授業に出られない… 平日のインターン増、学生困惑

インターンシップの合同説明会で企業の採用担当の話を聞く就活生(東京都新宿区)
2021年春に卒業する学生の間で、就職活動のため授業を休む動きが広がっている。本選考の前哨戦ともいえるインターンシップ(就業体験)が平日に行われているためだ。背景にあるのが採用難と企業の働き方改革。大学からは学業への影響を懸念する声が上がっている。
■いろんな会社を知りたいのに…
「授業を5回休むと単位が取れなくなる。せめて3回までに抑えたい」。立教大学4年生で21年春卒業予定の小林千夏さん(22)は、授業とインターンシップのバランスに苦慮している。1日のみ開催するワンデーインターンシップの多くが平日にあるからだ。
夏休みから就活を始めた小林さんにとって、インターンシップが活動の中心だ。「たとえ1日でも企業は就活生を評価するはず。参加してポイントを稼がなくては」。いろんな会社のことを知りたいが、授業との兼ね合いで泣く泣く参加を諦めたこともあるという。
「学生がインターンシップを理由に授業に来ないという声が、教授陣から上がっている」。明治大学・就職キャリア支援部の舟戸一治部長は指摘する。
■秋の開催が急増 働き方改革で土日はNG
なぜ学期中の平日にインターンシップが増えるのか。マイナビ・リサーチ&マーケティング部の東郷こずえさんは、インターンシップの急拡大と働き方改革の影響を指摘する。
インターンシップはこれまで、夏・冬休みの平日に行うことが多かった。しかしインターンシップを実施する企業は年々増加。就職情報大手、ディスコ(東京・文京)の調査によると、19年夏にインターンシップを実施した企業の半数近くが学生が集まらないと回答。他社と日程が重複して学生の参加が分散し、十分な参加者が集められなくなっているという。
代わって増えてきたのが秋など授業期間中の開催だ。19年度は10〜11月にインターンシップを行う企業が34%と、3年前より17ポイント増えた。
そのうえ企業は働き方改革を進めており「週末開催は難しい」(大手金融)。そこで授業期間中の平日に実施する企業が増えているのが実態だ。
■不確かな情報に振り回される学生たち
大学は学生への悪影響を懸念する。「学生が授業に集中できないことで成長の機会が妨げられてしまう」(早稲田大学キャリアセンターの荻原里砂課長)。大学のカリキュラムは3年生の1年間で専攻を深められるよう設計してある。その時期を就活中心で過ごすと「大学で頑張ったこともなく自分と向き合わないまま就職する学生が出てしまう」(荻原課長)。
大学の授業をおろそかにせず、就活もうまく進めるにはどうすればいいのか。リクルートキャリア就職みらい研究所の増本全所長は「学生のリテラシーと企業の発信がカギ」と話す。
「インターンシップの募集に落ちたら本選考でも不利」「懇親会の一挙手一投足が重要」――。就活の口コミサイトが増え、不確かな情報が出回りやすくなっている。同じ会社のインターンシップを何度も受けることを「スタンプラリー」と呼ぶなど、やみくもに参加を増やす学生が目立つ。
早稲田大の荻原課長は「学生は自分で情報を判断する力をつけてほしい。企業も学生に誤解を与えないよう、情報発信を工夫してほしい」と訴える。学業と就活の両立に向けた取り組みが求められている。
(生活情報部 田中早紀)
■夕方にイベント開く企業も
 インターンシップが企業の説明会的な色彩を強めるなか、学生が企業と接点を持てるよう独自に動く大学もある。
 一部の大学では、通常3月に行うことが多い合同説明会を12〜2月にも行う。授業期間中の開催であっても、夕方に開くことで授業への影響を抑えるところもある。3月に開く合同説明会とは別に、業界研究会という形で2月に学生と採用担当者の接点を設ける大学も出てきた。
 企業側にも、学業に配慮する動きがある。第一生命保険ではワンデーインターンシップでも遅刻や早退を認める。「優先順位を付けるのは学生だが、選べる機会を提供したい」(採用担当者)。サッポロビールは「夕方に企業理解を深めるイベントを開催し、社員の働き方と学生の授業への出席との両立を図っている」と話す。
 東京都内の私立大学に通う男子学生は「授業への配慮があると、企業への志望度も高まる」と打ち明ける。採用活動が多様化する中で、大学や企業の模索は続く。
就活日程の順守、7割弱が要望 大学学長調査
大学生の就職活動について、企業側への要望を日本経済新聞社が有力大学への学長アンケートで尋ねたところ、7割弱が「就活日程の順守」を挙げた。優秀な人材をいち早く確保しようと、企業側が定められた日程より早く採用活動を始めるケースが後を絶たないためだ。学生生活と就活を学生が両立できるような仕組みを求める声は新制度移行後も少なくない。
経団連は2018年10月、大手企業の採用面接の解禁日などを定めた指針の作成を21年春入社分から廃止することを決定した。21年卒からは政府主導でルールを定めることになったが、21〜22年卒については「会社説明会解禁は3月1日、採用面接解禁は6月1日」と従来と同じ日程を維持する方針を表明している。
学長アンケートではまず、この選考に関するルールについてどう思うかを聞いたところ「妥当である」と答えた学長は67%に達し、「変更が必要」(17%)を大きく上回った。
自由回答では「これ以上の早期化は学生にとって学業成績や課外活動の経験が十分に評価されなくなるため現行日程が望ましい」(私立)との意見が聞かれたほか、地方の国立大学からは「精神的にも金銭的にも負担が増えるので、卒業年次の10月1日には大半の学生の進路が決まっていることが望ましい」との声もあった。
政府主導となることで、ルールの対象企業が経団連会員企業以外に広がることには期待感がある半面、ルールを破った企業への罰則規定がないために実効性には疑問の声が上がる。
就職活動について企業側などに要望すること(複数回答)を聞いたところ、「就活日程の順守」が67%と最多だった。自由回答では「ルールがあることによって学生も計画的に落ち着いて勉学に取り組むことができるので、ぜひどの企業も守ってほしい」(国立)と訴える声が目立った。
現在インターンシップ(就業体験)プログラムの提供は3年生の夏からが主流だが、「3年生以下向けのインターンを手厚くしてほしい」が59%に達した。現行ルールではインターンを通じた採用は禁止されているが、「インターンを活用した選考など採用手法の多様化を議論すべきだ」(国立)など抜本的な改革を求める声も聞かれた。
一方で「『ワンデーインターンシップ』など実質的には企業説明会と変わらないようなインターンは控えてほしい」(私立)、「実際の仕事に近い経験ができるプログラムを提供してほしい」(国立)などの現状のプログラムに不満の声も目立った。
経団連は22年卒からの学生を対象に、必要な人材を随時採用する「通年採用」を拡大することで大学側と合意した。アンケートではこれにより、就活の開始時期がどうなるか聞いたところ、「早まる」と答えた学長が57%と最多だった。そのうち「学業や大学の授業に影響が出る」と答えた学長は82%に上った。
「特定の授業に毎回出席できなくなる可能性があり、単位の取得に影響がでる恐れがある」(国立)、「在学中の就職活動を原則禁止した上での通年採用でないと学業への影響は避けられない」(国立)と否定的な意見が相次いだ。
通年採用については、企業が1年生など低学年に対して採用活動をすることや、卒業後の入社時期を自由に設定できることなど複数の解釈が存在しているのも事実だ。「『通年採用とはこういうものだ』と政府や経団連などが学生や企業、大学に改めて示してほしい」(私立)という意見もあった。

