月別アーカイブ: 2020年9月

オセアニア勢など 海外大学が先行 日本勢 北大76位が最高

DGs(持続可能な開発目標)をめぐる取り組みは海外の大学が先行している。

英教育専門誌のタイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)がSDGsを基に大学の社会貢献を評価する「THE大学インパクトランキング2020」によると、首位のオークランド大学(ニュージーランド)をはじめ、上位は欧米やオセアニア勢が占めた。日本勢は北海道大学の76位が最高だった。

一方、ランキング調査(総合部門)に参加した766大学のうち、日本の大学は63大学と国・地域別では最も多かった。取り組みの深さでは海外勢に後れを取っているものの、関心や意欲は着実に高まっている。SDGsを一過性のブームに終わらせず、より多くの学生を巻き込む試みが求められる。

SDGs「自分の事」と意識 学生団体や大学
環境学ぶイベント開催 企業と組みマイボトル

金沢工業大学の学生がSDGsを学ぶカードゲームを制作し、小中高生にゲーム形式で教えている(2019年6月)

金沢工業大学の学生がSDGsを学ぶカードゲームを制作し、小中高生にゲーム形式で教えている(2019年6月)

国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)を推進する動きが全国の大学で広がっている。学生が中心となって気候変動や貧困などさまざまな課題の解決策を考え、日常生活で実践している。今後数十年、社会を支える学生にとって、SDGsは人任せにできないとの意識が強いようだ。

「きれいな地球を残すのは大事なことだと思いました」。金沢工業大学が8月に開催した子ども向けのオンラインSDGsサミットで、大賞を獲得した小学2年の女子児童は堂々と感想を述べた。大賞作品は段ボールでコンポストをつくり、生ごみを堆肥に再生する意欲作だ。

イベントの中心は学生団体「SDGs Global Youth Innovators(グローバル・ユース・イノベーターズ)」。SDGsの普及・実践が主な活動内容で、3月からは新型コロナウイルスの影響で休校の小中高生を対象にオンラインで学びを支援している。

旗振り役は大学院修士課程1年の島田高行さん(23)だ。経営戦略を研究する平本督太郎准教授のゼミでSDGsを学び「ボランティアではなくビジネスとして成立させたい」との思いから、大学3年だった2018年に団体を立ち上げた。SDGsを学ぶカードゲームやスマートフォンアプリを制作し、イベントも開催。19年は延べ約1250人の小中高生が参加したという。

関西学院大学はアウトドア用品メーカー、スノーピークと包括連携協定を6月に結んだ。連携の柱の一つに掲げたのがSDGsで、第1弾として学生と企業によるマイボトルの開発をスタート。約40人の学生が開発に参加しており、完成品は2021年度の新入生に配布する予定だ。

「キャンパス内でペットボトル年間消費量の3万本削減」を目標に掲げるが、それ以上に重要なのは環境に対する学生の意識向上だ。連携の担当者は「学生がSDGsを考えるきっかけとし、良いモノを長く使う意識が広がってほしい」と期待を寄せる。

実際に意識の変化も起き始めた。その一つがボトルデザインの決定だ。くびれのあるフラスコ型と円筒型の2種類から選ぶ際、当初は斬新なデザインの前者を支持する学生が多かった。議論を交わすなか「車のカップホルダーに入らない」「洗いにくく使いにくい」との問題点が浮上し、後者に決定した。

いち早く民間企業と組み、SDGsに取り組んできたのが千葉大学だ。京葉銀行との「ecoプロジェクト」を17年に開始。20年3月までに延べ400人以上の学生が関わり、住民や子供、企業向けのイベントなどを実施してきた。SDGsが掲げる17目標のうち、10項目で成果を上げたという。

その一つの「海の豊かさを守ろう」では環境保護に取り組むNPO法人と連携し、海草の生息環境が悪化していた無人島、沖ノ島の再生に挑戦。海草の種子を植える土づくりから取り組み、沖に植え付けた。企画した学生は「一度失われた自然は簡単には取り戻せないことが改めて感じられた」と振り返る。

新型コロナウイルスの影響で大規模なイベントが難しいため、20年度は環境啓発の動画やポスターを作製し、ローカル鉄道の広告や京葉銀の小型ビジョンで流す試みを検討中。地域の農家や農業加工品を紹介するリーフレットを学生が作成し、消費者に地産地消を促す企画も練っている。

SDGsのハブ大学として、18年に日本で初めて国連から認定された長岡技術科学大学。学生主体で国際会議を開催し、SDGsの達成に向けた研究成果を全国の大学や高専が発表する場を設けている。9月にはSDGsの普及・啓発を目的とした学生組織も立ち上がった。留学生を含む13人の学生が集まり、学内で取り組めるアイデアを考えるなど活動が広がっている。

(江口剛氏、前田悠太氏、貴田岡祐子氏)

米SNSに強まる圧力 トランプ政権もバイデン氏も

AP
 
 
 
【ワシントン=鳳山太成、シリコンバレー=奥平和行】米大統領選を控え、米ツイッターなどのSNS(交流サイト)運営企業への圧力が強まっている。トランプ米政権は23日、利用者の投稿内容に運営企業が手を加えることを規制する法整備を呼びかけた。民主党のバイデン前副大統領は運営企業の一層の関与を求めている。
焦点は1996年に成立した通信品位法230条だ。IT(情報技術)大手に活動の自由を保障する条項で、SNS運営企業は投稿内容を訴えられても原則、法的責任を問われない。運営企業が裁量で投稿を削除することも認めている。フェイスブックやツイッター、ユーチューブなどの成長の基盤となってきた。
トランプ政権下の米司法省は23日、230条に関してSNS運営企業に一定の責任を負わせる改正案を公表した。
230条の見直しはトランプ大統領、バイデン氏が共に賛成している。一方で両氏が求める改正内容は大きく異なる。
トランプ氏は「SNS運営企業がネット上の保守的な言論を抑制している」と主張する。5月にはツイッターがトランプ氏の投稿に「事実確認を促す警告」をつけ、激怒した同氏が見直しを求める大統領令を出した。
こうした経緯を経て司法省は「230条は合法的な言論の検閲を可能にしている」と指摘した。今回の改正案では、SNS運営企業が投稿を削除する場合は根拠を明示するよう義務付けた。
バイデン氏の主張は異なる。同氏が問題視するのは、現行の230条でSNS運営企業が投稿内容への責任を問われないことだ。6月にはSNSでの政治広告の規制強化を求める書簡をフェイスブックに送った。同社やマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)を「好きではない」と発言したこともある。
野党・民主党もSNS運営企業がデマやヘイトスピーチ、児童ポルノなどの投稿を野放しにしていると批判する。
米国内ではSNSが政治や言論に与える影響が大きくなるにつれ、230条を「時代遅れの法律」とみなす意見が広がってきた。今回の司法省の改正案でも「悪意を持って」違法コンテンツの投稿を促したSNS運営企業には、連邦政府が法的措置を取りやすくする内容を盛り込んでいる。
アリゾナ大学のデレク・バンバウアー教授は「トランプ氏と与野党が合意できる法案を作るのはほぼ不可能」と強調する。「230条は現実的な法改正の問題というより大統領選の争点や政治的な論争として扱われている」と解説する。
SNS運営企業は230条を見直せば米企業の弱体化につながり、中国の台頭を招くと主張する。選挙関連の投稿を規制するなど自主的な対応で済ませたいのが本音だ。
トランプ氏が再選し、共和党が議会で数を伸ばせば21年に法改正が実現する可能性がある。バイデン氏も当選すれば規制強化に踏み込む構えだ。米IT大手にとっては、どちらが大統領になっても230条の見直しが事業拡大の阻害要因になりそうだ。
ボストンカレッジのダニエル・ライオンズ教授は「最終的に役割の重みに応じた責任を(SNS企業に)負わせる法案がつくられるかもしれないが、責任の範囲がどうなるか予測するのは時期尚早だ」と述べ、これからも激しい論争が続くとみる。
 
