水道施設の水害対策、8割が未実施 地震に比べ手薄

東日本各地で続く水害で、水道設備の防災対策の遅れが浮き彫りになっている。台風19号では最大で14都県の約16万3千戸が断水。25日からの大雨でも千葉県で浄水場の設備が被害を受け約4700戸が断水した。厚生労働省の調査では、浸水想定区域にある全国の水道施設の8割で防水扉などが未整備で、水道インフラの災害リスクは各地に潜んでいる。
「もうすねの辺りまで水が来ている」。10月13日午前1時すぎ、福島県いわき市の「平浄水場」の職員は市水道局に電話をかけ、浄水場の緊迫した状況を報告した。
電話から約15分後、浄水場の南側約900メートルの夏井川が決壊した。流れ込んでくる水は勢いを増し、結局水位は80センチの高さにまで達した。電源盤が水没して故障し送水ポンプが動かなくなり、一時、市の給水戸数の3割超に当たる約4万5千戸が断水した。
浄水場はハザードマップの「浸水想定区域」にあったが、防水扉や入り口のかさ上げなどの対策は取られていなかった。市水道局の担当者は「東日本大震災で水道管の破損が相次ぎ、老朽化した管の更新を急いだ。同時に浸水対策を進める費用は捻出できなかった」と説明する。
台風19号では各地で浄水場の被災が相次ぎ、茨城県大子町で最大約7900戸、宮城県丸森町では最大約3400戸が断水した。台風21号や低気圧による25日からの大雨でも、千葉県鴨川市で浄水場の送水ポンプが浸水、最大約4700戸が断水した。
2018年7月に広島県などを襲った西日本豪雨では最大約26万3千戸で断水した。
西日本豪雨を受けて厚労省が昨年末にまとめた全国の主要な浄水場などの緊急点検結果によると、3152施設が浸水想定区域にあった。うち81%の2552施設は防水扉の設置など浸水対策が取られていなかった。
防災対策の遅れの背景には水道事業体の財政難もある。厚労省によると、人口減などで全国の事業体の3分の1が供給コストが料金を上回る「原価割れ」の状態だ。国は2018年12月から重要度の高い水道施設に対し、災害対策費の3分の1〜4分の1を補助する緊急対策を始めている。
もっとも、年々激しさを増している最近の豪雨では、これまでの国の対策では想定していなかった取水口や水路の閉塞といった新たな問題も浮上している。
台風19号で被害を受けた神奈川県南足柄市の矢倉沢浄水場では、水源の狩川上流で土砂崩れが起き、流れ込んだ土砂や流木で水路がふさがれた。浄水場内のポンプも土砂で故障し最大約6900戸の断水につながった。
通常時はごみをかき上げる機械で水路の閉塞を防いでいるが「今回は濁流の勢いが予想以上で機械の許容量を超えてしまい、土砂で水路がふさがれた。職員の派遣も間に合わなかった」(同市上下水道課)という。
水道施設の防災に詳しい金沢大の宮島昌克教授は「これまで水道施設の水害対策は、地震対策に比べて手薄だった」と指摘。施設強化などのハード対策は時間やコストがかかるとして「水害の発生を前提に、水の備蓄や応急給水体制の充実などの対策を進めることも重要だ」と話している。

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