自由な働き方道半ば

ウーバー配達員、労組結成も交渉「門前払い」 個人契約、保護に課題
 スマートフォンの普及を背景に、個人が好きな時にインターネット経由で仕事を請け負う自由な働き方が広がっている。空き時間を利用して手軽に収入を得られるのが魅力だが、法律などが想定していない新たなワークスタイルは働き手の立場が不明確で、国の議論も始まったばかりだ。人気の宅配代行サービスの現場で課題を探った。(朝倉侑平氏)
「自由な働き方と安心・安全に働くことは相反するものではなく、両立可能だ」。10月3日、東京都内であった「ウーバーイーツユニオン」の設立総会。執行委員長に選ばれた前葉富雄さん(29)が設立趣意書を読み上げると、参加者から拍手が起きた。
前葉さんらは米ウーバーテクノロジーズが手掛ける、飲食店からの宅配代行サービス「ウーバーイーツ」の配達員。「配達パートナー」と呼ばれる個人事業主だが、事故時の補償や報酬の基準が明確でないとして日本法人に団体交渉に応じるよう求めた。
しかし、18日にユニオンに届いた文書は”門前払い”だった。「皆様は『労働者』に該当しませんので、団体交渉の要求についてはお断りさせていただきます」
「交渉する権利すら認められないのか」。前葉さんらは団体交渉を求めて労働委員会に申し立てる検討を始めた。
ウーバー側によると日本で稼働する配達員は1万5千人を超す。日本で事業を始めた2016年9月以降、配達エリアは全国10都市以上に拡大、副業で始める人も多い。
一方、労災保険や雇用保険が適用されないといった課題も指摘されてきた。東京都内に住む40代男性は、身をもってそれを体験した一人だ。
経営する靴修理店が振るわず、生活費の足しにと配達員を2年半前に始めた。報酬は配達先までの距離などに応じて増額され、件数をこなせばボーナスも出る。スマホの操作だけで働く時間が自由に選べるのも魅力に映った。妻や小学生の娘を養うため、約1年前に専業となった。
暗転したのは半年前だ。配達中に交通事故に遭い、尻の骨を折る大けがで約1週間入院した。約10万円の入院費用は自費。働けない期間は貯金を取り崩してしのいだ。
事故の翌月から復帰し、通院しながら1日計100キロ前後をスクーターで走る。収入は多い月で45万円。税金や社会保険料を支払うと生活費が足りず、妻も働いて家計を支える。「始めた時はこんな生活になるとは思いもしなかった」
事故に遭った配達員への補償としてウーバーは10月から、配達中のけがに上限25万円の治療費や日額7500円(最大30日)の入院費などを支払う制度を導入した。同社は「個人事業主という働き方の質と安全性を高めていきたい」と強調する。しかし、配達以外の移動中のけがは補償されないなど限界もある。
自由な働き方は急速に広がるが、働き手をどこまで保護すべきかを定めた法的なルールは未整備だ。海外では待遇改善を求める動きが活発化し、米カリフォルニア州で9月、ライドシェアサービスの運転手らを従業員として扱うよう企業に義務付ける新法が成立した。
龍谷大の脇田滋名誉教授(労働法)は「過去にはバイク便の配送員を労働者と認めた判例もあり、企業と個人事業主の関係はたびたび問題になってきた」と指摘。ウーバーイーツと配達員について「今後は裁判手続きなどを通じ、実態として従属的な立場かどうかなどで団体交渉の可否が判断されるだろう」と話す。
「フリーランス」170万人に
ウーバーイーツ配達員など、インターネットの仲介サイトを介して仕事を請け負う働き方は「ギグワーカー」などと呼ばれる。同様の働き方をする職種にはプログラミングや翻訳、家事代行などがあり、個人で企業などから仕事を請け負う「フリーランス」として働く人も多い。
労働政策研究・研修機構は4月、フリーランスが国内に約170万人いるとの試算をまとめた。うち「本業」とする人は約130万人、「副業」は約40万人で、フリーランスの仕事による平均年収(税込み)は「50万円未満」が最多。権利保護が不十分との指摘もあり、厚生労働省は「雇用類似の働き方」と位置づけ、昨年10月以降、有識者会議で論点を整理している。

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