デジタル庁、21年に設置 トップに民間人検討

記者会見する平井卓也デジタル改革相(17日、首相官邸)
政府は行政のデジタル化を推進する「デジタル庁」を2021年秋までに新設する方針だ。各省庁にある関連組織を一元化し、強力な司令塔機能を持たせる。新型コロナウイルス禍で露呈した行政手続きの遅さや連携不足に対応する。21年1月に召集する通常国会にIT(情報技術)基本法改正案などを提出する。
 
 
 
菅義偉首相は17日、平井卓也デジタル改革相にデジタル庁の検討を急ぐよう指示した。来週にも全閣僚を集めた会議を開いて早期の具体化を求める。平井氏は内閣官房や総務省、経済産業省、民間機関などから人を集めた準備委員会をつくり、制度設計に着手する。
最新のデジタル化の動向に対応するため、民間人をトップに据える案を検討する。
日本はデジタル化で遅れている。国連が公表する電子政府の進み具合を示すランキングでは日本は10位以下が定位置だ。2020年は14位だった。1位のデンマークや2位の韓国は省庁横断の司令塔組織で強力にデジタル化を進めている。
新型コロナ禍で政府は春から1人当たり10万円の現金給付を実施した。生活に困窮する懸念に備えて早期に配る意向だったが、地方自治体が振込口座を確認する作業などに手間取り、給付が遅れる一因と指摘された。
 
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政府は16年から社会保障や税の納付などに使えるマイナンバーカードを導入し始めたが、普及率はまだ2割弱だ。利用を増やせば素早く行政サービスを提供でき、大幅なコスト削減につながる。
新型コロナの感染者の把握では、国と地方自治体、保健所や医療機関との情報共有がうまく機能しない例が目立った。ファクスを使う保健所もあり、統一した形式でデータを収集・分析する仕組みが整っていない。
霞が関では各省庁、各部局で異なるシステムを採用する場合も多い。
新設するデジタル庁は各府省庁のシステムの一括調達を進め、データ様式を統一していく。省庁間だけでなく地方の自治体や行政機関の間でもスムーズにデータをやりとりし、行政手続き全般を迅速にする。ビッグデータの分析にも役立つため、政策効果の計測などにも使えるようになる。
 
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マイナンバーカードの普及促進策も練る。健康保険証や運転免許証など個人を識別する様々な規格を統合する。カード1枚で行政手続きが済むように改善する戦略を実行する組織にする。
オンライン診療や遠隔教育は厚生労働省と文部科学省が所管しているが、デジタル庁も推進策を示す。オンライン診療に必要な電子カルテは病院や診療科ごとに表記がバラバラで普及が遅れている。政官業が既得権益を守るためにデータの共有に消極的なケースがあるとの指摘もある。デジタル庁がデータ形式の統一や標準化を促す方針だ。
内閣府設置法を改正して設置する案や、首相直轄の組織にするため新法を制定する案がある。IT基本法改正案も提出し、政府のIT戦略のトップである内閣情報通信政策監(政府CIO)の立場も強化する予定だ。
 
 
総裁選支えた「菅グループ」 無派閥・非世襲の若手集う
自民党総裁に選出され、拍手に応える菅氏(14日、東京都港区)
「無派閥・非世襲」の菅義偉氏が16日、第99代の首相に就任した。近年の自民党出身の首相は政治家一族で派閥に属する議員が多く、菅氏は異色の経歴である。派閥という党内基盤を持たずに宰相の座をつかんだ陰には、同じ「無派閥・非世襲」の若手議員による支持があった。
「自民党総裁選に出馬してください」
「ずっと付いていきます」 8月31日、衆院議員会館の菅氏の事務所に詰めかけた14人の若手議員が菅氏に一人ずつ思いを伝えた。菅氏はうなずきながら聞き終えると答えた。「その覚悟だ」
集まった議員には3つの共通点がある。(1)衆院当選4回以下で(2)派閥に属さず(3)親が国会議員ではない「非世襲」である――。
菅氏と同じ神奈川県選出の坂井学氏や山本朋広氏らが中心で「ガネーシャの会」というグループ名を持つ。この日は参加しなかった牧原秀樹氏もメンバーの一人だ。
翌9月1日には島村大氏や三宅伸吾氏ら参院議員11人が菅氏に出馬を要請した。こちらも全員が「無派閥・非世襲」で、参院当選2回以下が大半を占める。両グループとも菅氏を支持する議員の集まりで、定期的に会合を開く。
 
菅氏に出馬要請した参院の無派閥議員ら(1日、国会内)
 