 

「転職への関心高まった」6割に コロナ禍で急上昇 ビジネスパーソン700人調査(上)

リモートワークの導入は転職を検討するきっかけにもなった(写真はイメージ) =PIXTA
転職への関心が急速に高まっている。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だ。就職・転職支援の日経HR(東京・千代田)が実施したアンケート調査では、約6割が「転職への関心が高まった」と回答。コロナ禍に伴う需要減などで、現在の勤め先や業界の成長性を不安視する層に加え、在宅勤務をはじめとする新しい働き方を実践しやすい職場を志向する人が多かった。ただ、今後の転職活動については約8割が「非常に厳しくなる」と悲観的な見方を示した。
このアンケート調査は日経HRが「日経キャリアNET」登録会員を対象に、2020年7月30日から8月7日にかけて実施した。有効回答数は735人。
新型コロナウイルスの感染拡大後、転職を意識する人が増えた
非常に高まった 35%
少し高まった 22%
変わらない 36%
少し低くなった 5%
非常に低くなった 1%
その他 1%
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コロナ禍を経験して転職への関心について変化があったかを聞いたところ、「非常に高まった」が35%、「少し高まった」が22%で、合わせておよそ6割となった。転職意向の高まりを年代別で見ると、20代(61%)と40代(62%)が、30代と50代(ともに54%)を上回っている。「非常に低くなった」(1%)、「少し低くなった」(5%)は合計しても1割に満たず、今回の調査からは、コロナが総じてビジネスパーソンの転職意欲を引き出す方向に作用したといえそうだ。
「転職意向が高まった」理由としては、現在の会社や業界の将来への不安や、在宅勤務ができなかったり働き方改革の速度が遅かったりする会社に対する不満が多く示された。「リモートワークできる会社に転職したい」や「多様な働き方ができる職場に魅力を感じる」など、柔軟な働き方を希望する意見が目立った。自粛期間をへて、働き方やキャリアについて見つめ直す時間が増えたことによって、在宅勤務や副業が可能な新しいキャリアを模索するようになった人も多いようだ。
 
 
 
自由回答から透けて見える、勤め先への「がっかり感」
アンケートに含まれていた自由回答を分析すると、転職する気持ちが強まった人たちが勤め先に不満を募らせている様子が読み取れる。いったんはリモートワークを採用したのに、しばらくたって出社が基本の旧スタイルに戻したケースも少なくないようだ。
【自由回答】
■非常に高まった
・業界が苦しい(51歳男性、ホテル)
・自社の、働き方を変えようとする意識の低さに嫌気がさした(36歳男性、銀行)
・常時リモートワークできるところで働きたい(28歳女性、メーカー)
・コロナですら変われない会社を見て、見切りをつける最後の一押しになった(34歳女性、生保・損保)
・自宅で自分を見つめ直す時間があり、転職のリサーチに使えた(54歳女性、IT)
■少し高まった
・在宅勤務を推奨しない会社に危機を感じる(45歳男性、IT)
・DX(デジタルトランスフォーメーション)や働き方改革を推進できる絶好のチャンスだったのに、意識も仕事のやり方もコロナ前に戻ってしまった会社の姿勢に疑問を持った(58歳男性、紙パルプ)
・緊急宣言の解除後、在宅勤務できる雰囲気になっていない(30歳女性、化学)
■変わらない
・コロナの影響が少なく給料など変わらない(28歳女性、建設関連)
・コロナに関係なく、転職意思が固い(42歳女性、コンサルティング)
転職意向が「非常に高まった」「少し高まった」と回答した人に、転職に向けて具体的に始めたことがあるかを尋ねたところ(複数回答)、「転職サイトに登録した」が64%、「履歴書・職務経歴書を作成した」が42%、「人材紹介会社に登録した」が35%となったほか、「業界・企業に関する情報収集を始めた」(22%)、「自己分析・キャリアの棚卸しをした」(20%)、「仕事に必要な知識・スキルアップの学び直しを始めた」(16%)が続いた。
転職への関心が高まる半面、転職市場の先行きについては厳しい見方が大勢を占める。「今後の転職活動がどのようになるとみているか」を聞いたところ、「非常に厳しくなる」が44%、「やや厳しくなる」が33%と、8割近くが先行きの厳しさを予想した。「非常に楽になる」と回答した人はおらず、「やや楽になる」も1%にとどまった。
 
 
 
