KDDIとローソン、ポイント乗り換えの裏にある真実

KDDIとローソン、三菱商事とポイントサービス「Ponta(ポンタ)」を手掛けるロイヤリティマーケティングが提携。KDDIがこれまで自社で提供してきたポイントサービス「auウォレットポイント」をポンタに統合。KDDIはローソンとロイヤリティマーケティングに出資する。一見出遅れたもの同士の提携にみえるが、実態はそうでもない。
KDDIはスマホ決済「au Pay」を手がけているが、ソフトバンクグループが展開する「PayPay」や、LINEの「LINEペイ」、NTTドコモの「d払い」の後じんを拝している。一方コンビニ業界でも失敗したとはいえセブン&アイ・ホールディングスは「セブンペイ」を自前で発行したし、ファミリーマートの「ファミペイ」は順調に滑り出した。ローソンは独自のスマホ決済サービスを出していない。
これだけをみるとKDDIとローソンの提携は出遅れた企業同士の握手だ。しかし両社はこの見方を否定する。独自のスマホ決済サービスを立ち上げない理由について、ローソンの竹増貞信社長は「キャッシュレスは『なんとかペイ』が競争状態にある。我々は表面的な決済ではなく、後ろ側のシステムで勝負しようと考えた」と説明。決済に関しては「個々の利用者にとって使いやすい決済手段を効率的に使える環境を提供する」(竹増氏)として、ローソンでしか使えない決済サービスを提供するより、利用者が使いたい決済サービスにできるだけ多く対応するというスタンスを語った。
一方KDDIは早くからプリペイドカードを手掛け、さらに米アップルの非接触型の決済サービス「アップルペイ」に対応させるなど、QRコード決済普及前からキャッシュレス化を推進してきた。KDDIの高橋誠社長には何度か取材したが、「QRコードによるスマホ決済に本気で取り組んだら負け」という考えがあるように感じた。
ポイントはスマホ決済サービスの目的をどこに置くかだ。わずかな手数料収入を目的にビジネスモデルを構築したら、スマホ決済サービスは何年たっても黒字にはならない。むしろKDDIにとって重要なのは、ユーザーの「解約抑止」につながる点だ。
KDDIは毎月、ユーザーにポイントを付与している。そのポイントを街なかで使ってもらうための手段としてスマホ決済サービスを提供しておく。ユーザーが毎月、継続的にポイントをため、満足して街なかでポイントを使えばauを解約しないというわけだ。
だがKDDIが利用者認証の「au ID」のオープン化とポイント経済圏の拡大で出遅れたのも事実。NTTドコモは街なかの様々な店舗で、dポイントで支払えるだけでなく、dポイントをためられる。auのポイントはマスターカードと提携しているので支払える場所は多い。しかしauウォレットポイントがたまる店舗の数は見劣りする。
スマホ決済サービスでは「ポイントなどお金に相当する価値がたまる」点が重要だ。そこで目をつけたのが、すでに街なかやネットで多数の提携先を持ち、共通ポイントのエコシステムを築いているポンタだったわけだ。
高橋社長は「これからは口座にいかにお金やポイントが入ってくるかが重要だ」と語る。ポンタに生まれ変わることで、通信料金のポイントと街なかでの決済のポイントが口座に振り込まれることになる。
ローソンにはNTTドコモが2.09%出資していた。KDDIはNTTドコモを0.01ポイント上回る2.1%を出資する。これまでNTTドコモとローソンは協力的で、NTTドコモのクレジットカード「dカード」をローソンで利用すると、ポイントの付与率を高くするといった特典をつけていた。
しかしNTTドコモとローソンがさらなる協力関係を築こうとしても、NTTドコモにはdポイント、ローソンにはポンタがあるため、相いれなかった可能性が高い。KDDIはauウォレットポイントをあっさりあきらめ、ポンタに取り込まれる道を選んだから、今回の提携が実現したのだろう。
KDDIとローソンは、両者のユーザーIDを連携させ、1億超の会員基盤をベースにデータマーケティングなどを手掛けていく計画だ。またコンビニ来店客に向けたサブスクリプションモデルなどの新サービスや、無人コンビニなど次世代型コンビニサービスの展開も視野に入れる。
これまで日本ではネット企業同士の経営統合や連携などは多かったが、通信企業が小売企業とリアル店舗への展開を視野に入れた提携をするのは珍しいといえるだろう。先日もLINEとヤフーの経営統合が話題となったが、20年春の次世代通信規格「5G」の商用サービス開始に向けて、さまざまな企業の経営統合や提携などが加速しそうだ。
特に注目したいのが楽天の動向だ。第4のキャリアとして10月に参入を目指すも、商用化には程遠く「無料サポータープログラム」でお茶を濁した。
楽天は物流と決済、通信インフラでKDDIと業務提携を行っている。KDDIの高橋社長に「楽天とポイントサービスでの提携は考えていないのか」と質問したが、楽天のほうがはるかに経済圏が大きく、提携するとKDDIがのみ込まれる可能性があるのか、あまり乗り気ではなかった。KDDIはポンタと組んで、経済圏を一気に拡大した。今後もポイントを軸とした業界再編が起きる可能性はあるだろう。
石川温(いしかわ・つつむ)
 月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。ラジオNIKKEIで毎週木曜午後8時20分からの番組「スマホNo.1メディア」に出演(radiko、ポッドキャストでも配信)。NHKのEテレで「趣味どきっ! はじめてのスマホ バッチリ使いこなそう」に講師として出演。近著に「仕事の能率を上げる 最強最速のスマホ&パソコン活用術」(朝日新聞出版)がある。ニコニコチャンネルにてメルマガ(http://ch.nicovideo.jp/226)も配信。ツイッターアカウントはhttp://twitter.com/iskw226

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