ほかにも無派閥で個別に菅氏との結び付きが強い議員は複数いる。合計すると30〜40人規模とされ、党内で「菅グループ」と呼ばれる。
官房長官として長期政権の要の役割を果たしてきたとはいえ、党内基盤が何もなければ首相になることは難しい。総裁選で党内7派閥のうち5派閥が菅氏を支持した背景には「菅グループ」という「基礎票」もあった。
若手議員は総裁選でSNS(交流サイト)の発信や地方議員とのオンライン懇談会などの調整を担った。菅氏にとっては他の派閥議員よりも信頼できる実動部隊である。
「菅グループ」はこれまで目立たないように活動してきた。菅氏が派閥政治に否定的だったことに加え、政権を支える官房長官として安倍晋三氏への対抗と誤解されかねない動きは控える必要があった。菅氏が総裁選への意欲を聞かれるたびに「全く考えていない」と答えてきたのと同じ文脈である。
派閥の活動とは一線を画す。たとえば派閥は政治資金パーティーなどで集めた資金を所属議員の支援にあてる。内閣改造・党役員人事では所属議員の希望をリストにまとめて首相官邸に渡す。「菅グループ」はこうした活動を少なくとも表だってはしない。
派閥では総会の冒頭や最後に領袖があいさつするのが一般的であるものの、菅氏が各グループの定例会合に出席することは原則ない。あくまで菅氏を慕う無派閥の有志議員による自発的な集まりという形式をとる。
 
菅氏に出馬要請したガネーシャの会の議員ら(8月31日、国会内)
「菅グループ」の代表格であるガネーシャの会は各派閥が総会を開く毎週木曜日に、昼食の定例会合を開く。派閥に属する国会議員が参加できないようにする仕組みだ。夏場の泊まり込みの視察や、政策テーマを絞った勉強会といった議員同士の交流を深める活動はしている。
ガネーシャの会を例に、グループができた経緯をみてみよう。起点は派閥に所属している人も含めて菅氏に近い若手議員が集まって「偉駄天(いだてん)の会」を発足させたことだ。
フットワーク軽く活動したいとの思いを込め、俊足のバラモン教の守護神「韋駄天」から名付けた。菅氏の名前から一文字取って「韋」を「偉」に置き換えている。
このメンバーのうち無派閥に限定して2015年ごろに結成したのがガネーシャの会である。ガネーシャは韋駄天の兄弟である「歓喜天」のサンスクリット語の呼び名だ。
菅氏の名前から「義」を借りて「歓義天の会」にする案が出て、菅氏が「あまり名前を使わないでほしい」と難色を示した経緯がある。
 
 
派閥のように正式な名簿は作成していないという。その代わり、ガネーシャの会にはメンバーであることを示す「証し」が一つある。ある議員が海外の土産として購入したガネーシャの小さな像だ。会合に集まる議員一人ひとりに配った。菅氏には少しサイズの大きい像を渡した。
複数のメンバーがグループに参加したのは菅氏から紹介されたからだと明かす。「こんな集まりがあるから連絡を取ってみるといい」「無派閥で(政治家の)2世や3世でもない人間が活動するのは大変だろう」と声をかけられたと語る。
菅氏はかつて小渕派(現竹下派)や古賀派(現岸田派)に在籍し、09年に古賀派を退会した後は無派閥を貫く。無派閥でいることの難しさを知るだけに、若手の活動に気配りしたようだ。山本氏は「我々が菅氏を支えてきたというよりも、むしろ支えてもらってきた」と語る。
菅氏は2日の総裁選への出馬記者会見で、無派閥の仲間への思いを吐露した。「派閥の連合に推されて今ここにいるわけではない。支えてくれる派閥に所属してない国会議員のエネルギーが私を押し上げている」
新内閣と党役員人事は再任の梶山弘志経済産業相のほか首相を補佐する官房副長官にガネーシャの会の坂井氏、経済・外交担当の首相補佐官に参院の支持グループメンバーである阿達雅志氏をあてた。
菅氏の総裁任期は安倍前首相の残り任期を引き継ぐため21年9月までとなる。1年後には総裁選を改めて戦わなければならない。他派閥からの支持をつなぎとめつつ自らを支える議員に報いるバランスは必要になる。
■無派閥、総裁選で影響力
自民党の派閥は衰えたとはいえ今なお資金やポスト配分で所属議員に一定の支援をする。人脈のない若手の無派閥議員では自分の希望を政権中枢に伝える機会さえ少ない。菅氏はそうした議員の面倒を見て党内基盤を築いた。
その「菅グループ」は総裁選で5派閥と一緒に菅氏を首相へ押し上げた。菅氏は過去の総裁選で派閥横断の議員グループをつくり、安倍晋三氏を首相に2度就けてきた経緯がある。自らの総裁選出馬も派閥ではない枠組みからの支持を足場にした。
今回の総裁選は派閥が勝負の流れをつくった一方で、無派閥議員が一定の影響力を示す舞台にもなった。いずれ総裁選に出ようと意欲を持つ次世代の議員も党内の15%を占める無派閥の重要性を認識したと語る。
(加藤晶也氏)

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