リモートワーク・在宅勤務を転職先選びで重視
転職先を選ぶ基準については、「給与・待遇」(80%)に続き、「働きやすい制度(リモートワーク・在宅勤務など)」(44%)との回答が多かった。「休日・休暇」(38%)や「福利厚生制度」(21%)といったワークライフバランスに関連する項目が上位に並んだほか、「副業が可能」を挙げた人が5%に上り、リモートワーク希望者と合わせ、新しい働き方を志向するビジネスパーソンが増えている兆しとみてとれる。
前回(2020年2月)の調査では、「働きやすい制度(リモートワーク、育休など)」は13%で8番目だった。3つまで選択可能(今回5つまで)にしていたほか、「働きやすい制度」の選択肢にリモートワークや育休などをまとめていたため一概に比較することはできないものの、リモートワークを重視する層が大幅に広がっているとみられる。
「新しい働き方」のなかで、今後挑戦してみたいことを聞いたところ(複数回答)、「リモートワーク・在宅勤務」が52%でトップ。そのほか、「副業(所属組織で働きながらの形態)」39%、「副業(所属組織と異なる組織で働く形態)」35%と、副業への関心の高さがうかがえるほか、「週休3日など休日が多い働き方」(34%)、「フリーランス・個人事業主」(19%)、「地方都市への移住」(16%)、「起業」(16%)など様々なタイプの「新しい働き方」が注目を集めているようだ。
年代別の比較で、「リモートワーク・在宅勤務」は20代(61%)、30代(60%)、40代(57%)と差はなかったが、50代は43%と他の年代に比べて低かった。副業に関しては、所属に属すか属さないかで年代に差が出た。「所属組織で働きながらの副業」は20代(52%)が高く、30代、40代、50代は、それぞれ41%、38%、37%。「他社で働く副業」については、30代(37%)、40代(33%)、50代(37%)が高く、20代は21%と低かった。「地方都市への移住」は20代と30代が21%、40代と50代が15%と差が出た。
転職に向けてすでに活動していた人を対象に、コロナによって自身の活動に変化があったか、という質問への回答では「以前と変わらないペースで続けている」が52%で最多だったものの、「一時停止したがその後再開した」(12%)、「転職すべきか迷うようになった」(11%)、「活動を停止した」(7%)など何らかの影響を受けた層も3割に達した。
転職活動における「ニューノーマル」ともいえる電話やウェブによる「リモート面接」については約4割が「受けたことがある」と回答。「リモート面接で採用担当者に言いたいことや気持ちを伝えることができたか」という質問には6割程度が「そう思う」とした半面、「対話がぎこちなくなる」「相手の表情が分からずコミュニケーションがとりづらい」など実際に会わずに自分の言いたいことを伝える難しさを感じている人もいた。
(日経転職版編集部 宮下奈緒子氏)

再教育でデジタル人材育成 欧米が公的支援、日本は遅れ

欧米でデジタル人材を育てるリカレント教育(再教育)への公的支援が広がっている。新型コロナウイルスで世界的に雇用不安が広がるなか、失業リスクが高い産業からニーズが拡大するデジタル分野へ雇用シフトを進められるかがコロナ禍後の成長に直結する。産官学連携が乏しく、再教育で欧米に遅れる日本にとって喫緊の課題だ。
 
 
 
欧米が再教育支援を急ぐのは、コロナ禍で雇用ニーズの変化が加速しているためだ。もともと人間の作業が人工知能(AI)やロボットに置き換わるデジタル化の流れが進んでおり、雇用のシフトが進んでいた。そこにコロナ禍が発生し、営業制限を迫られた外食などサービス業で人員過剰を生んだ。
「危機を通じて強くなろう」。スウェーデンが11月から本格運用する再教育サイトはこんな標語を掲げる。産業界と労働組合、政府が提携して訓練メニューを開発。企業ニーズに応え、3Dプリンターや次世代通信規格「5G」の接続など、デジタル分野の知識を学べる仕組みとした。
同国は教育訓練のための休暇の導入など1970年代から再教育に力を入れてきた。「業界団体や企業のニーズに応じ、公的な教育訓練の内容を柔軟に変えている」(日本総合研究所の山田久副理事長)のが強みだ。
欧州ではフランスも3日発表した1千億ユーロ(約12兆円)の追加のコロナ対策で、雇用や職業訓練に153億ユーロを充てた。デジタル、医療などの職業訓練を支援する。
米国では超党派議員がスキル更新を促すための新法を提案し、専門技能の訓練を受けた個人に4千ドル(約42万円)の税額控除を与えると盛り込んだ。米マッキンゼー・アンド・カンパニーの試算では、米国はコロナ後に5700万人の雇用が失業リスクにさらされるが、デジタル分野などへの人材流動化を促す。
 
日本は遅れが目立つ。世界各国が労働市場のニーズを再教育にどれだけ反映できているかを、経済協力開発機構(OECD)が比較したところ、日本は加盟国で最下位だった。将来必要になる技能を定期評価する仕組みを企業が整えているかや、最新スキルを学べるプログラムを従業員に提供する企業の割合などを評価し、最大値が1となるよう指標化。日本は0.15で、加盟国平均の0.57を下回った。
2017年度から社会人がデジタル技能の訓練を受けると、費用の最大70%を公費で助成する制度を始めた。個人と企業のどちらも申請できるが、利用者は年間数百人程度どまり。新卒一括採用・終身雇用が続いてきた日本では企業も個人も「スキルを向上させようという危機感が生まれにくい」(経済産業省)。
コロナ禍による雇用ニーズ急変は日本も例外ではない。三菱総合研究所は事務職の人員過剰が22年に100万人超に膨らむと推計する。一方、デジタル技術を持つ専門職の不足は50万人程度になるとみる。政府は19年、AIの基礎知識を持つ人材を25年までに年間25万人育てる目標を掲げたが、実現へ歩みは鈍い。
民間では日立製作所がグループ全16万人にデジタル教育を始める動きも出てきた。デジタル時代の到来で、富の源泉はデータや知識へシフトする。そうした変化に対応できる人材の育成が、コロナ後の成長のカギを握る。
(飛田臨太郎氏、橋本慎一氏、ロンドン=今出川リアノン氏)
 
デジタルトランスフォーメイション(DX)教育
 
IT(情報技術)が社会のあらゆる領域に浸透することによってもたらされる変革。2004年にスウェーデンのE=ストルターマンが提唱した概念で、ビジネス分野だけでなく、広く産業構造や社会基盤にまで影響が及ぶとされる。デジタル変革。(小学館)
 
2011年にドイツで提唱された「インダストリー4.0(第四次産業革命)」以降、世界中の主要国がITやAI技術を統括的に開発でできる人材育成を行ってきた。その点では日本はかなり遅れている。遅れて2016年に日本はソサエティ5.0を推進しているものの2025年大阪・関西万国博覧会までには間に合わない。DXの社会基盤づくりに菅内閣も早急にやろうとしているが、霞が関で話し合っても、どうしようもないレジュメしかでてこないであろう。もっと産学官民が一体となって基盤構築と人材活性をスピーディに進め、ここは実力のないIT企業は置いていくしかないのである。
とにかく有識者の選定も間違えている。どれだけ時代の先を見据えている学者がいるのかわからないが、あればそこに投資をし民間の力を借りて一気呵成に結果を出し続けることが必要だ。

