高画質写真に悪用リスク SNS、求められる自衛

ピースサインから指紋パターン、瞳から最寄り駅――。スマートフォンで撮影し、SNS(交流サイト)に投稿した画像などから、生体情報やプライバシーが読み取られてしまう懸念が強まっている。スマホなどのカメラの画質が飛躍的に向上し、鮮やかな写真を楽しめるようになった半面、精密な分析が可能になり、悪用されるリスクが増したという。思わぬトラブルにつながらないよう、自衛が求められている。
笑顔の横にピースサインを出した実験用の画像。指の第一関節までを拡大して誰にでも可能な画像処理を施し、指紋の線を抽出する。スタンプを製造する市販機器にこのデータを読み込ませて素材を加工すれば、指紋の溝が再現された偽の「指」ができあがる。
指紋の特徴を照合する高精度のソフトでも、この「指」を偽物と見抜くことはできなかった。「市販製品を組み合わせただけで、極めて高度な技術は使っていない」と研究した国立情報学研究所の越前功教授は語る。
同教授らのグループは、生体情報が悪用される危険性を研究してきた。本人が触った痕跡からの指紋複製の手法が海外で公表され、指紋認証の脆弱性に着目。画像からの再現法をシンポジウムで発表している。
光の当たり方など条件がそろえば古いスマホのカメラでも、再現可能な精度で指紋が写る。指紋認証はスマホの本人確認やオフィスの入退室管理で広く活用され、他人のなりすましを許せば情報漏洩などのリスクはさらに高まる。
越前教授によると、この手法が悪用されれば、光学方式など様々な種類のある指紋認証システムの一部が突破される可能性がある。同教授は「指紋など生体情報は一度盗まれたからといって、変えられない」と指摘、指紋が読み取られないよう指に貼るシールの開発を進める。
実際に起きた事件からは、画像に写る瞳から撮影場所を読み取られる危険性も浮かび上がった。警視庁は9月、アイドル活動をしていた20代女性の自宅マンションの玄関前で体を触ったとして、20代の男を強制わいせつ致傷容疑などで逮捕。捜査関係者によると、男は調べに「瞳に映った景色を手がかりに女性宅を調べた」と供述したという。
現場の状況や撮影の角度によって、目の表面に広い範囲の景色が映り込むことがある。男は女性のSNSに投稿された顔の画像を悪用。瞳に映った建物の特徴から女性の最寄り駅を割り出し、駅から女性をつけて自宅住所を把握した。捜査幹部は「ストーカーの新手の手法」と警戒する。
「全国webカウンセリング協議会」(東京・港)には、投稿した画像から住所などを割り出されたと思われる人からの相談が多く寄せられる。ネット上の情報を組み合わせて住所や職業を調べる手法は「モザイクアプローチ」と呼ばれ、本人だけでなく、知人の投稿画像から情報が特定される場合もある。
農業を営む新潟市の女性(42)は、農作物やイベントで撮影した画像を日常的にSNSに投稿。自分の居場所について「ここにいるのでは?」と知らない人からメッセージが届いたことがあるという。
「人脈ができることもあり、SNSをやめるのは難しい。居場所の分かる写真は翌日に投稿するなど注意を払いながら利用したい」と話す。
ITジャーナリストの高橋暁子さんは「無意識のうちに自分の個人情報が悪用されるリスクを自覚する必要がある。投稿画像を加工して解像度を下げるほか、固有名詞を写り込ませないなどの手段も有効だ」と話している。
■スマホカメラ、一眼並み
携帯電話のカメラの性能は新機種が出るたびに進化し、中にはデジタル一眼レフカメラに匹敵する画質を誇るものもある。米アップルのiPhone(アイフォーン)シリーズで写真画質の繊細さを示す画素数を比較すると、2009年発売のiPhone3GSが300万画素だったのに対し、19年に発売された最新のiPhone11Proでは4倍の1200万画素になった。
画素数は写真を構成する点の数で、多ければ多いほど、画像を拡大した場合でもきめ細かに表示できる。スマートフォンの中には2千万画素を超える機種もあり、デジタル一眼レフカメラに匹敵する画素数だ。
(野元翔平氏)

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