高い評価を得たのはPayPayだった。多様なサービスが利用できる「スーパーアプリ」化に向けた種まきが評価されている。楽天ペイがこれに続き、電子商取引(EC)との親和性が高さも評価のポイントになっている。
 
 
 
事業の「成長性」、収益化するまでのキャッシュ余力を示す「耐久力」、「本業とのシナジー」の3項目について、それぞれ5点満点で評価してもらい、6人の点数を単純合計した。
PayPayは90点満点中66点を稼ぎ、総合トップの評価を得た。全ての項目で上位につけたが、特に評価が高かったのは「成長性」だ。
PayPayは飲食店の集客ツールやタクシー配車など決済が関わるあらゆるサービスに展開しているのが強み。「加盟店開拓が進んでおり、他の決済事業者と競合しない加盟店が多い」と声が多かった。さらに新サービスの開発に積極的なのも評価されている。PayPayは決済を軸に多様なサービスを集めたスーパーアプリを目指しており、「(ソフトバンク)グループ内に各種オンラインサービスを抱えており、相乗効果が期待できる」(松井証券の窪田朋一郎氏)という。
本業とのシナジーの面でPayPayをしのぐ評価を得て、首位だったのは楽天ペイだ。情報通信総合研究所の出口健氏は「会員数の多さをベースに、ポイント還元を軸とした『楽天経済圏』への取り込みが進んでいる」と評価する。
楽天ペイ以外も、シナジーの項目上位にはPayPay、メルペイとECが本業の陣営が並ぶ。「スマホ決済はECサイトの販促ツールとして有効」との声が多かった。半面、通信を本業とするd払いやauPAYの点数は低かった。携帯電話の保有台数は1人1台を超え、各社とも数千万の顧客基盤を抱えるが、ECのような収益を生むオンラインサービスが育っていないことが評価に影響しているようだ。
 
■携帯会社系、耐久力にアドバンテージ
 
 
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黒字化するまでの耐久力では、携帯電話会社のサービスが高評価を得た
逆に、耐久力では、d払い、auPAYにPayPayを加えた携帯会社系の陣営が上位を独占した。契約者から毎月、通信料金が入ってくるストックビジネスである携帯会社は財務体質が良好。「信頼性と安定感の高さは、決済サービスを展開する上で大きなブランド価値になる」(出口氏)という。豊富なキャッシュを原資に積極的なポイント還元で顧客基盤を強化し、携帯電話の解約防止や電気や保険といった通信以外のサービスの利用拡大を目指している。
総合ランキングをみると、LINE Payやメルペイの2陣営は競合にやや水をあけられる結果になった。加盟店の開拓やポイント還元キャンペーンなどによる顧客の囲い込みで、スマホ決済は体力勝負の様相を呈している。LINEはSNS(交流サイト)で、メルカリはフリマアプリで確固たる地位を築いているが、本業の収益力では他陣営に見劣りする。これが評価の分かれ目になったようだ。
(秦野貫氏、野口知宏氏、上原翔大氏)