デジタル庁、21年に設置 トップに民間人検討

記者会見する平井卓也デジタル改革相(17日、首相官邸)
政府は行政のデジタル化を推進する「デジタル庁」を2021年秋までに新設する方針だ。各省庁にある関連組織を一元化し、強力な司令塔機能を持たせる。新型コロナウイルス禍で露呈した行政手続きの遅さや連携不足に対応する。21年1月に召集する通常国会にIT(情報技術)基本法改正案などを提出する。
 
 
 
菅義偉首相は17日、平井卓也デジタル改革相にデジタル庁の検討を急ぐよう指示した。来週にも全閣僚を集めた会議を開いて早期の具体化を求める。平井氏は内閣官房や総務省、経済産業省、民間機関などから人を集めた準備委員会をつくり、制度設計に着手する。
最新のデジタル化の動向に対応するため、民間人をトップに据える案を検討する。
日本はデジタル化で遅れている。国連が公表する電子政府の進み具合を示すランキングでは日本は10位以下が定位置だ。2020年は14位だった。1位のデンマークや2位の韓国は省庁横断の司令塔組織で強力にデジタル化を進めている。
新型コロナ禍で政府は春から1人当たり10万円の現金給付を実施した。生活に困窮する懸念に備えて早期に配る意向だったが、地方自治体が振込口座を確認する作業などに手間取り、給付が遅れる一因と指摘された。
 
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政府は16年から社会保障や税の納付などに使えるマイナンバーカードを導入し始めたが、普及率はまだ2割弱だ。利用を増やせば素早く行政サービスを提供でき、大幅なコスト削減につながる。
新型コロナの感染者の把握では、国と地方自治体、保健所や医療機関との情報共有がうまく機能しない例が目立った。ファクスを使う保健所もあり、統一した形式でデータを収集・分析する仕組みが整っていない。
霞が関では各省庁、各部局で異なるシステムを採用する場合も多い。
新設するデジタル庁は各府省庁のシステムの一括調達を進め、データ様式を統一していく。省庁間だけでなく地方の自治体や行政機関の間でもスムーズにデータをやりとりし、行政手続き全般を迅速にする。ビッグデータの分析にも役立つため、政策効果の計測などにも使えるようになる。
 
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デジタル化、全閣僚で推進 菅内閣が発足
菅政権に望む 三村明夫氏/久保文明氏/岩田喜美枝氏
 
マイナンバーカードの普及促進策も練る。健康保険証や運転免許証など個人を識別する様々な規格を統合する。カード1枚で行政手続きが済むように改善する戦略を実行する組織にする。
オンライン診療や遠隔教育は厚生労働省と文部科学省が所管しているが、デジタル庁も推進策を示す。オンライン診療に必要な電子カルテは病院や診療科ごとに表記がバラバラで普及が遅れている。政官業が既得権益を守るためにデータの共有に消極的なケースがあるとの指摘もある。デジタル庁がデータ形式の統一や標準化を促す方針だ。
内閣府設置法を改正して設置する案や、首相直轄の組織にするため新法を制定する案がある。IT基本法改正案も提出し、政府のIT戦略のトップである内閣情報通信政策監(政府CIO)の立場も強化する予定だ。
 
 
総裁選支えた「菅グループ」 無派閥・非世襲の若手集う
自民党総裁に選出され、拍手に応える菅氏(14日、東京都港区)
「無派閥・非世襲」の菅義偉氏が16日、第99代の首相に就任した。近年の自民党出身の首相は政治家一族で派閥に属する議員が多く、菅氏は異色の経歴である。派閥という党内基盤を持たずに宰相の座をつかんだ陰には、同じ「無派閥・非世襲」の若手議員による支持があった。
「自民党総裁選に出馬してください」
「ずっと付いていきます」 8月31日、衆院議員会館の菅氏の事務所に詰めかけた14人の若手議員が菅氏に一人ずつ思いを伝えた。菅氏はうなずきながら聞き終えると答えた。「その覚悟だ」
集まった議員には3つの共通点がある。(1)衆院当選4回以下で(2)派閥に属さず(3)親が国会議員ではない「非世襲」である――。
菅氏と同じ神奈川県選出の坂井学氏や山本朋広氏らが中心で「ガネーシャの会」というグループ名を持つ。この日は参加しなかった牧原秀樹氏もメンバーの一人だ。
翌9月1日には島村大氏や三宅伸吾氏ら参院議員11人が菅氏に出馬を要請した。こちらも全員が「無派閥・非世襲」で、参院当選2回以下が大半を占める。両グループとも菅氏を支持する議員の集まりで、定期的に会合を開く。
 
菅氏に出馬要請した参院の無派閥議員ら(1日、国会内)
 
ほかにも無派閥で個別に菅氏との結び付きが強い議員は複数いる。合計すると30〜40人規模とされ、党内で「菅グループ」と呼ばれる。
官房長官として長期政権の要の役割を果たしてきたとはいえ、党内基盤が何もなければ首相になることは難しい。総裁選で党内7派閥のうち5派閥が菅氏を支持した背景には「菅グループ」という「基礎票」もあった。
若手議員は総裁選でSNS(交流サイト)の発信や地方議員とのオンライン懇談会などの調整を担った。菅氏にとっては他の派閥議員よりも信頼できる実動部隊である。
「菅グループ」はこれまで目立たないように活動してきた。菅氏が派閥政治に否定的だったことに加え、政権を支える官房長官として安倍晋三氏への対抗と誤解されかねない動きは控える必要があった。菅氏が総裁選への意欲を聞かれるたびに「全く考えていない」と答えてきたのと同じ文脈である。
派閥の活動とは一線を画す。たとえば派閥は政治資金パーティーなどで集めた資金を所属議員の支援にあてる。内閣改造・党役員人事では所属議員の希望をリストにまとめて首相官邸に渡す。「菅グループ」はこうした活動を少なくとも表だってはしない。
派閥では総会の冒頭や最後に領袖があいさつするのが一般的であるものの、菅氏が各グループの定例会合に出席することは原則ない。あくまで菅氏を慕う無派閥の有志議員による自発的な集まりという形式をとる。
 