少子化が続く中、大学はキャリア教育や就活対策を充実させることが学生集めにおいて不可欠だと考えているようだ。アンケートでは大学として取り組んでいる就活対策を聞いたところ、最も多かったのは「インターンシップの単位認定」で86%に達した。次いで「キャリア科目の単位認定」(85%)、「父母向けの就活説明会」(60%)、「1年生向けの就活説明会」(34%)と続いた。
明治大は毎年5〜7月に全国各地で開く父母会で、就職キャリアセンターの職員が同大卒業生の就職状況や就活支援体制などについて説明する。希望する父母には個別の面談にも応じるという。
ユニークなプログラムも増えている。学習院大は9月、3年生向けに10日間のベトナムへのインターンプログラムを実施。約30人の学生が参加した。文具や食品など日本企業の現地法人を訪ねたり、現地の大学生と交流したりして知見を広めてもらうのが狙いだという。

ディスコの武井房子上席研究員の話 企業の採用活動の早期化が止まらない。ディスコが企業の人事担当者向けに実施した調査によると、21年卒の採用活動で20年2月以前に自社のセミナーを開始する(予定)と答えた企業は38%と前年に比べて10ポイント高まった。面接の開始時期や内定を出す時期も2週間ほど早まる可能性がある。
求人倍率は高止まりしており、企業はここ数年人を採りたくても必要な人数が採れない状態が続いている。特に大手企業に比べ知名度で劣る中堅・中小企業やベンチャー企業などが就活イベントに参加するなどして早い時期に学生に接触する動きが顕著だ。
企業側の本音としては優秀な学生に早く内定を出して囲い込みたいところだが、早く出せば出すほど学生が他社に心変わりをして内定辞退されるリスクが高まる。各社はライバル企業の出方を探り合って、採用時期を決めている状態だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です