スマホ決済、淘汰時代 メルカリがオリガミ買収

メルカリは23日、傘下のスマートフォン決済のメルペイ(東京・港)がスマホ決済のOrigami(オリガミ、東京・港)を完全子会社化すると発表した。スマホ決済を巡っては、ソフトバンクグループが手がける「ペイペイ」などIT(情報技術)系大手が大型キャンペーンを相次ぎ打ち出して利用者を拡大する一方、資金力で劣るオリガミのような独立系事業者は苦戦を強いられていた。今回の買収をきっかけに業界再編が進みそうだ。
オリガミはスマホ決済「オリガミペイ」を運営する。メルペイがオリガミの全株式を取得し、完全子会社化する。株式譲渡の実行日は2月25日の予定で、買収金額は非開示としている。メルペイとの統合で、将来的にオリガミペイのサービスは終了する見通しだ。終了時期は未定だが、オリガミペイの利用者は新たにメルペイに登録する手続きが必要になる。
オリガミは2012年に設立したフィンテック系のスタートアップだ。当初はスマホの電子商取引(EC)アプリを展開してきたが、16年にQRコードを利用した決済サービスに参入。他の決済手段に比べて割引率が高く、20〜30代のユーザーに人気があった。17年1月にはタクシー大手の日本交通でサービスが利用できるようになり、ビジネスマンの需要も開拓するなど、スマホ決済のパイオニアとして事業展開を進めてきた。決済できる場所は約19万カ所に上る。
潮目が変わってきたのは、IT大手のスマホ決済への参入だ。16年に楽天が、18年にはソフトバンクグループ傘下のPayPay(ペイペイ、東京・千代田)が参入した。
ペイペイは18年末、購入額の20%を利用者に還元するキャンペーンを実施。サービス開始から1年余りで利用者数は2300万人を超えた。単月の決済回数は1億回を超え、1年間で22倍に増えた。
2月には外食チェーンでペイペイを利用すると、購入金額の40%を残高として還元し「まだまだユーザーが増える手を打っていく」(中山一郎社長)と攻め続ける。全国20拠点で数千人が使える場所を開拓し、加盟店は185万カ所超になった。ペイペイは豊富な資金力を背景に利用者、加盟店を増やしている。
ペイペイのキャンペーンを皮切りに、他のスマホ決済を手がける企業も還元施策を次々と始めた。キャンペーンごとに利用するスマホ決済を変える消費者も出てきて、利用者獲得のための還元施策は競争が激化していた。
還元施策は利用者を獲得できる半面、企業への負担も大きい。LINEはスマホ決済「LINEペイ」で大型の還元キャンペーンを19年4〜6月期に実施し、マーケティング費用として97億円を投じた。その結果、同社の19年1〜9月期の営業損益は275億円の赤字(前年同期は67億円)だった。
LINEの出沢剛社長は「18年以降、決済事業者間による還元が激化し、消耗戦が続く。効率的なマーケティングで差別化した戦略をとった」と説明し、19年7〜9月期のLINEペイのマーケティング費用は8億円と大幅に減らした。その結果、LINEペイの月間利用者数は19年4〜6月期に490万人だったのが7〜9月期には286万人にまで減少した。
LINEは19年11月、ヤフー親会社のZホールディングスとの経営統合を決めた。LINEペイとペイペイのサービスについても、いずれ統合するとの見方が強い。
オリガミは法人向けに打開策を見いだそうとしていた。19年9月に、同社の決済基盤を企業向けに開放し、独自の決済アプリを開発するサービスを始めた。吉野家やすかいらーくなどが活用を決め、11月にはトヨタ自動車が開発した決済アプリ「TOYOTA Wallet」の一部をオリガミが担うなど、事業者向けに活路を見出しつつあった。
メルカリとメルペイは同日、信金中央金庫と業務提携を結んだと発表した。信金中金はもともとオリガミに出資しており、QRコード決済の加盟店開拓で協力していた。オリガミは今回の買収後にこれまで培ってきた加盟店網をメルペイ側に統合するため、メルカリグループが信金中金との提携関係も引き継ぐ。
信金中金は今後、全国ネットワークを通じてメルカリグループのサービス拡大を支援する。メルカリの利用方法を説明する教室を全国で開催することなどを検討する。メルペイの利用拡大により地方でキャッシュレス化が進展する効果も見込めるという。
オリガミの利用者数は非公表だが、業界関係者によると伸び悩んでいたという。メルカリの利用者数を合わせても大手IT企業のペイメント利用者数を脅かす水準にはならなそうだ。
野村総合研究所・金融イノベーション研究部の竹端克利上級研究員は、通信会社や大手IT企業による大規模な還元策を念頭に「収益化が難しい事業者は今後も再編が進む可能性がある」と指摘。その上で「決済サービスだけでなく、保険や証券など決済以外の収益源をどう確保できるかが焦点だ」としている。