菅氏に出馬要請したガネーシャの会の議員ら(8月31日、国会内)
「菅グループ」の代表格であるガネーシャの会は各派閥が総会を開く毎週木曜日に、昼食の定例会合を開く。派閥に属する国会議員が参加できないようにする仕組みだ。夏場の泊まり込みの視察や、政策テーマを絞った勉強会といった議員同士の交流を深める活動はしている。
ガネーシャの会を例に、グループができた経緯をみてみよう。起点は派閥に所属している人も含めて菅氏に近い若手議員が集まって「偉駄天(いだてん)の会」を発足させたことだ。
フットワーク軽く活動したいとの思いを込め、俊足のバラモン教の守護神「韋駄天」から名付けた。菅氏の名前から一文字取って「韋」を「偉」に置き換えている。
このメンバーのうち無派閥に限定して2015年ごろに結成したのがガネーシャの会である。ガネーシャは韋駄天の兄弟である「歓喜天」のサンスクリット語の呼び名だ。
菅氏の名前から「義」を借りて「歓義天の会」にする案が出て、菅氏が「あまり名前を使わないでほしい」と難色を示した経緯がある。
 
 
派閥のように正式な名簿は作成していないという。その代わり、ガネーシャの会にはメンバーであることを示す「証し」が一つある。ある議員が海外の土産として購入したガネーシャの小さな像だ。会合に集まる議員一人ひとりに配った。菅氏には少しサイズの大きい像を渡した。
複数のメンバーがグループに参加したのは菅氏から紹介されたからだと明かす。「こんな集まりがあるから連絡を取ってみるといい」「無派閥で(政治家の)2世や3世でもない人間が活動するのは大変だろう」と声をかけられたと語る。
菅氏はかつて小渕派(現竹下派)や古賀派(現岸田派)に在籍し、09年に古賀派を退会した後は無派閥を貫く。無派閥でいることの難しさを知るだけに、若手の活動に気配りしたようだ。山本氏は「我々が菅氏を支えてきたというよりも、むしろ支えてもらってきた」と語る。
菅氏は2日の総裁選への出馬記者会見で、無派閥の仲間への思いを吐露した。「派閥の連合に推されて今ここにいるわけではない。支えてくれる派閥に所属してない国会議員のエネルギーが私を押し上げている」
新内閣と党役員人事は再任の梶山弘志経済産業相のほか首相を補佐する官房副長官にガネーシャの会の坂井氏、経済・外交担当の首相補佐官に参院の支持グループメンバーである阿達雅志氏をあてた。
菅氏の総裁任期は安倍前首相の残り任期を引き継ぐため21年9月までとなる。1年後には総裁選を改めて戦わなければならない。他派閥からの支持をつなぎとめつつ自らを支える議員に報いるバランスは必要になる。
■無派閥、総裁選で影響力
自民党の派閥は衰えたとはいえ今なお資金やポスト配分で所属議員に一定の支援をする。人脈のない若手の無派閥議員では自分の希望を政権中枢に伝える機会さえ少ない。菅氏はそうした議員の面倒を見て党内基盤を築いた。
その「菅グループ」は総裁選で5派閥と一緒に菅氏を首相へ押し上げた。菅氏は過去の総裁選で派閥横断の議員グループをつくり、安倍晋三氏を首相に2度就けてきた経緯がある。自らの総裁選出馬も派閥ではない枠組みからの支持を足場にした。
今回の総裁選は派閥が勝負の流れをつくった一方で、無派閥議員が一定の影響力を示す舞台にもなった。いずれ総裁選に出ようと意欲を持つ次世代の議員も党内の15%を占める無派閥の重要性を認識したと語る。
(加藤晶也氏)

不正被害、ペイペイでも ゆうちょ銀連携で6社に

 
 
 
ゆうちょ銀行が連携するキャッシュレス決済サービスで、NTTドコモが提供する「ドコモ口座」以外にも、5社で不正引き出しがあったことが15日分かった。ソフトバンクグループ傘下のスマホ決済「PayPay(ペイペイ)」でも被害があった。
高市早苗総務相が同日の記者会見で「NTTドコモ(のドコモ口座)以外でも不正引き出しの被害が生じている」と明らかにした。ゆうちょ銀へのヒアリングで、連携する12社のうちドコモを含む6社で被害があったことを確認したという。
ゆうちょ銀は同日、12社のうちファミリーマートの「ファミペイ」とスマホ決済の「pring(プリン)」を除く10社では、貯金口座の開設時に登録した電話番号に連携用IDを伝えるなどの「2段階認証」が未導入だったことを公表した。氏名、生年月日、口座の番号、キャッシュカードの暗証番号があれば決済サービスとひも付けできる仕組みになっていた。
ゆうちょ銀はドコモ以外で被害があった5社のうち2社はスタートアップのKyash(東京・港)とペイペイだったことを明らかにした。ドコモとKyashについては14日までに新規口座の登録を停止した。2段階認証を導入していなかった残りの8社も事業者との調整が付き次第、新規登録やチャージを停止するとしている。
ペイペイによると同社では1月から8月までにゆうちょ銀で17件、あわせて約141万円の不正とみられる利用が確認された。全て補償の対象という。同社の不正発生率は0.00004%程度で「ゆうちょ銀で特に高いわけではない」としている。口座連携時に本人確認手続きを必須とする金融機関を9月から拡大した。
Kyashでは銀行口座からの入金サービスを始めた7日以降、ゆうちょ銀で3件、計23万円の不正利用があった。他人のゆうちょ口座を登録し、自分のアカウントに引き出していた。
12社のうち電子マネーの「楽天Edy」や「ゆめか」、スマホ決済の「PayB」、プリン、ファミペイの各運営会社は「(ゆうちょ銀での)被害は確認されていない」と説明している。
ゆうちょ銀は不正の手口を「防犯上の理由から明らかにできない」としている。ただ例えばペイペイは自社の利用登録時に電話番号による「SMS(ショートメッセージサービス)認証」を導入済みだった。口座ひも付け時のゆうちょ銀の不正対策が万全だったかの検証も必要となりそうだ。
ペイペイは1〜8月に不正引き出しがあったにもかかわらず、公表していなかった。キャッシュレス決済への信頼を高める上で、情報開示のあり方も課題になる。
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Cチャンネル、子連れ向けサブスク 施設などお得に

