カード決済「かざす」広がる 暗証番号の入力不要

政府が利用割合を2025年までに4割まで高めると目標に掲げるキャッシュレス決済。スマートフォンを使ったQR決済など新しいサービスが相次いで登場する半面、初心者や高齢者にはハードルが高い。そこで注目を集めるのが、クレジットカードやデビットカードなどで使える「かざす」タイプの決済だ。手軽に幅広く利用できるので普及のけん引役として期待されている。概要や注意点をまとめた。
東京都在住の男性会社員(44)は、職場近くにあるコンビニエンスストア、ローソンで買い物する際、VISAのクレジットカードを利用している。
男性が使うカードは一見、通常のクレジットカードと変わらないが、券面には電波を発信するようなマークが付いている。NFCと呼ばれる国際的な近距離無線通信の規格に基づいて作られたカードだ。
会計時にはカードをレジの専用端末に近距離からかざすだけ。サインなどは不要で、後ろに並ぶ人を待たせる心配がない。男性はローソンでは「少額の支払いを含めていつも利用している」という。
同規格はVISAがクレジットカードのほかデビットカード、プリペイドカードへの搭載を進める。マスターカードやJCB、アメリカン・エキスプレスなどの国際ブランドカードも一部で「タッチ決済」や「コンタクトレス」といった名で採用している。JCBは非接触方式として国内専用の「QUICPay」も併せて展開する。
■手渡し要らず
こうした非接触タイプのカードは従来型とは違い、カードを店員に渡す必要がないのも特徴だ(表A)。支払いが早く終わるだけでなく、スキミング被害や番号盗用などの防止にも有効だとされる。他人に触れられるのに抵抗感がある人にも向いている。
非接触タイプのカードは海外で先行して普及している。ビザ・ワールドワイド・ジャパン(東京・千代田)によると、英国やカナダ、スペイン、イタリア、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールなど多くの国で対面決済の5割超がタッチ決済だ。一部の地域では地下鉄などの公共交通機関でそのまま乗車に使える。
国内でも利用がじわり広がってきた(表B)。
三井住友カードは19年3月から、自社で発行するVISAブランドカードを対象に搭載している。未搭載のカード保有者に対してはカード更新に合わせて切り替えていく。早く切り替えたい人には会員サイト上で手続きを無料で受け付けている。
このほかANAカードやJALカード、オリエントコーポレーションなどもカードの一部で採用。VISAブランドの場合、国内発行枚数が19年9月末時点で合計1400万を超えている。
店舗側の対応も進んできた。小売業ではローソンのほか、イオン傘下のスーパーやドラッグストア、京王百貨店などが相次いで対応を開始。外食ではマクドナルドやすき家などが導入している。
郵便局は今年2月から順次、窓口で郵便・荷物サービスなどの支払いに利用できるようになる。サービス業では今夏の東京五輪・パラリンピックや25年の大阪万博などで訪日する外国人旅行客が持ち込むカードに対応しようと今後も導入が増えそうだ。
■海外でも利用可
国内で普及するキャッシュレス決済の代表格、電子マネーもカードを端末にかざすだけで支払いが瞬時に終わる点は同じだ。スイカやパスモなどの交通系電子マネーはIC乗車券としても利用できて便利だ。
ただし、電子マネーは国内で普及する無線通信規格を採用しており、海外では一般的に使えない。これに対して非接触型のクレジットカードなどは海外でも加盟店に専用端末があれば利用できる。前払い式が主流な電子マネーと異なり、クレジットカードなら事前に入金(チャージ)する必要もない。
このところ急速に導入店舗が増え、ポイント還元も活発なのがQRコード決済だ。スマートフォンに専用のアプリをダウンロード。店舗での利用時にはアプリを起動してコードを提示したりする。これに対して非接触型のクレジットカードで使うのはカード1枚。キャッシュレス決済の初心者や、スマホ操作が苦手な高齢者なども簡単に始めやすいだろう。
暗証番号の入力なしで手軽に使える分、紛失や盗難時には第三者に不正利用される可能性がある点は注意したい。非接触型といっても決済手段としてはクレジットカードやデビットカードの扱いとなるので補償はそれらの規定に準じる。紛失時にはすぐに発行会社に連絡して利用停止できるようにしておこう。
多額の不正利用被害を防ぐため、支払い1回あたりの上限額を通常のクレジットカードなどと比べて低く抑えているケースもある。例えばマスターカードブランドの場合、国内での上限額は1万円だ。VISAの場合、加盟店ごとに異なる。上限額を超えて支払いたいときは署名や暗証番号の入力が必要になる場合があるので確認しておこう。
(藤井良憲氏)

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