女性向け動画配信サイトを運営するC Channel(Cチャンネル、東京・港)は子育て中の母親向けの会員制情報提供サービスを16日に始める。月額のサブスクリプション(定額課金)で施設利用の割引特典などを用意する。子連れで楽しめる施設やレストランと連携する。広告収入が柱の収益源を多様化する狙いがある。
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Cチャンネルが運営する「ママタス」のSNS(交流サイト)画面。月額の会員制度を設け、事業の多様化を進める
サービス名は「mamatas pass(ママタス パス)」。月額980円で有料会員登録をすると、会員限定のクーポンが発行される。ウェブサイトの画面に表示されたクーポン画面を提示することで、各種サービスの特典が受けられる。クーポンは何度でも利用できる。
ムーミンバレーパーク(埼玉県飯能市)では、会員限定で抽選に当選した人に無料招待券を送る。南国気分が味わえるスパリゾートハワイアンズ(福島県いわき市)では入場料が2割引きになる。
関東エリアを中心にレジャー施設の他にもイタリア料理店、宅配クリーニングなど30以上の施設や業者が加盟する予定。専用のウェブサイトでは、施設内の授乳室の有無や新型コロナウイルス対策などの情報を記載する。年内に100以上の施設や業者の加盟を目指す。
会員限定で毎月1枚ポストカードがもらえる特典も用意した。会員はウェブサイト上からレジャー施設などで撮影した写真をアップロードすると、Cチャンネルが写真でポストカードを作り会員に郵送する。
Cチャンネルは2015年創業のスタートアップ。女性向け動画配信サイトや、インフルエンサーと企業をマッチングするサービスなどを手掛け、企業からの広告収入を主な収益源とする。子連れ向けの有料会員制度に参入し、新たな収益の柱としたい考えだ。

新たな「都市像」描けるか 人口集中から知の集積へーパスクなき世界ー

あなたは大都市で生活したいですか――。
「経済発展は都市から始まる」。米国出身の女性ノンフィクション作家、ジェイン・ジェイコブズは都市を起点とする成長が国家全体に波及すると説いた。18世紀に始まった産業革命で都市にはヒトやモノ、カネが効率的に集まり、繁栄をけん引してきた。いま、この都市への集中による発展モデルが揺らいでいる。
 
2000年には、インダストリー4.0(第四次産業革命)が始まっていた。あらゆるモノとインターネットがつながり2億人が利用、2013年には100億人まで増加、2020年には500憶人とされていた。つまり、持ち運びのできるスマートフォンを使って、地図を利用したり、検索エンジンで様々なショップを自由に探し求めている。またフェイスブックやツイッターやLINEなどSNS(ソーシャルネットワーキング・サービス)を生活の一部として当たり前に活用している。
これに加えAIによるあらゆる産業に革命が起き、人の代わりに社会をコントロールしようとしている。果たしてそれが我々の未来にとって望ましい姿なのか?(瑚心すくい)
 
 
 
国連によると、1970年時点で145だった世界の人口100万人以上の都市は、2018年には548に増えた。1千万人以上のメガシティーも30を超える。
新型コロナウイルスは人口1千万人以上の中国の武漢市で発生したとされ、ニューヨークやパリ、東京などを直撃した。人々が密集することを前提とした大都市のリスクが露呈した形だ。
歴史的にも、都市の発達と感染症の関係は深い。14世紀に流行したペスト(黒死病)は欧州人口の3分の1を死に追いやった。約100年前にはスペイン風邪が4000万ともいわれる人々の命を奪った。
これほどの犠牲を払っても経済効率を優先し、人々は都市での生活を選んできた。今や世界人口78億人のうち40億人以上が都市に住む。長谷川真理子・総合研究大学院大学長はこうした現状を「人類史上の異常な状態」と表現する。
 
郊外に住む人々が都市の高層建築物の中で働く現在の都市モデルは、米国で20世紀に発展した。立ち並ぶ高層ビル群は経済成長の象徴とされ、世界の主要都市がこぞって取り入れてきた。新型コロナはこのモデルに疑問を投げかけた。建築家の隈研吾氏は「高層都市は時代遅れになった」と指摘する。
企業の動きにも、こうした見方がにじむ。東京都心の大型オフィスの空室率は足元で1%以下だが、不動産サービス大手シービーアールイー(CBRE、東京・千代田)の坂口英治社長は「1、2年で5%に上がる可能性も否定できない」と話す。社員が一堂に会するオフィスが必要か、企業は考え始めた。
6月下旬に再選を果たしたパリ市長のアンヌ・イダルゴ氏は「エコロジーで住みやすい都市に変革する」と宣言した。市内の6万台分の路上駐車場を削減し、代わりに自転車道や緑地の整備を進めるという。ニュージーランド政府も、市街地での歩道の拡張や自転車道の整備を打ち出した。
人口分散のアイデアは古くからある。ルネサンスの巨匠、レオナルド・ダビンチも欧州のペスト禍を経験し、人口の密集を防ぐ都市像を描いた。感染症が流行するたび、都市のあり方を見直す機運は高まった。
 
これまでとの決定的な違いはテクノロジーの存在だ。デジタル技術の発達で、どこにいても情報を自由にやりとりできる。狩猟、農耕、工業、情報という4つの社会に続き、仮想空間と現実空間が融合した「第5の社会」を迎えつつある。
 
「実際に対面しているみたいですね」。竹中工務店の研究員の梅津佳奈子さんは8月下旬、顔よりも大きなパネルに向き合って思わずこう漏らした。パネルは仮想現実(VR)のスタートアップ、H2L(東京・港)が開発した。2次元の透過ホログラムで姿を映し出し、「その場にいるような存在感を実現できる」(岩崎健一郎社長)。
事務的なやり取りにとどまらず、雑談も自由に交わせるのが特徴だ。銀行など10社以上が導入を決め、年内により現実に近い3次元のサービスを投入する考えだ。竹中工務店は建設会社としてコロナ後の働き方を模索するうえで、一つの可能性としてH2Lの技術の検証に取り組む。
従来のやり方にとらわれず、生産性を維持しようという試みが様々な国や企業で続いている。規模と効率を追求した都市の存在意義が問われている。新しい時代は、働く町も、国すらも選ばない世代が増えてくる。繁栄する力は人口の多さではなく、知をひき付ける求心力が左右する。知の集積が都市そして国家の競争力を決定づける。=この項おわり
【「パクスなき世界」関連対論・インタビュー】
 
危機の先、成長か分配か 新浪氏と柳川氏が対論
都市化の代償、人類に感染症リスク 長谷川真理子氏
コロナが自覚させた 時代遅れの都市モデル 隈研吾氏
ドイツに学ぶ「多極集中」の都市づくり 広井良典氏
 
 大越匡洋、加藤貴行、上杉素直、島田学、押野真也、高橋元気、大島有美子、鳳山太成、原田逸策、奥田宏二、生川暁、竹内弘文、榎本敦、森田英幸、熊田明彦、天野由衣、白尾和幸、前田尚歩、蛭田和也、松浦奈美、江渕智弘、三木理恵子、佐伯遼、清水孝輔が担当しました。

焼きたてを通販で 「ロハコブレッド」コロナ禍で2倍に

コロナ禍で成長したパン事業。敷島製パンなどのメーカーと協業。リピーターが多いという
 
オフィス用品のアスクルが手掛ける電子商取引(EC)、「ロハコ」がさまざまなヒット商品を仕掛けている。コロナ禍でヒットしたのが、焼きたてのパンが届く「ロハコブレッド」。日々食べるパンを通販専用の商品にすることで、意外なメリットがあったという。ECで日持ちのしない商品を届けられる仕組みを聞いた。
近年、ロハコが力を入れているのが、オリジナルの食品・飲料のプライベートブランド(PB)商品だ。商品が到着してからの取り出しやすさを工夫したオリジナルダンボール入りの5本入り「LOHACO Water 2L」。発送当日に精米することで鮮度の高い状態で自宅へ届け、ハサミ無しでも開封可能な「ろはこ米」が次々にヒット。消費サイクルの早い米や水は、ユーザーが何度もサイトを訪れたくなる仕掛けとなった。
そして、「通販で焼きたてのパンを買う」という新たなトレンドを生み出したのが、2019年9月に満を持して発売された「ロハコブレッド」だ。新型コロナウイルス感染症対策で外出自粛が続いた影響も後押しし、20年4、5月の売り上げは3月比約200%と伸びた。しかも「他商品と比べて圧倒的なリピート率がある」(ロハコ)というのが特徴だという。ユーザーの再訪を促す、同サイトの看板商品へと一気に駆け上がった。
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開発のきっかけをアスクル マーチャンダイジング本部 LOHACO生活用品統括部で飲料・食品を担当する立花智子氏に聞くと、「通販のパン市場は巨大なブルーオーシャンだった」という答えが返ってきた。総務省統計局「家計調査(家計収支編・総世帯)」によると、1世帯当たりのパンの支出金額は11年以降ずっと米を上回り続けている。そこへ、高級食パンブームも到来。ロハコでも仕入れ商品である、ロングライフパン(特別な酵母を使用した消費期限の長いパン)の売り上げも伸びていたが、ロングライフパンは、菓子パンのような、甘くて味の濃いモノが中心。「お米のように、主食として食卓に並び、毎日食べられるパンを売り出したいと考え、開発に至った」(立花氏)という。
ラインアップも豊富だ。敷島製パンやタカキフードサービスパートナーズと協力して生産しており、水を一切使用せず、牛乳や豆乳のみで仕上げた「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」(税込み358円)や、国産小麦にこだわったハード系のパン「国産小麦の石窯パン 長時間低温発酵バゲット」(税込み239円)などがある。ユーザーからは「パン屋さんに行かずにこれだけの味を手軽に食べられるのは便利」と軒並み好評だ。
「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」 食パンは生食も想定して作られている。7月9日に「石窯レーズン食パン」が発売されるなど新商品開発が進む。358円(税込み)
「国産小麦の石窯パン 長時間低温発酵バゲット」 ハード系パンも人気。239円(税込み)
秘訣は注文直後に解凍して配送するシステム
ロハコブレッドがヒットした要因は大きく分けて2つ。1つ目は、ECでのパン販売を可能にした独自製法だ。焼きたてパンの通販は、技術的には高い障壁があった。「パンは消費期限が短く、手元に届くまで時間がかかる通販には不向き。冷凍して送れば消費期限の問題はクリアできるが、今度は送料が跳ね上がってしまう。またパンはスペースをとるため、家庭用の冷凍庫では容量を圧迫してしまう」(立花氏)
そこで考案したのが、パンを焼き上げた直後に、瞬間冷凍し、受注が入った数量のみを発送日に解凍する方法だ。「ろはこ米で採用している、発送当日の精米という手法がヒントとなった。長時間低温発酵させた生地を焼き上げて、急速冷凍させることで、解凍後も焼きたての風味や食感が維持できる」(立花氏)
「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」 の製造工程
2つ目の特徴は、サイズだ。一番人気の「耳までおいしいやわらか食パン 北海道ミルク仕込み」(税込358円)は、通常の食パンの8割ほどと小さめに作られている。市場調査によって単身の人を中心に、トースターを持たない人が増えていることが分かったため、「生食でもおいしく、手軽に食べきりやすい小さめのサイズを選んだ」(立花氏)。
ロハコブレッドのヒットは思わぬ好影響も生んだ。「パンのお供」としてジャムやオリーブオイルなどの商品が選ばれることも増えた。「最近では、メーカーからコラボ販売の提案をもらうこともある。例えば、食パンとスープの朝食セットやバケットとテリーヌのワインのおつまみセットというケースもあった。毎日の献立を考えるのは意外と大変。ユーザーの食卓に新しい提案が届けられると思うので、拡充していきたい」(立花氏)
今後はさらなるラインアップ拡充を目指す。パンは種類を増やせば増やすほど売り上げが伸びることが分かっており、ゆくゆくは人気ベーカリーとのコラボも視野に入れている。どこに住んでいても自宅で各地の有名店の味が楽しめるようになる。
ロハコブレッドは、26都府県のみでの販売だったが、好評を受け発送拠点を強化。20年6月26日より沖縄や一部離島を除く46都道府県で販売を開始し、さらに拡大を続けている。
(ライター 井澤梓、写真 fort)

プレーイングマネジャーに逆風 テレワークが促す変身  20代から考える出世戦略

写真はイメージ =PIXTA
 
 
 
日本企業で働く管理職の大半はプレーイングマネジャーだといいます。そしてリモートワークの環境で苦労しているのもまたプレーイングマネジャーです。これまでうまくいっていたプレーイングしながらのマネジメントスタイルを、ニューノーマルの環境でどう変えていくべきか、指針を探ってみましょう。
「背中で教える」プレーイングマネジャー
日本企業でプレーイングマネジャーが多い理由としては諸説あります。欧米企業では出世してマネジャーになると人事権が与えられるけれど、日本企業では人事権は経営層や人事部に置かれたままだからだ、とか。
あるいはプレーヤーとして高い成果を出した人を出世させるので、マネジャーとしての適性がない人が昇進してしまっていたり、あるいはプレーヤーであり続けることを楽しく思う人が昇進してしまったりしている、という説などです。
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そもそも日本企業では年功処遇による横並び意識が強いので、資質がなくても課長相当に昇進させないと年次管理がうまく機能しないとか、やる気をなくした従業員が社内の雰囲気を悪くするとかいう説もあります。順法精神の低い会社では、とりあえず管理職にして残業代を払わないようにする、という場合もありました。
そうしてたくさん生まれたプレーイングマネジャーは、マネジャー本来の仕事である、マネジメントによる組織としての成果創出に時間をとることができません。そこでマネジメントする代わりに、背中で教える、ということが多かったわけですが、リモートワークではそれが機能しなくなりました。
ニューノーマルではスーパーマン以外は機能しない?
プレーイングマネジャーによる「背中で教える」スタイルは、同じ場所で長い時間一緒に働くことで機能していたスタイルです。それがリモートワークになることで、まったくと言っていいほど機能しなくなってしまいました。それはできる人の基準の変化すら生み始めています。
 
たとえばプレーイングマネジャー型の田中営業課長を想定してみましょう。
田中さんは課長として10人の課員がいる課全体の売り上げ責任を負っていますが、実は彼自身の売り上げが全体の25%をも占めています。課長になる前はスーパー営業社員だったし、お客様も田中さんのことを信頼しています。だから部下に引き継ぐよりは、田中さん自身が営業を担当してくれていることでさらに関係性が強化されます。
さて、このような状況でリモートワークになった場合に、田中課長はどのような働き方をするでしょうか?
課の25%をも占める売り上げを担当しているとなると、激変する環境の中でお客様への対応に多くの時間をとられることでしょう。そしてそうすることで契約を維持し、売り上げを確保することができます。スーパー営業社員だったころの能力は、プレーイングを続けているためさびついてはいません。
しかし週に1回の営業会議で、田中課長はがくぜんとします。10人いる課員たちがことごとく売り上げを下げてしまっているからです。そこで田中課長は叱責したり、聞きかじったコーチングスキルを発揮しようとしたりします。が、うまく機能しません。
さらに課員の一人からはこんなことを言われてしまいます。
「僕たちは田中課長みたいなスーパーマンじゃないんです。こんな状況じゃ誰だって売り上げを下げてしまってもしょうがないですよ」
背中を見せるより課員を見る
それもそうかもしれない、と納得する田中課長ですが、課長同士が集まる月次の営業会議で、売り上げを下げていない課がいくつかあることを知って驚きます。
その中の一人、1つ後輩にあたる山下課長に話を聞いてみるとこんな答えが返ってきました。
「今日みんながどんな作業をする予定なのかスケジュールを見ればわかるものの、なんとなく見過ごしてしまうんですよね。だからリモート朝礼を始めてみたんですよ」
朝礼は田中課長もやってみています。けれども逆に、スケジュールを見ればわかるので報告は不要だといつしか廃止していました。
「そうですね。スケジュールを見ればわかることじゃなくて、会社全体の状況を話すか、雑談をするようにしています。たまに後ろにお子さんが出てくる課員もいて、なごやかですよ。あとは前日の様子を踏まえて今日の対策について議論するとか」
山下課長はさらにこんな答えを返してくれました。
「営業もリモートですよね。全員の営業になるべく同行という感じで、課長としてログインもしようと思ったんですが、時間がどうしてもあわなくてね。だから営業が終わった時点ですぐにチャットツールに感想を書いてもらっています」
田中課長も営業管理システムにすぐに報告を書くようには指示しています。同じことじゃないのかと尋ねました。
「同じだと思うんですけれど、私はすぐに返事をするようにしています。あと、結果が良かったり悪かったり、はっきりしているときにはリモートをつないで顔を出して話すようにもしていますね」
 
他にも山下課長はこんな工夫をしているといいます。
・スケジュールが空いている課員に対しては、その理由をたずねるようにしている。それが意味のある空白、たとえば資料作成の時間などであればよいけれども、アポイントが入らないなどの不意の空白だとしたら、売り上げにつながるような作業にするにはどうすればよいか意見を聞くようにしている。
・その日の終わりには日報が営業管理システムに登録されるので、それらをチェックする時間を最低1時間とるようにしている。そこでコメントをすぐに書くのではなく、別のファイルに記載しておき、翌日の仕事が始まる朝の時点でコピーして記載するようにしている。そうすることで時間外とのメリハリをつけるようにしてみている。
それらを聞いて、田中課長は尋ねます。
「自分の営業はいつやるんだ?」
「少しずつですが、課員に引きついでいます。この状況だから、逆に先方も理解してくれますよ」
マネジメントが変わるきっかけになりつつある
あなたの会社に、スーパープレーヤーであり続ける田中課長と、少しずつプレーヤーであることから卒業しつつある山下課長がいたとして、あなたはどちらの人と働きたいでしょうか。
また、もしあなたが会社の社長だとして、どちらの課長を将来の経営幹部として育てたいでしょうか。
これは実は簡単なようで簡単な問いではありません。
仮にプレーイングマネジャーにプレーイングをやめるように指示をしたとして何が起きるでしょう。私が見てきた中ではおおむね3つのことが起きます。
第1に、プレーイングで保たれていた売り上げの減少です。第2に、慣れないマネジャー業務にストレスを感じて疲弊するモチベーションの低下です。第3に、そうした人たちの離職です。
プレーイングマネジャーがプレーイングマネジャーであり続ける背景には、実は経営層がそれを期待しているから、ということもあるのです。売り上げを下げずに現状を維持し続けるには、名プレーヤーにはそのままでい続けてもらう方が楽だからです。
ただ、そんな中でも先ほどあげた山下課長のように、自分なりの工夫をしながら、成長する人もいます。
また、一部の会社では、ニューノーマルにあわせて、マネジメントスタイルを変えようとしている会社も出始めています。管理職にプレーイングを求めるのではなく、マネジメント、すなわち組織を率いて成果を出すことを求めるように変わろうとしているのです。
現在プレーイングマネジャーとして活躍されているのであれば、ぜひ自社の状況や業界の状況を見据えつつ、いつどのタイミングでプレーイング割合を下げ、マネジャーとして行動を学ぶべきか、ぜひ考えてみてください。
平康慶浩氏
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。高度人材養成機構理事リーダーシップ開発センター長。